ワンピース考察：ワンピースの説話構造と悪魔の実=知恵の実から空白の１００年を読み解く
概略
構造主義という考え方があって、この中に物語をパーツに分解して並べて、構造を読み解く、という手法があるんですよ。
日本の神話に黄泉の国に行く話があるのですが、ギリシャ神話にも娘が冥界に行く話があって、デティールは違うんですけど、死の国の人を取り返そうとする、取り返したい人が死の国の食べ物を口にしてしまったから取り返せない、みたいに話を抽象化すると重なる部分があったり、黄泉の国から流れる際に桃を投げる、冥界のザクロを食べてしまったから冥界に囚われる、みたいに果物がキーになってるけど真逆の役割をする。みたいな。
お話をパーツに分解して、並べて比較したりすると以外と全然違う国の神話と神話が同じ構造じゃん、とかが見えてくるみたいな考えです。
もっちー先生がよく言う話の骨格みたいな感じですね。
この考え方でワンピースの話を分析すると、
＂不幸な状態の人ないし土地＂→＂過去編でなぜそうかったのか明かされる＂→＂ルフィ達が解決する＂というパターンが繰り返されてると
言っていいと思うんですね。
そうなると最終章で明かされる空白の１００年の内容というのはワンピース世界全体の過去編として＂今につながる不幸のはじまり＂の物語になるのは手堅い予想だと思うんです。
で、別の話なんですが、悪魔の実が旧約聖書の知恵の実のオマージュなのは確定的じゃないですか。
カクとかバナナっぽい悪魔の実を食べてたので多分リンゴ以外の果物も悪魔の実にはなるんでしょうけど、作中明確に悪魔の実になったのはパンクバザードの「ごくろうスマイリー、また会おう」のシーンでリンゴが悪魔の実になるところだけですし、SMILEも明らかにリンゴの形してるので、尾田先生の中で原型は知恵の実なんだと思うんですよ。
で、この知恵の実の話を構造主義的に分解すると、人が何かを選択し、知恵を得て、代わりに不死ではなくなる話。と言えますよね。
コレと同じ要素を持つ話がギリシャ神話にあって、この神のせいで人は死ぬようになってしまい、この神のおかげで人類は火というか火に象徴される技術全般を得た。
という神がいるんですよ。
空白の１００年は、その神、プロメテウスの神話をモチーフにした話になるのではないか。
という仮説になります。
ワンピースの説話構造
ワンピースと言えば過去編がアツいじゃないですか。ココヤシ村のベルメールさんとか、パラティエンのゼフとか、ドラム王国のヒルルクとか、空島のノーランドとかetc...
コレらの過去編って、必ず、まず現状の不幸とか不幸まで行かなくても幸せではない描写があって、例えばナミがルフィ達を裏切ってアーロンにお金渡してました、とか、サンジ仲間にしたいけど断られます、とか、まず＂今＂の話があり、その次に＂過去＂の話がある事で、今の話の中でおかしな所とか、納得いかないところの理由が提示されて、一回感情としては落とされて、それを最後解決する時の気持ち良さが増す。と言う形なんだと思うんです。
そこから予想できる最終章の展開の構造と空白の１００年の果たす物語上の役割
そうすると、基本的には過去編って不幸話になるんですよね。「オハラは滅んで幼いロビンは1人旅立ちました」みたいな。
「あー、だから今ロビンはCP9に抵抗出来なくて死にたがってるんだ」とか、今の不幸の理由を読者にわからせたり、その後解決する時のカタルシスを増幅させるために機能するもののはずなんですよ。
そこから逆算すると、最終章もまずは今の不幸が描写されて、次にその不幸の原因となる過去編があって、最後の戦いがあって、過去からつながる良きものを受け取り悪いものを断ち切り、という大枠は間違いないと思うんです。
となると、他はまだわからない部分多いですけど、過去編の部分に何が当てはまるかと言えば＂空白の１００年＂（とロジャー海賊団の話）なのはほぼほぼ間違いないと思いません？
で、詳細は色んな余地がありますけど、空白の１００年に起きた出来事は今の＂不幸＂に繋がっていくのも間違いないと思うんですよ。
麦わら一味が、解決すべき問題を明らかにしてくれなければ最後カタルシス無くなっちゃいますから、今と繋がるのは当然として、それだけじゃなくて、空白の１００年がわかって、それを知ったロジャー達の想いややった事もわかって、それを受けてルフィ達がこうする。
という流れになると思われる以上、何かしら解決するべき問題が見えて来るんだと思うんです。
知恵の実の話
ここで一旦、有名な話ですけど一応なぞっておくと、聖書にある知恵の実の話というのは、その昔、神によって作られたアダムとイブが蛇に化けた悪魔に唆されて知恵の実（=リンゴ）を食べたことによって、知恵を得るんですが、神の怒りに触れて楽園を追放されて、不老不死でも無くなって、それ以降人間は死ぬようになる、と。
