20240428

それで、LIFE IS COMIN' BACK! 僕らを待つ
LOVELY, LOVELY WAY, CAN'T SEE THE WAY IT'S A

ブギーのバックしたあの夜、たしかにそこにワンダーランドは存在していた。あの大きな心はどこに行ってしまったのか。パーティータイムにめかしこんできたり、ビールでなにもかも流し込んだり、心のベストテン第1位がやはりあんな曲だったり。あの宵のリアリティーは、浮かれ浮かれてる場所で夜が過ぎるあいだのことは、すぐにでも思い出せる。

あのころ、たしかに天使はそこにいてひそかにささやいていたし、ムーンドッグは南の島で吠えていた。おしゃべりは続いていたし、オルゴールの終わりなどは遙か彼方。いつだって可笑しいほど、このまま未来の世界へ駈けていくものだと思っていた。誰かのちょっと待ってなんて知らなかったし、それは完璧な絵によく似ていた。
風の薫る春の夜に、心の扉をノックした。夏にはオリーブをもぎ取って、秋には物語を読み合ったりもした。風冴える冬、ダッフルコートを着た彼女と風を切って歩き、手をたたいて朝が来る光を分かり合ってた。空に散らばったダイヤモンド、七色に輝くすてきなナイトアンドディ。ゆるやかに響くロックステディ。ベースラインにのって踊ったら、めんどくさいことも飛んでいった。彼女がそばにいたのはそんな、眠れない日々だった。

ずっとこのまま素敵な日々がずっと続くんだろうと思っていたんだ。

だけどある日、彼女は言った。「こころがわりはなにかのせい?」って。彼女は涙をこらえていた。そっと手を伸ばせばボクらは手をつなげたかもしれない。だけどそれはかなわなかった。だって、ボクらの住むこの世界には旅に出る理由があって、だれもみな手を振ってはしばし別れるし、なによりそれはこっちの台詞だったから。彼女からはとても素敵な長い手紙が届いた。なにを書いていたかはナイショだ。「元気でいて」とギュッと抱きしめるかわりに出そうと思っていたハガキはなくしてしまった。

それでも毎日は続いてきた。丘を越えて、ボクらは歩いた。ブルーの準備は出来ていたのだ。美しい星に訪れた夕暮れ時の瞬間のように、急カーブを曲がるとあっという間に海が見えるように、埠頭を船が出て行くように。通り雨がコンクリートを染めていくように。心の中に染みこむようにと、過ぎていった日々をふみしめてボクらは行くのだ。

そういえば昔、「さようならを言うのは、少しだけ死ぬことだ」と言った私立探偵がいた。

けれど、いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて生きる。それだけがただボクらを悩めるときにも未来の世界へ連れていく。今日までも、そして今日からも。夏の嵐にも冬の寒い夜も、そっと灯りを消して眠れば、またすぐに朝がきっとくるのだ。

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そして時は、2024年4月28日。428(シブヤ)の日。今年は、小沢健二「LIFE」の発売30周年。その間のどれだけの時間、ボクらは胸を痛めてこのアルバムを聴いてきたのだろうとちょっと思ったので、久しぶりに駄文を書いてみました。この文章を書きながら、遠くまで旅する人たちに、家族や友人に(昔の恋人にも!)、すべての人たちに、あふれる幸せを祈っています。

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それで、感じたかった! 僕らを待つ 
LOVELY, LOVELY WAY, 完璧な絵に似た

そして、分別もついて歳もとった。

このごろ、天使はすこしおしゃべりになって、月の街並みを歩けば犬も後からついてくる。ボクのメロディーはいつまでも書きかけのまんまだけれど、天気雨はディズニー映画のエンディングのような甘いコンチェルトを奏でて、静かに降り続けている。完璧な絵は持っていないけれど、お気に入りの絵は飾ってある。とにかくパーティーも続く。かつてすごした時間や呼び交わし合った名前などは遠くへ飛び去ってしまったが、星屑の中で時折ランデヴーしているといいなと思っているのはナイショだ。家族や友人たちと並木道を歩くように曲がり角を曲がるように、ボクらは何処へ行くのだろうかと何度も口に出しては、熱心に考えてみたりする。誰かのために祈るようなそんな気持ちにもなったりしている。

さあ、これから何処へ行こう?
Where do we go ?
Where do we go, hey now ?

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