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(藤井八冠のような)天職に出会う方法

創作の星野です。

最近将棋界で大変なことが起きてしまいました。
将棋星人がやってきて次々タイトルを奪って
ついに完全征服してしまったんです。
私もいち棋士ではありますが、
指をくわえて見ていることしかできませんでした。

藤井八冠は将棋という「天職」に出会えたといえそうです。
私たちビジネスパーソンも同じように「天職(のようなもの)」に
出会う方法はあるのでしょうか。

弊社代表の山内に、
「天職(のようなもの)」に出会えた人の条件を聞いてみました。

山内は、ビジネスシミュレーション制作にあたり、
1000人以上のハイパフォーマーにヒアリングをした経験があります!


【星野】
今日は「天職」を見つける秘訣を聞きたいと思います。
これまでさまざまな業種で働くハイパフォーマーをヒアリングしてきたと思いますが、ハイパフォーマーには何か共通点があるのでしょうか?

【山内】
優秀か優秀でないかは状況に応じて違う、というのが私の持論です。優秀か優秀でないかは、周りが勝手に判断しているだけなんですよ。だから自分が優秀と認められて働けるような状況に身を置くことが大事ですよね。

【星野】
なるほど、そのような状況に身を置ける人が優秀ということは、自分はもっと優秀なはずなのに、優秀だと認められることをしていない人がたくさんいるってことでしょうか。

【山内】
そうです。自分が向いていることをするのが大事だ、という話です。自分が向いていることをすれば評価される。ではその人は、なぜ自分が向いていることを知ってるのでしょうか。
それは、いろんなことにたくさん挑戦したからだと思うんです。それも、ちょっとかじっただけじゃなくて、割と何かを本気で取り組んでみて初めて、向き不向きっていうことの本質が見えてくるのかなって気がします。

【星野】
自分の才能を見つけるという感覚と近いのでしょうか?

【山内】
才能のあるなしの話って「好き・嫌い」と「得意・不得意」の2種類の軸があると思います。
“好きこそものの上手なれ”ということわざが、本当か嘘かっていう議論があるじゃないですか。
好きでもないけど才能ある人もたまにいる。だから例えば将棋でも始めてみたらいきなり強くなっちゃう人。「うわっ、こいつ神童じゃね」って周りは思うんだけど、でも将棋が本当に好きではないから努力しなくて、やがて消えてっちゃうという。だから、才能のあるなしってのは、最初ぱっと上手にやれるやれないっていう要素もあるんですけど、もう一つ掛け算で、息を吸って吐くかのように努力を積み重ね続けられるかっていうことも大事で、その合わせ技1本で初めて才能が花開くと思うんですよね。

【星野】
そうですね、特に将棋は後者の息を吸って吐くかのようにやり続けられるってほうが棋士になるには重要な要素ですね。

【山内】
だから当社でも、その仕事好きですかってことを割とクドクド聞く傾向にあるじゃないですか。

【星野】
そうですね、はい。

【山内】
嫌いなことは一生懸命やれないって知ってるから。もっと言うと仕事って必ずつらくて大変なんで、だったら比較的楽しめるというか、情熱持てるものをやらないと大成しないと思うんですよ。だから“好きこそものの上手なれ”は大事だなと。とはいえ得意・不得意というのも正直あるので、その掛け算のいいところを狙いにいく。そのためには、自分は何が好きか、何が向いているかを知るためにいろいろやってみるということが大事なんです。割と何かを本気で取り組んでみて初めて、向き不向きっていうことの本質が見えてくるのは、それを続けられると思えるかどうかは、続けてみないと分からないからです。あとその得意不得意は他の人と比べてってのはちょっと敏感に見た方がいいと思います。他人なんて関係ないんだってよく言うけどそんなこと全然ない。人と比べてちょっとでも得意なことは、他の人の役に立ちやすいことだからね。

【星野】
自分の向いていることを見つけるためには具体的にどういう手段がおすすめなんでしょうか。

【山内】
高校生とか大学1年生ぐらいは、まずは飲食業のバイトをやったらいいんじゃないかと思います。まず人にこき使われ、自分の時間を拠出し、時間と引き換えにお金をいただくという経験をするのがいい。