聖書の価値観
旧約聖書の知恵の実の価値観で言えば、知恵の実を食べたのは人類にとってはマイナスだったという考えなんですよね。
バベルの塔の逸話とかもありますし、実際暗黒の中世と言われるぐらいキリスト教が支配的だった時、ヨーロッパって文明の進歩とかがものすごい停滞してたりとか、聖書的な価値観で言えば知識とか技術とかよりも、神を敬い質素に敬虔に暮らしましょう。みたいな感じなわけです。
尾田先生の価値観
対して、ワンピース作中で良しとされる事とか、そもそも主人公のルフィが悪魔の実を食べて楽しそうに冒険してるという一点だけ見ても、尾田先生の価値観は聖書的な価値観とは反対側にあると思われますよね。
例えば死というものに対しても、
肉体の死は問題じゃないんだ、と、ヒルルクやロジャーに言わせていたり、
フランキーの発明品に目を輝かせるルフィやチョッパーが描かれたり、尾田先生の価値観というか現代日本の一般的な価値観と言っていいと思うんですけど、知識を得たり技術が発展したりする事はいい事だ。
という価値観だと思われますよね。
多分尾田先生に、今から知恵の実吐き出したら知識とか技術全部なくなる代わりに不老不死の身体になるよって言っても断ると思うんです笑
そうするとワンピース作中では、進歩を禁じて永遠の生命をもたらす側ではなくて、死と引き換えに様々な進歩を享受する側にルフィや、ロジャーやジョイボーイは立つことになると思います。
プロメテウス神話
そこでプロメテウスの話になるのですが、プロメテウスの神話は聖書とは違って２つの別の話なんですけど、面白くない方の話からすると、一つは牛の肉と骨を分けてゼウスに選ばせ、ゼウスは美味そうな肉を選ぶだろうと思ってたら裏を読まれて骨を選ばれて、神が骨=不死となり、残った肉を与えられた人はやがて腐る=寿命があって死ぬ存在となった。
つまり、なにかを選択して、不死と定命のモノに分かれた。
という話が一つ。
もう一つが、プロメテウスは神々が独占していた＂火＂を盗んで人類に分け与えると同時に技術や知識を人に与える。という話なんですよ。
聖書的な価値観と反対側の価値観を肯定する時に、最も共感しやすい神、が多分プロメテウスなんじゃないかなと思うんです。
プロメテウス神話とワンピースのリンク
ワンピース作中で火と言えばまず思い浮かぶのは火拳のエースであり、そのメラメラの実を受け継いだ炎帝サボじゃないですか。
他にもシャンドラの灯とか、ロジャーの巻き起こした業火とか、火に対してポジティブなイメージはあると思うんですよ。
また自身も神なのに、人を憐れんで神を裏切って人の側に立つっていう立ち位置もすごくワンピースっぽいじゃないですか。
ルフィも海賊でありながらアラバスタやドレスローザで海賊に苦しめられてる民衆の味方をして海賊を倒してきてますしね。
ちょっと違いますけど、奴隷を解放する戦士、とかともニュアンス的には重なるものがあるじゃないですか。
人類に火を分け与える神と、太陽神ニカ、とかもかなりニュアンスが近いと思いますし、
ビッグマムのホーミーズにいた正にそのままの名前のプロメテウスも、ジンベエにはデカイ火事みたいなもんとか言われてましたが、小さい太陽みたいに描かれてたりもするんですよ。
更にプロメテウスって巨人の神なんですよ。
巨大な麦わら帽子と繋がっていきそうじゃないです？
また、プロメテウスが火を盗んだ方法は、大茴香という植物の茎の中に隠してもたらす。
彼は大茴香(おおういきょう)の茎の中に天上の火を隠して地上へもたらしたという
陽樹イブとリンクしません？
また、神々の火を盗んだ事でプロメテウスは
プロメテウスを遠いコーカサスの岩山に鎖でつないで大鷲(おおわし)に彼の肝臓を食わせ、夜の間にふたたび肝臓が元どおりに回復するという絶えることのない苦痛を与えた
となるわけなんですが、この（人間目線で言えば悪くないのに）終わらない罰を受けてるという話って
ズニーシャを連想させません？
ズニーシャも絶対ジョイボーイ側だと思われるのに罪ってなんなんだろうっていう話があるじゃないですか。
昼罰を受けて夜回復してっていうのも、太陽神ニカと絡めたりできそうな設定ですし。
背中に火を背負ったかつて神と呼ばれたルナーリア族、とかも意味深に関わってくるじゃないですか。
ニュアンスとか印象的にかなりリンクしてるんじゃないか？
という点は見られるんですよね。
空白の１００年がプロメテウス神話モチーフだった場合
仮にこの仮説にのっとったとして、ジョイボーイをプロメテウスの位置に置いて、知識や技術を持った神々を裏切り、人にそれらをもたらした。と考え空白の１００年の内容を予想すると
裏切られた神々=月の民、なのかなと。
青い星の人たちより文明的に進んでそうですし。
