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自分を信じて挑戦を続ける!パラアスリート 成嶋徹さん~SOZOWスクール高等部授業レポート~

2024年4月に開校したSOZOWスクール高等部では、キャリア・生き方を主体的に自分らしく創造する力を育てるためのカリキュラムを提供しています。
今回はそのカリキュラムの一つ、「生き方ライブ」の授業の様子をお届けします。

SOZOWスクール高等部オリジナルカリキュラム「生き方ライブ」とは

その道のプロなど、多様な背景を持つ人々をゲスト講師に迎えて行うライブ授業、それが「生き方ライブ」。

ゲストとのインタラクティブなやりとりを通じ、人生の転換点や夢中になるものとの出会いなど、その人の人生に触れていきます。

価値観が多様化し、“正解”がなくなったこの時代。多様な人の考えに触れ、人と異なることを恐れず、自分らしい将来を描く力を育てます。

では、ここから6月に開催された「生き方ライブ」当日の実況レポートをお送りしていきます!

今回のゲスト|パラアスリート 成嶋徹さんの願い事

今回ゲストにお迎えしたのは、パラアスリートの成嶋徹さんです。JR東日本の駅社員として働く一方で、パラ競泳やパラローイング(ボート競技)の選手として活躍しています。

パラローイングは視覚障がいと肢体不自由の選手を対象に行われるボート競技。2008年の北京パラリンピックから正式競技になりました。(提供:成嶋さん)

成嶋さんの公式HPはこちら>>

自己紹介のコーナーが始まると、成嶋さんは真っ先に

まずは、みなさんに僕が一生をかけてやりたいと思っていることを伝えたいと思います。」と真剣な眼差しで話し出しました。

「それは、オリエール病で苦しむヒトを支え、治る病気にすることです。

僕はいま、大会に向けたトレーニングや路上での弾き語り、講演活動など、さまざまな活動をしています。

なぜ、このような強い想いを持ち活動を続けているのか。それは僕自身が生後3ヶ月のころからオリエール病を抱えているからなのです。」

オリエール病(多発性内軟骨腫症)とは、全身に多数の腫瘍ができたり骨が変形したりする原因不明の病気のこと。手足の長さに左右差が生じるため、成嶋さんは足の長さが左右で約26cmも差があるそうです。

「オリエール病について検索すると、暗い情報ばかりが出てきます。

なぜかというと、症例が非常に少ないからです。僕自身はこうしてさまざまな情報を発信をしていますが、連絡をとっている同じ病気を抱えている人は日本全国でたった7名しかいません。 」

「日本人の人口がおよそ1億2,000万人なので、いかにこの病気を抱えている人の割合が少ないかわかりますね。滅多にこの病気にかかっている人に会うことはないでしょう。そういう意味で、皆さんは今日とてもレアな体験をしていますよ。

今日はもうなんでも聞いてください!なんでも答えます!
ちなみに僕が履いてる装具はとても高額です!(笑)」

両足の長さに差があるため装着している装具をぜひ見て欲しいと、足から外して見せてくださいました。

「電車に乗ってもみんながすごく見てくる。ここに広告をつけたら非常に宣伝効果があると思います(笑)」

提供:成嶋さん

冗談を交えながら足の装具を実際に見せてくれた後、真剣な眼差しに戻った成嶋さんは、再び一生をかけて叶えたい思いを繰り返します。

「僕は、同じ病気をかかえる子どもたちの課題解決に一生をかけて本気で取り組みたいと思っています

多くの人は救えないかもしれない。

でも、少なくとも僕が知り合った7名の子どもたちには少しでも役に立てるかもしれない。

それが僕の価値、Valueなのだと考えています。」

解決してきた課題①|パンツが履けない!

