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緊急避妊薬を飲んだ経験が、いまの“想い”を作っている。|♯わたしたちの緊急避妊薬vol.11

毎週金曜、緊急避妊薬を飲んだ経験がある方のお話を共有する“#わたしたちの緊急避妊薬”のシリーズを公開します。緊急避妊薬を飲むに至った大切な体験談を通し、身近にある現状の課題を「自分ごと」として考えられたらと感じています。そして、大切な経験を語ってくださったみなさまへ、心から感謝を申し上げます。

※クラウドファンディング《“緊急避妊薬と性知識”で、若者に人生の選択肢を届けたい!#わたしたちの緊急避妊薬》のページもあわせてご覧ください。

真央さん(仮名)は現在、大学に通う20代の女性です。家庭や学校で性について学ぶ機会は多くあったといいます。今回は、高校生の頃に緊急避妊薬を飲んだ経験をお伺いしました。

会話のなかで生まれた性に関する疑問を、一緒に調べることができた。

――生い立ちのなかで、性に関する話をできる環境にありましたか?

真央さん:同年代の子たちと比較して早い段階で母親から性教育を受けていたと思います。これから起こる体の変化や性行為、避妊の方法などを兄妹たちと一緒に教わりました。

「子どもができちゃうから、(性行為を)したいなという時はコンドームを必ずつけて」「生理で体調が優れないこともあるから、女の子には優しくしてあげてね」など、具体的な話まで覚えています。

――学校ではいかがでしたか?

真央さん:家庭同様、話しやすい環境でした。小学校4年生の時、担任の先生が総合学習の時間に、実体験を元に精通や初潮について話してくれたことや宿泊合宿の時にもナプキンを配られたことを覚えています。緊急避妊薬についても授業で初めて知りました。

中学生になると、お付き合いする子が増えました。仲の良かった子にも彼氏ができて「コンドームは、どうやってつけるんだろう」「失敗しちゃったときに緊急避妊薬はどうやって買うんだろう」など、話しながら出てくる疑問を一緒に調べていました。

パートナーや両親に話しても、不安は解消しなかった。

――緊急避妊薬を飲むに至った経緯を教えてください。

真央さん:高校1年生の夏ぐらいに年上の彼氏ができたんです。合意の上で性行為をした時、最中にコンドームが外れてしまって。その日は気にしてませんでしたが、翌日、友だちに相談したら「これって大丈夫なのかな? どちらとも言えないよね」という話になりました。

そのまま、学校帰りに近くで緊急避妊薬を取り扱ってる病院を調べて処方してもらいました。彼氏に事情を説明して病院まで来てもらい、薬代は割り勘したと思います。

――飲んだ後は、いかがでしたか?

真央さん:妊娠してるかもしれないという不安で泣いていたし、帰宅がいつもより遅くなったので母親に「門限を破りやがって! どこで何してたのか証明しろ!」と怒鳴られました。保険証を出したからどちらにせよバレるなと考え、正直に話すと、さらに怒られました。

そもそもお付き合い自体にも反対をされていたので「そんなことしておいて謝りにもこないのか」と彼に対しても憤っていました。彼は電話で謝ってくれたのですが、なかなか母親の怒りは収まらず…。隣で聞いていた父親が「今回は同意の上だったんだし、自分で調べて薬を飲んだ行動を褒めよう」と言ってくれて、なんとか事態は収拾しました。

それでも不安は変わらずにあって。出産したらどう育てればいいんだろう、お金は?時間は?もしくは中絶?と色んな考えがグルグルと頭を巡って落ち着きませんでした。

なにより、体の中に別の人間がいるかもしれないということにすごく違和感がありました。彼に伝えても分かってもらえず、不安だからと電話しても「今ゲームしてるから」と素っ気なくされたことから喧嘩に発展したり…。

“伝えること”で、社会が変わるきっかけを作りたい。

――緊急避妊薬を飲んだ後、変化はありましたか?

真央さん:性行為のリスクは小さい頃から言われていたので分かっていたつもりでしたが、実際身に降りかかるとすごく不安でした。それに、その後も彼が「性行為をしたい」と言ってくることに対しても不信感を抱いていました。あんなことがあった後なのに…。

だけど、その時は家庭内が荒れていたこともあって、一人暮らしの彼氏の家が逃げ場になっていました。精神的に依存してたと思います。怖かったけど、「性行為をしないと自分は大切にされないんだ」と思い込んでいたから彼の意向を受け入れていました。

同じことを繰り返さないように、コンドームをつけていても射精はしないように気を付けてました。

――どういう気持ちで取材を受けてくださいましたか?

真央さん:緊急避妊薬を飲んでいなければ、今ほど性教育に関心を抱くことはなかったと思います。友だちに自分の経験を話すと性に関することで相談されることも増えました。

これまでに社会構造を勉強する中で、政治が動かしていることは分かったけれど、政治家にはなりたくないんです。だから、私にできる精一杯のこととして、当事者としての要望を伝えることで政治に関わろうと思っています。

今回取材を受けたことも、その一環です。少しでも未来の大人たちが助かるのであれば、何かを変えるきっかけになればと。

――ありがとうございました。


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