技術的には進んでいたものの、資源が枯渇し青い星に降りてきた月の民達は、その進んだ技術を使って青い星の人たちに神として支配的に振る舞った。
ある時、その月の民のうちの一人ジョイボーイが（例えば悪魔の実とか）それらの月の民の技術や知識の独占を解いて青い星の民にも分かち合うような事をしてしまう。
それに怒った神々（ジョイボーイ以外の月の民）はジョイボーイの率いる巨大な王国を滅ぼし、人類にも罰（寿命がある事、に似たような、その世界の人にとってはあって当たり前で意識すらしないなんらかの不幸、例えばレッドラインとグランドラインによって世界が分断されている、とか天竜人がいて、奴隷制度があってみたいな世界のあり様とか）を与える。
みたいな話が空白の１００年の概略になるんじゃないでしょうか。
パンドラの話
改めて調べ直して驚いたんですけど、超有名なパンドラの箱のパンドラですよ。
その箱を開けたら世界中に厄災が広がって、慌てて閉めた箱の中に最後に希望だけが残ったという、あのパンドラの箱のパンドラですけど、
なんとこのプロメテウス神話での人類への罰として出てくるんですね。
知りすぎた人類に罰を与えるために神によって作られたのが人類最初の女パンドラなんですって。
こんな可哀想な話あります？
＂人類に厄災をもたらすために作られた少女（意訳笑）＂が、もし仮にワンピース世界にいたとしたら、そんな子ルフィが、尾田先生が、ほっとくと思います？
絶対その子が救われる話が描かれると思いません？
このパンドラの配役に当てはまりそうな人をワンピース作中で探すと
・イム様
歴史から消すべき灯をなんらかの理由で選び続けなければいけない不老不死の少女とかだったりして
・ナミ
具体性はないけど意味深なバックボーンが存在する事は示唆されている
・ビビ
イム様がビビの手配書は切り刻まなかったのはビビがいる事が現行のシステムでの世界の支配を強化する存在だからなどが考えられます。
この場合、「再会したらまた仲間と呼んでくれますか」もフリとして効いてきますよね。
月の民が知りすぎた人類に対して与えた罰そのものとなる、生きてるだけで人々を不幸にするヒロインがこの先出てくる（というか既出の誰かに当てはまりそう）じゃないですか？
パンドラの箱
パンドラの箱に希望が残るっていう部分も、ワンピースやルフィの夢の果てとリンクしそうじゃないです？
ワンピースは具体的なモノである事は明言されてますけど、世界に希望をもたらすようなモノではあると思うんですよね。
緑牛が言ってたような、世界政府に加盟してない国には人権がない、みたいな世界はひっくり返してほしいじゃないですか。
ひとつなぎの大秘宝としてのワンピースの正体はともかく、ワンピースという作品が提示する価値観としては、＂誰もが楽しく幸せに暮らしていい、その方がいい＂という価値観なのは間違いないじゃないですか。
世界を舞台にして、世界をひっくり返すと言われる宝を目指して、最後に世界がどうなって欲しいか、どうあるのがよりいいか、を何も触れずに終わる方が難しいと思うんです。
となればワンピースそのもの、ルフィの夢の果て、空白の１００年にジョイボーイが目指したもの、など終盤に明らかになる重大な要素のどれか、もしくは全てがそういう内容に繋がっていくものにはなるんじゃないでしょうか。
結論
・悪魔の実は知恵の実オマージュである
・空白の１００年は今につながる悲劇の話である
という手堅い予想に
・知恵の実と構造的に重なるプロメテウス神話をワンピース世界に当てはめると意味深なリンクと思える部分が多数あるので、空白の１００年はプロメテウス神話モチーフの話になるのではないか
その仮説に基づいて空白の１００年に起こった事を予想すると、
先進的な技術で青い星に神として君臨した月の民。
それを裏切り、青い星の民に技術を分け与えた巨人の神ジョイボーイとジョイボーイ率いる巨大な王国。
月の民に敗北し滅ばされる巨大な王国。
歴史を修正し、天竜人の支配する今の統治システムを守るための＂装置＂のような存在としめ、作られたヒロイン＂パンドラ＂。
ジョイボーイ達は＂パンドラ＂を救い、世界を救うための秘策としてワンピースやポーネグリフを最後に残して歴史から消える。
その痕跡を辿ったロジャー達は世界の真実を知り、ジョイボーイ達の秘策を発動させる事を選び、そのために各々が役割を背負って25年以上の雌伏の時を耐える事を選択する。
と言ったようなストーリーが妄想できますね。
BOT向けに今までの考察まとめてなるべくパンチ力高めてみました笑
あんまり確定的じゃない話は避けてきたんですけど、ちょっと発想の飛躍というか妄想成分ある方がウケそうなのでらしくない内容に笑
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