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雑記:あざとい女と、電車と、切実さ

 最近JRの電車内のモニターでちょっとした番組が何本か流れるようになった。TRAIN TVって言うらしい。始まった当初は特に目もくれてなかったけれど、最近はちょこちょこ観るようになっている。『黙喜利』とか、チョコプラがくだらないことを全力でやっているやつとかが結構好きだ。
 ヒカキンのやつはいよいよ彼のメンタルヘルスが心配になってくる。『ウォッチメン』のパリアッチのジョークが思い起こされるくらいに。ヒカキンが素性を隠して精神科医に相談したら「ヒカキンの動画をご覧なさい。馬鹿馬鹿しくて気が晴れますよ。」って言われて、ああ先生、私がヒカキンなんですって泣き崩れているところがありありと想像できる。
 ちょっと話が脱線した。話をレールに戻します。

 そんなTRAIN TVの中で、一つだけどうしても引っ掛かるものがある。森香澄が餃子食いに行くやつだ。
 今「森香澄」って漢字が合ってるか気になってググったら肩書に”タレントとグラビアアイドル”って出てきた。確かにこの間写真集がどうのこうのって言ってたわ。テレ東のアナウンサーからずいぶん遠くまで歩いてきたな。大変だったね。別にそんな遠くもないか。新宿-新大久保間くらいか。
 文章の運転間隔調整はこれくらいにして、森香澄が餃子食いに行くやつの中でどうしても引っ掛かることが1つだけあることを伝えたい。先に言っておくが、僕は別に森香澄のことが嫌いなわけではない。むしろ大変好意的な感情を抱いている。シンプルにルックスが好みなのは言うまでもなく、自分の容姿が優れていることに自覚的で、そのことを無理に隠そうともせず、最大限活用して我が世の春を楽しもうとしているタイプの女性にめっぽう弱いのが僕なのである。今ググったけど東京女子大学出身なんだ。ここから歩いて5分くらいじゃん。西荻窪駅前の西友で買い物したりしてたのかな。あそこの西友改札側の入り口から入ると不安になるくらい奥行があってこのまま奥まで進んでいったら戻れなくなるんじゃないかってちょっと不安になるんだよな。そんなわけないのに。
 文章まで多動過ぎて全然本題に入れない。とにかく森香澄が餃子食いに行くやつのなかで1つだけどうしても引っ掛かることがあるんですよ。これ書くの何回目だよ。
 その森香澄が餃子食いに行くやつってのが確か、芸能人がお忍びでどうのこうのって企画でして。こうして流してる時点でお忍びでも何でもないだろとは思うものの、そこは別に引っ掛かりはしない。問題はその後である。そのお店について森香澄が「学生時代から来てみたかったお店」と言っているのである。
 「学生時代に通っていたお店」ならわかる。「学生時代から通っているお店」でもわかる。ただ「学生時代から来てみたかったお店」はおかしいだろ!お前28歳だよな!?写真集出す時に「まだ大人でも子供でもない歳」みたいなこと言って28は立派な大人だろっていう意味わからないプチ炎上の仕方してたからよく覚えてるよ。
 24か25歳くらいの人が言う「学生時代から来てみたかった」はスッと入ってくるよ。「ああ、学生時代から来てみたかったんだなあ」って。でも28歳のそれは通らないだろ!現役で大学入学してセントフォースの関連会社に所属しつつストレートに卒業してんだから卒業から見積もっても6年くらいあっただろって!学生時代から「ああ、あのお店行ってみたいなあ」って思ってたならその6年の間のどっかしらで行ってるだろうがよ!それでも行ってないならそれはもう「行ってみたいとはそこまで思ってなかったお店」でしょうよ。舐めやがって。アナウンサー時代に持っていたはずの真実を伝えようとするジャーナリズム精神は何処に行っちゃったんだよ。

 まあ、実際に本人がそう言っていたというよりは、作家の人が何か一言キャッチコピー的なものを差し込んでひと盛り上げしておこうみたいな意図で書いたってのが真相に近いだろうなと結論付けて自分を落ち着けようと思った時に、ふと、1つの可能性が浮かんだ。
 森香澄にとって、そのお店は本当に「学生時代から来てみたかったお店」なのではないか?
 軽くググって出てくる経歴をざっと眺めるだけでも、森香澄が実に多忙な日々を送ってきたことは想像に難くない。学生時代からの活動の甲斐もあって、テレビ東京にアナウンサーとして新卒で入社し、局アナとして忙しい日々を送り、その中でぽつぽつ炎上も何個かあり、独立に向けての動きも進め、フリーとなってからはポスト田中みな実と言わんばかりにあの枠でテレビを一周し、この間写真集も出した。本当に忙しい日々であっただろう。それこそ、かつてあれほどまでに切実であったはずの餃子屋への思いが、全くもって心の中から居場所を無くしてしまうほどに。


 その日も森香澄は多忙なスケジュールをこなしていた。収録と収録の合間の休憩の内に次の仕事のアンケートに答えなければ。テレビ業界にも働き方改革の波が押し寄せてきてから久しいけれども、どうしても出る側のほうはそうはいかないよな。休憩って名ばかりだなあ。と、テレ東での会社員時代をほんの少しだけ懐かしむ香澄であったが、この道を選んだのは自分だと気を取り直してアンケートに臨んだ。
 どうやら、JR東日本の電車内モニターにて新しく始まる番組の、いち企画のものであるらしい。新しく立ち上げるものに抜擢されるということは、それだけ話題性などの面で期待されているんだなと、香澄の頬がすこし緩んだ。アンケートの内容は「お忍びで行ってみたいお店」…。ベタでよく聞かれる内容だが、こういう時のためのお店は何軒か用意してある。いつものようにその中からひとつふたつ書いておけばいいかな…と考えていた香澄の脳裏にふと、あるお店のことが浮かんでくる。
 ああ、どうして忘れていたんだろう。あんなに行ってみたいと思っていたはずなのに。次の休みこそは、今は忙しいから、ちゃんと休んでおかないといけないから。そんな風にして行かずにいるうちに、いつの間にかすっかり忘れてしまっていた。気が付けば、香澄の頬には温かなものがつーっと伝っていた。アンケート用紙を濡らさないように気を付けながら、香澄が綴ったお店の名前は──────────────────。


 これだ。絶対にこれだわ。滅茶苦茶しっくりくるもん。これならすべてのつじつまが合うしこれに違いない。森香澄さん、この度は僕の至らない配慮、浅い洞察から短絡的にそんなわけないと決めつけて恫喝まがいのことを言ってしまい本当に申し訳ございませんでした。これからはきっちりと態度を改め、深い想像力をもって人に向き合うことを徹底することを通じて反省の意をしっかりと示していきたいと存じます。写真集も買うかどうかもう一度悩んでみようと思います。お仕事頑張ってください。応援しています。

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