【星野】
飲食である必要はあるんですかね。

【山内】
まず飲食業の何がいいかっていうとね、お客様商売なのがいいですよね。お客様の目の前でコミュニケーションが発生するっていうのがすごくいい。自分が顧客コミュニケーションを好きか嫌いか、向いているか向いていないかがよくわかる。
次に、忙しいとき、本当に忙しいのがすごくいい。業務効率化をある程度成し遂げないと、どんくさーい!って怒られるでしょ。

【星野】
そうですね、お客さん待たせちゃいますからね。

【山内】
この業務効率とスピードをね、求められるってことがすごくいいんです。
学生時代はマイペースという言葉が、蔓延してるじゃないですか。でも、飲食のアルバイトやったときにマイペースって言葉が死滅するんだよね。初めてマイペースじゃいけないっていうことに直面するのがすごくいい。自分のやりたいこととか自己実現とか関係なく、お客様の笑顔が最優先ということに直面する。そして今まで小遣い1000円を気軽に使ってきたのが、1000円稼ぐってこんな大変なんだって気づくのがすごくいい。こんなにお金を稼ぐのが大変だとしたら、好きな仕事を選ばなかったら死ぬなってなるでしょ。自分の得意なことをちゃんと探して付加価値高い得意なことで稼ぐ。つまり飲食業ってね、乱暴なこというと健康で意欲的な若い男女だったら普通にやれる仕事で、裾野が広い。だからアルバイトの金額も昔に比べれば高くなったけど高くない。そうじゃなくて自分だけが得意だっていうことを探さないといけないんだってことを思い知るんでね、いろんなもののことを基準として考える上で飲食業のバイトってすごくいい経験だと思ってる。

【星野】
なるほど、そこに繋がるんですね。

【山内】
また、こういう仕事体験が不足すると、入社したときのギャップがすごい。

【星野】
入社したときのギャップとはどういうものですか。

【山内】
例えば、ある学生が「世界の飢餓をなくしたい」って強く思う。その想い自体は多分嘘じゃないと思うんです。ところが、NPO、 NGO に入って発展途上国に行って、ハエがブンブン飛んでて、食べ物にハエが乗っかるのは当たり前っていうところに行ったとき、彼、彼女の中で清潔っていうのは自分にとってとっても大事だと気付いてしまったとします。もうだめだ、日本に帰りたい。普通はあきらめて、ハエを追いはらって食べるようになる。上級者はハエを追い払いもしない。でも、どうしてもダメな人もいる。そこは多分、環境への適応力という意味で不向きだったわけだよね。でもそれが現地行ってから知ったのでは遅い。
実際そういう場に自分が身を置いたときどうなのかっていうのを、もっといろんな人の話を聞いたり、映像を見たりして想像してみる。また、不衛生な環境に少しでも近いことをやってみる。例えばキャンプに行って、1週間お風呂に入れない生活してみるとか。何でもいいから、そういう経験を事前に積んでみるべきだったんだよね。
つまり具体的な仕事のイメージをしっかり持ちそこに身を置いて、本当にその仕事は好きになれそうか、向いていそうかというのは、しっかり検証するような努力をした方がいいという話です。
その一つの手段としてビジネスシミュレーションかな、と思っています。仕事のビジネスシミュレーションやってね、イメージ膨らましたらいいんじゃないのって思うので、僕らこの仕事をしてるわけですしね。

【星野】
なるほど。最後はやっぱりビジネスシミュレーションの話になりましたね!


インタビューから想うこと(星野良生)
私は15歳で自分の進路を決定して将棋以外を経験せず、15年以上やってきたのだけれども、やっぱり自分には向いてないと思って30過ぎてから将棋の世界だけで生きていくことをあきらめた。気づくの遅すぎて笑っちゃうよね。現にこの世界に飛び込んで半年ぐらいだけれども、パソコンスキルとか皆無で経験のなさが露呈してる。
そう考えるとちゃんと普通に大学までレールに乗って自分の進路を保留するって大事なんだと思う。でもこうやって振り返ってみても15歳のとき進路を保留するという選択はどうしてもできなかったんだ。あのときは将棋が向いていないのかわからなかったから。もっと言うと将棋界だけで生きていくということが向いているのかわからなかったから。
半年前にビジネスゲーム創作という特異な世界に流れ着いたのは長い文脈があるのだけれど、この仕事が本当に自分に向いているのかはまだわからない。それを自覚するためには、また将棋のように0から真摯に愚直に向き合うしかないんだと思っている。それが将棋を通じて学んだ唯一の経験なのかもしれない。