見出し画像

#3 ウォーク・イディオット・ウォーク

「…………。」
『…………。』
「…………。」
『…………。』
「…………。」
 僕ずっと黙ってて、向こうも、向こうって、イヤホンからいきなり『俺、宇宙人なんだけど』とか言ってきた知らない人ですけど、その人もようやく黙って、厄介ごとは終わりました。
 変ないたずらがあったもんだとか驚いて、今度誰かに話そうと思って一応気を取り直して、そこからは普通に音楽聞きながら帰ってました。暗い道で信号が青になって、横断歩道を渡るときアルバムで一番好きな曲が流れました。つい音量を最大にしたのが間違いでした。イヤホンから、それを上回る大声がしました。

『ハイヴス、カッコいいよねーッ!』

「アッ!?うッるサッ!?」
 僕、飛び上がりました。ハイヴスはそのとき聞いてた音楽のことでしたが、この際どうでもいいことでした。

『ハイヴス、カッコいいよねーッ!』

 音量を下げようとしたのに下がりません。

『ハイヴス、カッコいいよねーッ!』

「うるさいから叫ばないで!」

 うるさかったのでそう叫びました。宇宙人の声がです。うるさかったので停止しました。ハイヴスがです。
『あ、聞こえてる……?』と向こうが小さく言いました。
「…………。」
『聞こえてる?』
「聞こえてるよ」
 もういいや。と思いました。
『えーッ!……アハハ!』
 何がおかしい。と思いました。
「あの、」
 と言ったのを遮られました。
『俺は宇宙人。よろしく』
 そんな漠然とした自己紹介があってたまるか。と思いました。
「あの、」これ僕。
「一体何のいたずらなんですか?」
『いたずら?』
 これ宇宙人。と名乗る人物。
「いたずらでしょ。宇宙人って」
『いたずらか……いたずらって、どうしてそういうことを言うの?どうして人の言うことを素直に信用できないかな。もっと人を信用しなよ』
 そういうことは態度で示せよなー。と思いました。
「だっていきなりそんな、」
 遮られました。
『じゃあ分かった。俺もう、誠意見せちゃう!』
 続く。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?