とても明るく病気のことを説明してくれる成嶋さん。しかし、生活をしていくうえで数々の課題に直面してきました。どのような課題があり、どう乗り越えてきたのでしょうか。

「ここから、課題を解決するために僕が考えたアクションを4つご紹介していきたいと思います。」

「まずは、

①病気用の下着をつくる、

ということです。

この病気の場合、足の左右差を緩和するために骨をひっぱって伸ばす手術をします。こちらがその時の写真になります。一度骨折をさせて、金属の器具を使い数ミリ単位で骨を伸ばしていくアナログな方法です。」

「手術がものすごく痛いということも辛いのですが......実は大きな問題としてパンツが履けない、という問題があるのです!

そこで僕は、腰の片側をボタンで全開できるようなパンツを考えました。筒状になっていると装具が邪魔をして足をパンツに通すことができないのですが、腰に巻くように履いてボタンで止めれば装具があっても履くことができます。

昔はお裁縫が得意な家族の誰かが作ってくれたりしたかもしれませんが、今はなかなかそうもいきません。そこで、商品化し誰でも簡単に買えるようにしたいと考えました。」

「知り合いのデザイナーに相談し試作品を作るところから、商品を流通させるところまでやりました。

しかもちゃんとおしゃれに作ることにもこだわりましたよ。」

解決してきた課題②|お医者さんに行きにくい

成嶋さんはおばあさんが病気に気がつき、病院へ連れて行ってくれたことで早期に病気が発覚しました。しかし、中には障がいや病気にネガティブな印象をもっていて病院になかなか行けない人も多いのが実情のようです。

そこで成嶋さんが挑戦した2つ目の課題は、病気の不安を解消する土台作りでした。

「例えば地域の公民館を借りて、医師との相談会を行うことを考えています。病院にいくのは勇気がいるし大変ですよね。

病院に行かなくても少しでも不安が解消できるコミュニティができたらいいなと思っています。」

解決してきた課題③|病気を研究してもらう

日本には現在338の指定難病があります。指定難病とは治療法が確立しておらず、長期にわたって療養が必要な病気のうち、国が治療法の研究支援や療養の経済的支援など助成制度の適応を指定した病気のことです。

「症例数が非常に少ないオリエール病は指定難病にはなっていません。そのこともあり、治療法の研究が進んでいないのです。

研究費を確保し治療法を研究してほしいと思っています。そのために僕は僕自身のことをお医者さんや国に向けて発信しています。

病気を研究すれば、いつかは治る病気になるかもしれないと信じています。」

解決してきた課題④|病気について知ってもらう

オリエール病は症例数も少なく、インターネットなどで調べると悪性腫瘍になる可能性が30%もある怖い病気だというネガティブな情報が目につきます。
成嶋さんはそんな状況も変えていきたいという想いをもっていました。

「情報が少ないから、オリエール病の人やその家族は未来に希望が持てず不安な気持ちになると思います。

僕は、僕自身のパラスポーツなどの活動を発信することで、オリエール病でも将来に希望がもてるようにしていきたいです。いずれは本を出版することも計画しています!

僕自身が、希望の星になりたい!と思っています。」

成嶋さんの人生グラフ

ボートや水泳競技で世界大会を目指しつつ、病気について発信し課題解決に取り組んでいる成嶋さん。非常にエネルギッシュで前向きな性格に感じられますが、どのように困難を克服し「一生かけて取り組みたいこと」に出会っていったのでしょうか。

特に本日の参加者と同じ高校生時代に、何に充実感を感じ、どんなときに辛さ・挫折を感じてきたのかを中心に振り返っていきます。

これまでの人生の充実感を表した成嶋さんの人生グラフ

「高校生時代は、モチベーションが下がっている時期でした。“体育見学”と書いていますが、これがまさに僕の原体験になっています。

今でこそパラリンピックのようにやり方を工夫して取り組める競技がありますが、僕が小中高生時代はずっと体育は見学していました。」

「このグラフからわかるように、パラスポーツを始めたのは33歳なんですよ。みなさんが想像したより遅いかもしれませんね。

学生時代に体育がずっとできなかったことを30歳過ぎてから取り返しているのです。

大人になってから出会った人が、子どものころ野球に夢中になった話や、水泳を頑張っていた話を聞くと、僕自身にそういう勝敗がはっきりするスポーツ競技体験がないことを改めて感じました。

