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これからの女性たちが安心できる環境を。|♯わたしたちの緊急避妊薬 vol.9

毎週金曜、緊急避妊薬を飲んだ経験がある方のお話を共有する“#わたしたちの緊急避妊薬”のシリーズを公開します。緊急避妊薬を飲むに至った大切な体験談を通し、身近にある現状の課題を「自分ごと」として考えられたらと感じています。そして、大切な経験を語ってくださったみなさまへ、心から感謝を申し上げます。

※クラウドファンディング《“緊急避妊薬と性知識”で、若者に人生の選択肢を届けたい!#わたしたちの緊急避妊薬》のページもあわせてご覧ください。

恵子さん(仮名)は、現在、大学院で文学を専攻されている20代の女性です。性に対しての関心は高いものの、それにまつわる行為に関してはどこか罪悪感があったといいます。今回は、友人との性行為をきっかけに、緊急避妊薬を服用された経験をお伺いしました。

生理については話せても、性については厳しい環境


――生い立ちのなかで、性に関する話をできる環境にありましたか?

恵子さん:ある程度、できる環境にあったと思います。生理用品の使い方は母に教わったし、生理がつらいことや低用量ピルを飲んでいることなど、家族と話しています。

ただ、性行為に関しては少し厳しかったかもしれません。中学2年生の時、当時お付き合いをしていた彼氏の家に遊びに行ったんですね。帰宅してからそのことを母に話すと、強く怒られました。「もしかしたら、あなたのおしりに男性器を入れられるかもしれないんだよ」と。

――怒られた時、どう感じられましたか?

恵子さん:私はその頃からいつも彼氏がいたので、大学生になっても22時半には帰宅するよう門限が決められていました。嫌ではありましたが、母から夜道で男性器を見せつけられる被害経験について聞いていたし、心配する気持ちも分かるので諦めていました。

反対に、姉は性について関心がないからか両親から門限をつけられたことはありません。たまに、私が性に関することを教えてあげるんですが、「恵子は誰としたことがあるの?」と聞かれた時はいつもはぐらかしていました。本当のことを言うと引かれるし、親に告げ口をされるかもと…。

基本的に両親と仲はよく、色んな話もできるけど、緊急避妊薬を飲んだことについては話してません。

――学校や、友人間ではいかがでしたか?

恵子さん:友人とは「彼氏とキスをした」「どこまでしたのか」などよく話していました。自慰行為もしていましたが、どことなく罪悪感があって、それについてはあまり他言していません。

学校では性教育の授業で、コンドームの付け方に関するビデオを見たことを覚えています。映像が流れている最中に男子生徒がやたらとニヤニヤしていて、なんとなく“嫌だな”と思ってました。

不安を抱えながら、何度も自分を責め続けた

――緊急避妊薬を飲んだきっかけを教えていただけますか?

恵子さん:大学生のとき、性行為をする友人、いわゆるセフレがいたんです。彼とはいつも、途中からコンドームをつけるという方法で性行為をしていました。

ある時、挿入の前にフェラチオをしている最中にカウパー腺液※1が出ている気がしていたのですが、いつもと変わらずそのまま挿入してしまって。終わってから不安になり、翌日、緊急避妊薬を処方してもらうために婦人科へ行きました。

ーー処方時のお気持ちはいかがでしたか?

恵子さん:病院では「お大事にしてください」と言われただけで、説教などなくほっとしました。ただ、誰にもバレないようにトイレで緊急避妊薬を服用して、みじめな気持ちになったことを覚えています。

”どうしてこんなところで隠れて薬を飲まなきゃいけないんだ”と思うと同時に、”私が悪い、私の不注意のせいでこうなったんだ”と自分を責めていました。

当時は、緊急避妊薬を飲むことになった原因は自分にあると思っていたんです。高校生の時に生理がこなくて妊娠検査薬を使ったことがあったんですが、その時も一人で不安な気持ちを抱え込んでいました。

※1 カウパー腺液:尿道球腺液(にょうどうきゅうせんえき)。我慢汁といわれることも。男性が性的興奮を感じた際に尿道球腺から尿道内に分泌され、体外に排出される透明な液体。カウパー腺液の中に、精子が混じっていることもあり、膣外射精をしたとしても妊娠する可能性がある。

この女性だって不注意だ、自己責任だと言われるかもしれない。けれど…

ーーその後の行動に変化はありましたか?

恵子さん:当時の彼と性行為をする際は、初めからコンドームをつけるようになりました。緊急避妊薬を飲んだことは伝えたはずなんですが、その時の反応はよく覚えていなくて。いまのパートナーとお付き合いを始めるまで、関係は良好だったと思います。

ーーどのような思いでこの取材を受けてくださいましたか?

恵子さん:もしかしたら、私の話を呼んで「この女性だって不注意だ」「自己責任だ」という人もいるかもしれません。自分でも悪い部分があったと思っています。でも、だからって女性だけが負担を背負い、精神的に追い詰められていいはずはありません。『緊急避妊薬を薬局でも買えるように』という運動をTwitterで知り、そう思えるようになりました。

”私と同じ気持ちの人がこんなにもいるんだ”と、勇気づけられたんです。

その活動を知る前からジェンダーに関する本は読んでいましたが”性教育はやっぱり大切だな”、”女性の性の権利は大事だな”と思えるようになったのは実際に活動している人たちを見たから。ソウレッジの取り組みや、性教育を広めるための活動をされている方たちの存在が大きかったです。

これからの女性たちには誰にも相談できずに苦しむのではなく、私と同じように安心できるようになってほしい。そのために、どんな家庭環境でも、性に関する知識があったとしても、望んだ行為だったとしても、緊急避妊薬が必要な時がある。まずはそのことをたくさんの人たちに知ってほしいと思っています。

――ありがとうございました。

インタビュー・文/高山 秋帆


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