2019/9/8の剱岳の事故について考えてみました

剱岳遭難について色々と言われてますが、偶然だけど同じ日に入山し、彼女の約1時間ほどの差で途中まで同じ行程で歩いた私的に考えたことです。

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9/8の11時40分位の雷鳥坂中腹の彼女が撮影した写真が出ていました。おそらく劔御前小舎を12半時、剣山荘裏の剱岳の登り口に13時半ほどだったのではないかと思います。

この時、台風15号が日本列島の太平洋側に来ていました。その為、実は報道で言われているのとは異なり、富山は晴天、フェーン現象で気温が標高2400m以上でもかなり高かったです。そして天気は夜の20時くらいまでは良かったです。

しかしながら、翌日の天気は不安定で天気予報でもはっきりしないくらいでした。
ここで午後1時過ぎに剣山荘裏の剱岳の入り口にいた彼女は山頂を目指す理由を考えてみます。
頂上まで大手の地図のCT(一般的にかかる時間)は3時間ちょい。
山レコなんかでは2時間とかで行けたよ!とか軽ーく投稿してあります。(嘘も多いけどこれを信じてしまう人も多いのがかなり問題)
明日の天気は悪くなる可能性大だし、まだ午後1時過ぎだし、一般的な時間より速く歩ける人(トレランをしているとか)なら行ってしまう気がします。
だって明日は雨かもですよ!(実際に雨でした)そしてこの日の日没は6時過ぎ。たぶん6時半過ぎまでは明るかったです。

CT、往復7時間くらいなんだけど、いつものペースでは1時間位は短縮できる脚があったならそこで留まらない人もたくさんいるはずです。
そして彼女も登り始めた。
ところがこの日、好天の休日で下山の人も大勢いて、思うように進めなかった或いは高温でバテてしまったのではないかと思います。

なぜなら後ほど分かった彼女の持ち物で、カッパや防寒着は持っていたが、ヘッデンは持っていなかったとのこと(※遺品の中になかったということなので、もしかしたらヘッデンをつけていたけど滑落時に外れて落ちたのかもしれません)から、暗くなる前に下山できるつもりだったのでは。(ヘッデンを持っていたとしても日没後にヘッデンで歩くなんてのは非常時なので実際に脚が速かったと予測)
だけど剱岳、登り道下り道が一緒になっているところもあり、思うように進めないんです。特にこんな天気のいい休日の午後は。

前剱で15:30位じゃないでしょうか。
たぶん大勢の人たちがここら辺ですれ違っているはずです。
下りてくる人が多くて思うように進めなかったのではないでしょうか。

そしてその先のカニのヨコバイを間違えて、登ろうとしてガイドや登山者たちに注意されています。「ここは登りルートじゃないよ!」と。

登頂時間から逆算すると、このヨコバイ通過時点でおそらく午後4時くらいでしょう。
この時に、「登りルートはタテバイ側でここは下りのヨコバイ!君は間違ってる」と注意したガイドたち自身もここにいる時点でかなり遅いような気がします。(日没ギリなはず)

ここで疑問に思うのは、ルートを間違ってるの注意したけど、どうして彼女にピークを目指すのを止めなかったのでしょうか?とても不思議です。
午後4時で登っている人をなぜに止めなかったか。

その1、行くのをやめなさいと言ったけど聞かなかった…でも強く言ったら多分やめたと思います。
その2、頂上へ行くことに関しては何も言わなかった。
どちらにしてもここが最後の事故を防げたチャンスだったような気がします。

彼女をなぜ止められなかったのか。

その日の彼女は半袖、ハーフパンツ(スパッツは履いていました)でトレラン風の装備に見えたのでないでしょうか?
脚が速そうだし、大丈夫かなと思ってしまった。また、そんな人に時間的に厳しいから降りろとは言いづらい。
やっかみのありがた迷惑になるかもです。

或いはまた、自分たちだって午後4時にヨコバイなので、日没には間に合わないほど遅い!!
他人のことなんて構っている場合じゃなかったのかもしれません。
むしろ、急いでんのに降りルートから登って来やがって、ちっ、邪魔だ!くらいなのでは。

でも、剱岳の有名な核心部のルートを間違える人が、この時間から登頂なんて冷静に考えたら危険すぎます。
やっぱり声をかけて、ヘッデン持ってる?ビバークできる用意もしてある?
夜から雨だからもうタイムアウトだよ、と強く言うべきだったと思います。

登りルート下りルートの間違いを注意してる場合じゃないんです。

そして登頂5時、日没は6時過ぎでこの日は真っ赤な夕焼けで6時半くらいまでは明るかった。
暗くなりつつある6時半。ちょうど前劔辺りです。ここから一気に暗闇の世界に。彼女はヘッデンを持っていませんでした。(持っていたとしてもヘッデンの光だけでは迷いやすい場所です)

実はこの前劔から一服剱のあたり、ルートが分かりにくいんです。
翌日、雨とガスの中私は登頂したのですが、下りの際、この辺りが視界不良で他人の踏み跡を辿って行くと間違える場所があり、直ぐに引き返しました。

