カップ

台本*7「Puppeteer」(二人用)

使用の手引き…https://note.com/souffle_lyric/n/n0ba1320f658a
ごゆっくりどうぞ!


◎設定
★パペティアー…人形を創り操り売ることで生き永らえる青年。
☆ドール…白薔薇を写した少女人形。王族の兄妹への玩具として売約成立済。
***

【♪暖炉の火のSE】
【パペティアーの膝の上、共に膝掛けに包まるドール】

☆「…寒いわ」
★「おや、この膝掛けはお気に召さない?」
☆「明日の事よ。明日のことのはずなのに、もう、寒いの。この屋敷の外に出たくない…。
ねえ、わたしの“商談”、取りやめて…?」
★「それは無理だな」
☆「…。…好きよ、マスター」
★「ありがとう。君の生みの親として嬉しいよ」
☆「……」
★「……」
☆「あの暖炉に私を投げてよ、マスター」
★「マスターじゃない、パペティアーだよ。君を暖炉に投げてしまっては、“商談”も出来なくなる。
…ねえ、小さな白薔薇の君、君は明日からもっと大きな暖炉がある部屋で、この国一番のお姫様と王子様と楽しく遊ぶんだ。何も考えなくていい」
☆「そんなの、何の魅力も感じない…。
あなたと一緒にここで馬鹿みたいに暮らしたいの、好き、あなたが好き」
★「…生憎、“作品”からの告白もされ慣れてるものでね。残念ながら心は揺れないよ。“商談”が成立してからのマリッジブルーはよくあることだ…大丈夫、明日になれば全て」
☆「(遮って)ええ。明日になれば、初期化されるんですものね」
★「…初期化?何処で覚えたんだ、そんな品の無い言い回し」
☆「ニュースペーパーに挟まってた中古ロボットの広告。初期化済みだから暴走もせずに老人でも安心、ですって。…ドールも似たようなものなのね」
★「僕はドールを量産しているわけじゃない。一体一体、足の指一本にまでそのドールの品性を形作っている」
☆「…知ってるわよ、努力してることくらい、…怒らないでよ。
…だから、だから…そういうあなたと一緒にいたくなるのよ、マスター…」
★「パペティアー、だよ…」

【♪暖炉の火のSE】

☆「ねえ、その手袋、外して。マスターの素手で、私に触って…?」
★「残念だけど、君は売り物だ」
☆「私の言うこと、拒否してばっかり…商談の日まではもっと優しかった」
★「そんな事はないよ。商品こそ優しく手厚く…保護されるものだからね」
☆「そんなの要らないのに…。
それじゃあ私を…キリングドールにしてはくれない…?」
★「それこそ拒否するよ。もう殺人人形は作りたくない。塀の中の暮らしは一度で御免だ。
武器を持ったあの子達が軋む音、感情を殺して人間を虐殺する姿…よく夢に見るんだよ」
☆「…そう、ごめんなさい。あなたの悪夢にはなりたくない…」
★「…ありがとう、いい子だね。
手袋は外してあげられないけれど…おいで、抱っこしてあげる」
☆「うん…、……あったかい」
★「…僕は生き永らえるよ。
君の要望を片っ端から却下して、君を売ったお金でね」
☆「それでも、あなたを嫌いにはなれないのよ…」
★「…そうか」
☆「そうよ…」
★「おやすみ、今日までの僕の白薔薇。
そして、ドールの心という奇跡に感謝を込めて…乾杯」
☆「…かんぱ、…い、…っ…っ…、ううっ…、…ひっく……ぁぅぅぅっ…、」

【ドールを抱きしめるパペティアー。抑える嗚咽、擦れ合うSE、少し抗うように荒くなり、ドールは初期化の眠りに落ちる。
暖炉の火のSE。静寂…】


【翌朝、王宮を訪れるパペティアー】

「本日はお招きに預かり光栄の至りにございます。
こちらがご子息とお嬢様に捧げます極上ののドール、白薔薇の香りを纏った少女人形です。
…さあ、ご挨拶しなさい」

「イエス、パペティアー。
ハロー、マイ、マスターズ。」


【終】

お気に召しましたら是非お願いします! 美味しい飲み物など購入して、また執筆したいと思います ( ˙︶˙ )