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「サンタの帽子」

僕はすごく悩んでた。
そう、とても。
もうすぐクリスマス。
まだサンタを信じてたあのころ。
家の煙突から入ってきてプレゼントを枕元に置いてくれる、
やさしくて気前がいい、白いおひげのおじいさん。

我が家は五右衛門風呂で(ご存じだろうか?鉄の窯の浴槽で、底が暑いので
木の板を沈めてそれを踏んで入る。ミスると超あっちっち)。
煙突はとても細い。
サンタさんがこれじゃ入れない。
4歳だった僕は真剣に悩んだ。
つまり僕はプレゼントがもらえない。
ん~。困った。
なんて考えながらも夜を迎えて、クリスマスケーキのキャンドルの灯りを
父さんと母さんと僕でフー、と消して、きよしこの夜を歌って、みんなでおいしいねとか笑いながら楽しく食べた。
そしてお布団に。
でも、うちの煙突じゃサンタさん、入れない、プレゼントがもらえない、
困った。
なんてこと考えてたが、いつのまにか寝落ちしてた。

そして翌朝。
枕元にすごく欲しかったサンダーバードのプラモデルが置いてある。
超嬉しい。
でも、どうやってあの細い煙突をサンタさん入ったのだろう?

時は流れ、ドキドキしながら娘の枕元にプリキュアの人形を置いている僕がいた。サンタさんになったような気持ちで…。

娘のあどけない寝顔。となりで眠る妻。しあわせな時間。

さらに時は流れ、明日は娘が嫁ぐ日。
まだベッドですやすやと眠ってる。

あの頃と同じように。

まだ眠っている娘に、目には見えない僕がかぶってたサンタの帽子をそっとかぶせた。


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