そして“負けてみたい”って思ったんです。それでパラスポーツを始めました。

パラスポーツの選手は40代、50代の人も多く活躍しています。障がいがある人は、生きるのに精一杯なんですね。スポーツする余裕がないのが現状です。その点で僕は、応援してくれる人や企業との出会いに恵まれました。」

参加者からの質問|こんなとき、どうしてる?

ここからは、事前に用意した質問やチャットに寄せられたコメントに対して成嶋さんに答えていただきました。

普段の生活でどんなことが大変ですか?

出典:photoAC

「うーん......。

僕はないです!本当にないです!

でも同じ病気で苦しんでいる子どもたちにはきっとあるでしょう。例えば装具をつけているので体育は見学しないといけないです。また、水飲み場の蛇口の位置が高すぎて水が飲めないということもあるそうです。

そういう同じ病気の子どもたちの課題を解決していきたいという想いが僕には強くあります。」

どうしてJRに入ったのですか(鉄道は好きですか)?

出典:photoAC

「JR東日本という会社が展開している事業の多様性に魅力を感じました。

鉄道は人々の生活に溶け込んでいますよね。毎日、1,600万人が利用しているんですよ。それだけではなく、広告事業やSuicaなどさまざまな事業があります。

もともと電車好きだからJRに入社したわけではないのですが、入社して時刻表や電車の名前を勉強するうちに、電車が大好きになりました。」

モチベーションがあがらないときはどうしてる?


出典:photoAC

「モチベーションが上がらないこと......ないですね。

これは一つのテクニックなのですが、ルーティン化してしまうんです。トレーニングでもなんでも、習慣化してしまうと逆にやらないほうがモチベーションが下がったりしますよ。

僕は工夫やチャレンジが楽しいんです

生活で困ったことや、モチベーションが上がらないことがあったとしましょう。それをどう工夫して乗り越えていくかを考えるのがすごく楽しいです。逆に平坦な人生だと物足りなかったかもしれないですね。」

成嶋さんから中高生へのメッセージ

最後に成嶋さんから、参加してくれた皆さんに向けてメッセージをいただきました。

「年齢や性別関係なく、みんな苦しい思いをすることがあるかもしれません。
まわりからいろいろ言われることもあるでしょう。

それでも最後まで自分だけを信じて強く生きましょう。まわりには自分の痛みはわかりません。

自分のことは自分で大事にして、自分だけを信じる。そうすることでやりたいことが叶うかもしれないですし、たとえ挫折することがあっても立ち上がれると思います。」

最後に

終始エネルギッシュに子どもたちに語りかけてくれた成嶋さん。お話のところどころで「僕は人に恵まれたので」という言葉がありました。

最初は無理だと思ったことや周りが無理だと決めつけてしまったことでも、自分を強く信じて挑戦しているとどんどん応援してくれる人が集まっていくのかもしれないと感じました。

参加してくださった皆さんからも、ポジティブな感想が続々と寄せられました。

「強く生きることの大切さを教わりました!」
「定期テストで低い点数を取ってもくよくよしてられないと思った!!」

そして、「(初対面の人と話すのが苦手なので)オンラインで大人の多様な人生を聞ける機会があるのは、子どもの人生の支えになるだろうなと感じます。ありがたいです。」というコメントもいただきました。まさにSOZOWが目指しているオンラインライブだからこそのメリットを感じていただけて、スタッフ一同大変嬉しく思います。

今後も、SOZOWスクール活動報告をお楽しみに!

SOZOWスクール高等部のカリキュラム詳細を知りたい方はこちらの記事をお読みください。

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