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えいやっ!と飛び出すあの一瞬を愛してる

新卒から約4年間務めた会社を今月末で退職した
客先には2年とちょっといて半分以上を過ごしたことになる
客先は「無茶振り」を「いい経験」で言い換える職場で、陰湿で体育会系の人々が跋扈していた。
「こんな職場大嫌いだ!」と思っていたけど、いざ辞めるとなるとあたたかく送別してもらい、振り上げた拳の置き場に困ってしまった。

一個下の女性社員のことも仕事上の付き合いだけであまり好きじゃなかったのに、送別会の幹事をしていくつもプレゼントを用意してくれた。
バラの花がガラスの靴に生けられているブリザードフラワーをくれた。
その子が、「『花より男子』で『素敵な靴は素敵なところへ連れてってくれる』ってセリフがあったじゃないですか、それで靴のにしたんです!これだけはどうしても伝えたくて」って言ってくれて、今までちょっと苦手だなとか思っててほんとごめんと思った。

今は違うフロアで働いてる人や、転勤しちゃった人たちも(空の会議の予定を作って)関西や都内以外のところから駆けつけて送別会に参加してくれて本当に有り難かった。
うかつにもちょっと泣きそうになるくらいあたたかくて良い時間を最後に過ごすことができた。

客先の最終出社日、一回だけ現場が一緒になって話したことがある社員の人が「安住さんはコミュニケーション能力あるからどこに行ってもやっていけるよ!」と激励してくれて嬉しかった
「そろそろ担当されている案件が忙しくなってくる頃ですよね」
「自分が担当なのに初耳のことがいっぱいだよぉ」
「あはは、繁忙期入りますけどお体は気をつけてくださいね」
うーん、ティキティキに尖り狂ってた高校生や大学生の頃の自分からはとても想像がつかないくらい「つつがない」会社員らしい会話をしていると話しながら思う。
思う、というか社員さんと話している私の斜め上の空中を別の私が浮遊していて「あんたも会社員ぽくなったねー」と言っているような感覚があった。
まあ、その会社員も今日をもって辞めるのだが。

長机の下で役員に中指を立てていた入社したての頃から比べるとだいぶ丸くなったし、斜め上から見ている自分が少しつまらなそうにしているけど、この会社で4年間働いていろんな角が取れて生きやすくなったことと仕事している自分が好きになれたのは大きな財産になった。


会社の寮だからそのまま住むわけにはいかず部屋を引き払うことになった。
捨てようとする1年目の頃に買ったもう趣味じゃないピアスを改めてしみじみと見ると、「なんとか東京で1人頑張ってきたんだなあ」と感慨深く思う。

ここに来たことがすごく昔のことのように感じる。
色々と経験して、ここに来た22歳というメレンゲクッキーみたいに軽やかな頃の年齢から、もうすぐ26歳というクリスマスプディングのようにどっしりとした年齢になる。

22歳の頃って気楽で、人付き合いもフフフと気兼ねない軽い付き合いでとっても楽しくて、それに比べると今はちょっと誘って遊べる友達とかも減ってきて、将来を真剣に考えなきゃなあと思う場面も増えてきた。

気楽で軽やかだったあの頃が恋しくなることは何度もあるけれど、過ぎ去ったものは美しく見えてしまうものだし(逆光弁と私は呼んでいる)過去を儚んで今を享受しないのは愚かしい。
これからもしなやかに自分を愛せるように生きていきたい

部屋の荷物を実家に運ぶのを友達に手伝ってもらった
私は家族に無職になることもアパートを引き払うことも全く言ってなかった(言うのがめんどくさかった、会社の人たちには言っていないことで驚愕された)
平日の夕方に行ったから実家に誰もいなくて、誰もいないのをいいことにこっそり荷物を全部置いてきた(逆泥棒)

そしてゴミ出しや片付けがまだ残ってるから荷物を下ろしたらまた都内に戻ってきた。
都内に戻るときに、東京外環自動車道?かな、そこから見える東京の夜景がとても綺麗だった。
その夜景を観るのは2度目で、最初に見たのは大学2年生の時に行った2週間の東京の出版社でのインターンからの帰り道だった。
親戚のおじさんのトラックに乗って実家に帰る途中でその景色を見た。

バースデーケーキの真ん中に立つ蝋燭みたいなスカイツリーや東京タワー、たくさんの大きなビルが立ち並んでそれはあまりに明るくてオルゴールの中の街並みみたいにピカピカと光って綺麗だった。

その景色を見て私は「東京で就職しよう」と決心したのだった。

それを仕事を辞めて、東京を一度離れることになる時にまた見ることになるなんて人生ってとっても示唆的だな。
夜景は数年ぶりに見てもやっぱり綺麗で、私はこの街が好きだなと思った。

友達と私の地元をドライブする中で、なんで地元をずっと脱出したかったのか思い出した。
ここでは「私以外も私」であるから嫌なのだ。
例えば、都内で1人で暮らしていたら「職場での私」とか「友達といるときの私」とか「恋人といるときの私」とかとは別に、ひとりっきりになれば「ただの私」がそこにいる。
隣近所やすれ違う人は私のことを何も知らないし興味も向けないからだ。

だけど地元ではひとりっきりになることすらできない。
隣近所は自分の過去から今までを知っている人ばかりで、その人たちにとっては過去の私と今の私も同じく「私」。
過去の私と今の私は全然違うのに、何かを知っているかのように人をじっと観察して評価する。

今の私が今の私の思想を身につけて、今の私が好きなメイクと服に身を包んで私のことを誰も知らない東京の街を歩くのは本当に気持ち良い。
池袋駅の人混みの中に紛れて、自分を知っているのは自分だけだという安心感と、おもちゃ箱のような東京の夜景が早くも恋しくなる。

無職になったので、かねてからやってみたかった世界一周旅行(居酒屋のポスターのアレではなく)に行ってみようと思う。
1ヶ月くらい勉強と準備をしてから出発する。貯めたお金をパーっと使おう。
気が済んだら帰ってきて、また都内に戻って就職する。
片付けをしてたら出てきた履歴書を見て「うわ!またこれやるのかと思うとめんどくさい!」と思ったけど、もう辞めてしまったのであとの祭。
今年は恋愛のれの字もなかったけど(最後の最後ですごく良いデートをした!)、いっぱい仕事して、大ミスして胃おかしくしたりしながらも頑張って、いっぱい旅行に行って、坂本慎太郎のライブにも何回も行けて、良い人にばかり恵まれて愛してもらって、円満退職して、次にやってみたいこともできて、すごく良い一年だった。
来年も健やかにいられますように

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