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誇れ日本の技術力「人類史上最高性能のアルマ電波望遠鏡」

南米高地で日米欧がアンテナ技術を競い合う

いまから8年ほど前のことですが、2013年の3月に完成予定の南米チリの5000mの高地に建設されているアルマ電波望遠鏡に携わりました。

標高5千mに設置されたアルマ電波望遠鏡 写真:著者撮影


アルマ電波望遠鏡は、人類史上最も高度な技術を終結した地上天文観測施設と言われている望遠鏡です。

その性能は、
皆さんの視力は目の良い方でも1.5とか2.0ですよね。アルマ電波望遠鏡の視力は、なんと6000です。

具体的に見えるものはと言うと、観測可能な宇宙であれば星ではなくて、銀河ならどんな形か見分けることができるのです。

さらにアミノ酸を探すことが出来ると言われています。太陽系外にアミノ酸が発見されるとそこには生命が存在する可能性も出てくる事になります。

そんな遠い宇宙のことを言われても分かりにくいと言われる方には、

例えば、東京にアルマ電波望遠鏡があるとすると、大阪にある1円玉を見分けることができるのです。

アルマ電波望遠鏡の性能 講演会資料より 写真:著者撮影

では、どんな発見が出来るのですかと言われる方には、

アルマ電波望遠鏡が全て完成する

予定の2013年3月の前である、2012年秋ごろから徐々に観測はスタートしています。そして色々な注目される発見も出てきています。

しかし何と言っても一 昨年度、史上初ブラックホールの姿を捉えたビッグニュース、この観測の中心となった望遠鏡と言うことで、アルマ電波望遠鏡がさらに有名になったのです。

この時はアルマ電波望遠鏡を中心に、南極・米本土・米ハワイ・メキシコ・スペインの8個の電波望遠鏡をつなぎ合わせ地球サイズの望遠鏡を実現、地球から月のミカンが見える視力300万でブラックホールの姿をとらえたのです。


話しはアルマ電波望遠鏡に戻りますが、

2013年の4月以降の本格運用で観測時には日本の電波望遠鏡は、66台の望遠鏡の中心部となりました。
直径12mのアンテナ4台と直径7mのアンテナ12台からなる16台の高い精度の日本のアンテナ群のACA(アタカマ・コンパクト・アレイ)は「いざよい」と言う愛称がつけられました。

アルマ電波望遠鏡の画質向上のために導入された小さな口径のアンテナ群です。

日本のアンテナ 写真:著者撮影


この場所では、日本のアンテナ・アメリカのアンテナ・そしてヨーロッパのアンテナが1か所に集まって組立調整されていました。

日本から届いた望遠鏡の組立作業 写真:著者撮影


ここで世界最先端のアンテナ技術を競い合っていたのです。このような場所は他にありません。お互いに刺激になります。大変凄いことであり良いことであります。

必要な基本性能は一緒ですが、その性能を実現するために日本・アメリカ・ヨーロッパが、それぞれ持っている最高の技術を使って設計した3者それぞれ自慢のアンテナです。

ここでは、エンジニアとして現地でそれぞれのアンテナを見ての私の個人的見解で米欧望遠鏡を表現しますと、

米製アルマ電波望遠鏡:性能もしっかり出ており、強い風が吹く5000mの高地においても十分耐えられる強いアンテナ群です。

欧州製アルマ電波望遠鏡:性能もしっかり出ており、デザイン性に優れたアンテナ群だと思いました。

米欧ともに技術的にも良く、日本の技術と競合するだけの力は十分あると感じました。

私の後ろはアルマ電波望遠鏡 写真:著者


日本の技術力、全てにおいてパーフェクト!

技術立国・日本のアンテナは、技術が優れている事は各国からも評価されています。これらの技術は主契約会社だけでなく日本の多くの中小企業の技術力が支えている事はあまりに有名です。さらに、日本はスケジュール通りきちっと仕事を進めることでも評判でした。

5千mの高地に車で到着 写真:著者

日本で製造されたアンテナ群は、幾つかにばらして船でチリの港に運ばれます。チリの港からアタカマ砂漠の標高3000mの山麓施設に運ばれ、組み上げられ調整試験が行われました。

3千mから5千mの高地に移動 写真:著者撮影


アルマの厳しい検査を通り、アンテナ16台全てが前年(2012年)秋に完成しアルマ観測所に引き渡されました。

前に見える山は約6千m 写真:著者撮影

予定より早い完成には日本人の細かなスケジュール管理が活きていました。
さらに秋から春先まで期間がありますが、この期間は機材に付き物の初期故障がもし起きた場合の対応とか、念をいれての点検などに使いました。さらに、米欧ではない現地のチリエンジニアへの長期の引継ぎ期間として使いました。

5千m高地の山頂施設で 写真:著者

アンテナ性能やシステムについても世界のトップクラス、しかも期間内にしっかりと仕上げる姿勢が素晴らしい、当時チリ現地のエンジニアとして誇らしく思ったことを思い出しました。

最後に:
今回の南米チリ・アタカマ砂漠に建設した国際プロジェクト「アルマ電波望遠鏡」が、私にとって40年間ほどのエンジニア生活最後の国際プロジェクトとなりました。

最後が、初めての砂漠でのプロジェクトで色々な経験をさせて頂き感謝し喜んでおります。

南米チリのアタカマ砂漠にて 写真:著者


40年間のエンジニア生活では、日本の宇宙トップメーカーでの航空機関連事業も含めての宇宙関係エンジニアとして多くの国家プロジェクトや国際プロジェクトに携わることができました。

また、JAXAの人工衛星追跡管制隊に所属しての国産大型ロケットH-ⅡAによる人工衛星打上げに携わり数回の打上げに関わることが出来ました。

メーカーでの仕事も殆んどがJAXAとの関連プロジェクトでありました。

さらに、定年後は国立天文台三鷹キャンパスに入り、後にチリ観測所の所属となってアルマ電波望遠鏡に携わりました。

テレビ番組出演中の著者


お陰様で、宇宙三大部門(宇宙トップメーカー・国立天文台・JAXA)で国際プロジェクトなどに携わった日本で唯一人のエンジニアとして、それらの経験を活かして山梨県内の小学生・中学生・高校生や地域住民の皆さんに宇宙のお話しを数百回、県外では数十回、国外では数回開催しております。さらに、地域のテレビやラジオで宇宙番組を数百回制作、現在も制作を続け毎月出演もしています。

アタカマ砂漠5千mの高地 写真:著者

宇宙を目指す若者が増えて欲しいと思う気持ちは当然ですが、宇宙関係に進める人は今現在は多くはありません。

ですから、そう言う気持ちとは別に、宇宙を目指すと言うよりは、例え宇宙関係ではなくても、自分の選んだ道に自信を持って欲しい。

自分さえ良ければよいなどと思う小さな人間になるのではなく、大きな志をもった職場の仲間や地域の仲間と助け合い、大きな夢に向かって大きな夢を持ち続けられる大きな人間を目指して欲しい。

そう言った皆さんの力が支えで、これからも地域や日本、そして世界が発展していくことと思います。

リタイヤしたエンジニアとして、そうなる事を心から願っています、頑張って下さい!

宜しければサポートお願い致します。いただいたサポートはクリエーターとしての活動費に使わせて頂きます。