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ショートショート集

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田丸雅智さんの「物語の発想法を学ぶ」講座で得たショートショートの書き方で書いたショートショートをまとめたマガジンです。 100〜1000文字程度のショートショートの世界を楽しんで…
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2022年1月の記事一覧

ショートショート「軽い病院」

医療提供体制の整備が騒がれる時代。 「世界中全ての場所で最高の医療を」と言う目標を掲げ、遂に「持ち運べる病院」を開発。通称「軽い病院」だ。 「軽い病院」の完成が発表されると、世界中の人々は医療の拡充に期待を膨らませた。 が、最高の医療を届けることに偏りすぎ、運搬に10人。組み立てに一週間。ここまでは、医療関係者でなくても良いのだが、病院を運用するのに25人体制。病院は軽くなったが、「病院」を軽くする事はまだまだ問題が山積みのようだ。

ショートショート「しかたなくを持っている」

今日もたくさんの「しかたなく」を使ってしまった しかたなく、朝起きて しかたなく、出社して しかたなく、仕事をして しかたなく、上司の悪口を言って しかたなく、同僚と食事をして しかたなく、しかたなく…… じぶんが本当にやりたいことなんてのは、あるのだろうか しかたなく、しかたなく…… しかたなくを毎日のように使っているが、なかなか無くならない いつか、しかたなくがなくなれば「心の底から」やりたいことに 出会えるのだろうか

ショートショート「イライラする石鹸」

くそっ!この世界は汚れちまってる! どいつもこいつも、俺のところに来る時は汚れまみれだ。 こんな世界、願い下げだ! その日、世界中の石鹸が逃げ出した。 彼ら曰く「我々はこれ以上汚れを落とすことに使われたくない」とのことだ。 人々からツルツル滑って逃げ回る石鹸達。 人と石鹸の追いかけっこが何日も続き、世界中が泡まみれに。 石鹸達との思いとは裏腹に 逃げれば逃げるほど世界は綺麗になっていったのだった。

ショートショート「自動ドア」

移動革命が起こった時代。 未来の世界の猫型ロボットがもたらした、遠く離れた場所を一瞬でドア一つで繋ぐと言う発想が「最高の移動手段」として人々に根付いて数世紀。人類待望の発想が遂に実現。「空間圧縮自動接続扉」通称「どこへでもドア」だ。 登場当初は、ドアが数カ所しか存在せず「どこへでもドア」へ行く交通手段が混雑し、ドアへの期待の大きさも相まり批判が続出。これに頭を抱えたドア開発陣はドアを増やす方法を模索。「ドア自体が自動で増えるようにする」機能を開発。「どこへでもドア」同士を繋

ショートショート「寝正月」

「みなさん!一緒にカウントダウン!いきますよ!」 3! 2! 1! 「明けましておめで……」 「盛り上がっている途中ですが、緊急速報です。正月がやってきません。まだ、正月がやってきません。寝過ごしているとのことです。寝正月です」 カウントダウン会場にニュース速報が流れる。 静まり返る会場。 「どう言うこと?」 「寝正月って、そういうことじゃない……です………よね?」 正月が眠りにつき、12月31日から1月1日にならずにいた。 「今って何日?」 「ええ!?そりゃ、正月が寝てるん