多分、薄闇の中、焦りながらここら辺を通過しようとしてたのではないでしょうか?
日が沈み、もしヘッデンなしのどっぷり暗闇なら諦めて警察へ救助の要請をお願いすると思います。
でもまだちょっと明るかったんだと思う。

少しづつ暗くなってきて、少しづつ視界が悪くなってきて、焦って間違った方へ行って事故に遭ってしまったのでは…。
もしくはヘッデンの灯りだけでは分かりにくい場所で焦ってルートを間違えてしまったのかもです。

真っ暗なら逆に諦めてSOSの電話しますよね。

おそらく6時から7時の間に事故に遭われた様な気がします。

そして実はその後なのですが、たまたま私が外に出た時、7時30分くらいですが、前劔を下りる2人のヘッデンの灯りを正面から確認しました。

なんとこの後ろ(たぶんだけど)にまだ人がいたみたいなんです。

実はこの人たちは源次郎で登り、別山で下りた方たちで行きも帰りも彼女と会っていないということでした。
せめてこの方たちが別山のピストンなら、もしかして一緒に合流して下山できたかもしれないです。

その辺りも含めて残念です。
それにしてもこの日は人が多かったんだと思います。
翌日の天気が悪くなりそうなので、明日登るのを一日繰り上げて、ちょっと無理してでも登頂した人、多かったはずです。

そして日没後に行動する人も多かった日でした。
実際、私が宿泊していた小屋もガイド同伴の方が遅くなる連絡はあったものの、かなり遅い時間に小屋へ入ってきていました。

実際は登山好きのど素人でなくても日没後も歩くことだってあるんです。

だから、時間が遅すぎるわ、こんな時間に登頂なんて絶対ないわ、素人過ぎ!と、そこばかり言うのもどうかと思います。たしかに遅い。でも遅くなった理由があるのです。

遅い登頂だけを見て無謀な!というより、なんで無謀なのかを考えていますか?
なんですれ違った人が、なんでダメなのかを彼女に話して納得させて止めなかったのですか?
今、無謀、無謀言うてる人はその時彼女に会っていたらちゃんと説明して止めることができましたか?
もしヘッデンを持っていたとしても、ヤバいんだよ、とちゃんとした理由で説明できますか?
私も、それができるとははっきり言えない。
できる人は少ないと思う。
だって山のプロのガイドたちも夜になっても歩いてたりするんだもん。

半袖ハーフパンツの軽装で剱岳に行けるくらいの強者なんだな、余計な事を言ったら失礼かなと、恐縮して言えないです。
いらん事言ってこのBBA、ウザ!と思われたくないもん!
また、単独行だから危ないって言える?
それもないです。
実際、彼女は一人でボリビアを旅したりするくらいなので、単独行も不安でない感じに周りは見えたのでは。

でもね… 私、たぶんちょっとは話はする!!
どっからきたの?今から頂上ですか?どこに泊まるの?ヘッデン持ってる?剱岳はよく来るの?とか。
おばちゃん丸出しだけど。

その中で、この人は大丈夫かな?とかフルに色んなこと想像してヤバいなと思ったら止めると思う…たぶんだけど。
もしヘッデンを持っていたとしても、初めての別山尾根ですとか聞いたら、「今、登頂を目指したら、日が落ちるか落ちないかのところが剱岳の本当の核心部(前劔と一服剱の間が事故が多い)になっちゃうよ、マジあかんよ」と止めると思う。

今年の2月に西穂高岳に行った時、独標で吹雪いてしまい、たまたま一緒に登っていた女の子はピラミッドピークまで行くって言うのを止めた。
凄い悩んだけど。
彼女の技量なら行けたのをいらんことしたかなとか。

でも、いまは間違ってなかったと信じています。

昨今、トレランが大流行りで剱岳も日帰りで早月尾根をピストンしたりする人が多いので、そう言う人たちに遅くなるから危ないよ、とか言いづらいのはすごくわかる。

だいたい、早月尾根なんか夜中から出発する人も多いし日没後、馬場島にまだまだたどり着けず下りてる人もたくさんいる。

基本、日帰りって暗闇登山の人が多い。
暗闇じゃなくてもずっと走ってる。

でもね、剱岳ってたとえ早月尾根だとしても日帰りやトレランする山じゃないと思うんです。
走ったり、暗闇を歩いたりする山じゃないんです。
じっくりしっかり慌てず登る山なんだと思う。

だから、もしこれから、私はこの時のような状況だったり、彼女のような人に会ったのら、まずは、ちょっと声をかけてみようと思った。
バタバタ登る山じゃないんですよ。
ゆっくり山も人も味わいながら歩く山なんだと思います。

そして誰でも同じ様な事故が起こる可能性が大いにある様な気がするからです。

だからこそ、この事故が、なんで起こっちゃったか、どういう風にこうなっちゃったかを皆んなよくよく冷静に考えないといけないといけないと思います。

長い話になってしまいましたが、そういうことです。

長い文章失礼しました。

※写真は同日9/8の6時過ぎの剱岳です。
まだ明るい。この時間は風もなかったです。天候不良、台風なのになんて言ってる人いるけどそれはないです。

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