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スマホをなくしただけなのに

3月某日。
私はスマホをなくした。

なくしたと分かった瞬間、
時はスローモーション、というか止まった。

ここはどこ、わたしはだれ。
いや、ちがう。

思い出せ。探し出せ。
どこでなくした?私のスマホ。

行動を振り返れば

その日は朝から
確定申告をしに
税務署に行っていた。

署内には人がワンサカ。

職員さんにききながら
なんとか申告完了。

入って出るまでに
1時間半くらいかかっただろうか。

時計をみれば12:30。
頭を使うとお腹がぐー。
力尽きたし、ランチにいこう。

スパゲッティ気分だったので
愛しのサイゼリヤへ。

「ナスのミートソーススパゲッティ」を注文。

太めのスパゲッティに
油を吸ったとろとろナスと
ミートソースが濃厚に絡まって
う~ん、おいしい。

あっという間に食べ終えた私は
サイゼリヤをあとにした。

確定申告を終わらせ、
ランチも済ませた。
今日の空は快晴で
ポカポカと陽気も良い。

移動中の車のラジオからきこえてくる
パーソナリティのトークが耳心地よく、
満腹が徐々に眠気へと変わる。

15:00から別件があるが
まだまだ時間には余裕がある。

ちょっとくらい、寝てもいっか。

スーパーの駐車場のすみっこに車を停めた。
お腹いっぱいの時の昼寝って最高。
スマホでアラームかける?
いや、ええやろ、すぐ目ぇ覚めるわ。
(眠くてすべてが面倒モード)

ウトトトト…

どれくらい寝たのだろうか。
目が覚めた。
はっ!今何時だろう、
スマホ、スマホ。
ん?スマホ?

ガサゴソと
いつも持っているかばんの中を
探してみるが、あれれ…ない。

あ~、税務署にもっていった
もうひとつのかばんの中か?
ガサゴソ。
えっ、あれ?ないわ。

スマホが!ない!

ないと分かった瞬間、パニック寸前。
イッキに目が覚める。
いやいや、落ち着け私。
最後にスマホを見たのはいつだ?

……サイゼリヤだ。
スパゲッティが運ばれてくる前まで
スマホを見ていた!

テーブルに置き忘れたんや!!

「私のスマホあります!?」
サイゼリヤに電話したくても電話できない。
スマホないから。
じゃあ公衆電話?電話番号は?調べられない。
スマホないから。

考えている間にサイゼリヤに戻ろう。

車を走らせるが、
この時間がもどかしい。
もしかしたら、もしかしたら!!

色々あらぬことを考えてしまう。

急ぎの仕事のメール来てたらどうしよ。
着信あったらどうしよ。
PayPayいくら残ってたっけ。
(私は現金チャージ派)

てゆーか私!
なんで昼寝してん。
昼寝しんかったら
もっとはよ気付いたんちゃうんか……!

いや、ここで自分を責めてもしゃあない。
こういう時は励ましてみる。
「大丈夫大丈夫大丈夫」

念仏かよ。

ならば、捉え方を変えてみよう。
なくしたのはスマホやけど
財布じゃなくて良かったやん?

いやいや、財布の中にあるん
運転免許証と保険証だけやしな。
カード入ってへんし、
現金も確か数千円やで。
なくしたの、財布のほうがよかった。

逆効果かよ。

考えても仕方のないことを
グルグルと考えながら運転しているうちに
サイゼリヤに到着。

ドキドキしながら
お店のかたにきいてみた。

「あ、スマホのお忘れ物ですね
ありましたよー(^^)」という
安堵に包まれた返事を期待しながら。

しかし

「残念ながら本日の当店では
スマホのお忘れ物はございません……」

オ・ワ・タ。
(THE END)

ああもう最終手段。
ドコモショップに行くしかない。

紛失届を出して、
代替機か新規購入?
データも紛失になるのか?
(↑この辺よく分かっていない)

実家と夫の電話番号くらいしか
知らんぞ。わからんぞ。

サイゼリヤからドコモショップは
ちと遠い。

落ち着けと自分に言い聞かせるが
焦る気持ちと車のスピードが加速する。

赤信号で止まったとき
我に返り、思った。

いま事故を起こしたらもっと大変だ!

こんなときこそ、
ゆっくり運転しよう。

ドコモショップに到着。
「着いたぁぁ!!」

一刻も早く!と
運転席のドアを開けたその瞬間、
どこからか天の声がきこえてきた。

ーーーーーーーーーーーーーーー
もう一度、探してみなはれ。
ーーーーーーーーーーーーーーー

思い込みが激しい私。
せやな、あるかもしれへんな。

かばんと運転席まわりを
もう一度、ゆっくり、探してみた。

そしたら。

えっっ、ウッソ?!
「あったーーーー!!」

駐車場で軽く叫んでしもたわ。

非常に分かりにくいが、
運転席のドア側にある
溝みたいな、
普段は意識もしない場所に
こっそりとスマホは潜んでいたのだ。

当時の状況を後日撮影。
車ん中汚くて…すみません。。


なんでここやねん……!
こりゃあ気付かんわ。

それにしても、
まっったく記憶にない。
サイゼリヤで
スマホをかばんに戻した記憶もない。
ズボンの後ろポッケに入れたのか?

どのみち、
スマホは車の中にあったのだから
落ちた時それなりの音がしていただろうに
その音にも気付かなかった。

私、ボーっとしすぎ?

このスマホ、サイゼリヤから
テレポートしてきたんちゃうんか。
(エスパー魔美か)

いやいや、完全なる私の不注意。

サイゼリヤのお店のかた、
お手数かけました。
スマホ、ありました。

このまま
「スマホなくしたんです」って
ドコモショップに行ってたら
目の前に停めている車の中にスマホはあるのに
紛失の手続きをするという
なんともマヌケな光景が
繰り広げられていたのかもしれない。

ちょっとゾっとする。

スマホをなくしただけなのに

こんなにも心をかき乱され、
翻弄されるとは。
スマホの存在のデカさよ。
本当になくなっていれば
ダメージもデカい。

スマホが車の中にあって
本当に良かった。

ホっとしたら今度は
感謝の気持ちが溢れてきた。
スマホに。車に。世の中に。
なんでもない日常に。
「ありがとう……!」

気分や気持ちが変われば
風景やものの見方も変わる。
そんな気がする。

スマホが見つかりホっとした瞬間
車から見えるいつもの風景が
とてもきれいに見えたのだ。

澄みわたっていて、清々しい。
世界はこんなにも美しかったのか
と思うくらい。

はっ!時計を見ると15:05。
15:00からの予定、
完全に遅刻やん。

スマホから電話着信のバイブ音。
「Sowakerさん、15:00過ぎています。
いまどちらですか?」

【 E N D 】

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