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ジュリアン・コープ「ドラッグまみれの屋根裏の物語(Tales From The Drug Attic)」

出典:
Julian Cope, "Tales From The Drug Attic" (New Musical Express, 3rd December, 1983).
テキストは以下を参考にしました。http://www.phinnweb.org/retro/garage/articles/drug_attic.html

ドラッグまみれの屋根裏の物語(Tales From The Drug Attic)

60年代の忘れ去られたサイケデリックな遺物、正気と忘却の間の無人の土地で、狂気の風景をさまよう勇敢な魂はほとんどいないだろう。ジュリアン・コープは、そのような恐れを知らぬ数少ない人物の一人であり、勇気ある者は微笑むことを知っている。これは彼の物語である。

「天狼星は荒れ狂う! いや、それはもう疑いようがない、ベドラムもパルナッソスも、すべて解放された」――アレクサンダー・ポープ

サイケデリアについて話をしよう、平和だ愛だハトだなんてのは気にするな。君が今まで嫌っていたヒッピーのことも忘れてしまおう。理解も答えも気にしなくていい。問いに心を向けるのだ。

君が初めてセックスについて考えた、5年、10年、20年前に心を戻してほしい。ペニスやヴァギナが本の中の新しい単語だった頃。

「はめる」って、どういうこと? 片方は硬く片方は柔らかくなる? そんなの嫌だ、気持ち悪い。そんなこと考えたこともない。うちの親がそれをするの? なんで彼らはそんなことを思いついたのか? 私もそれをするのだろうか? なんで彼らはそんなことを思いついたのか? 何もかも嫌だ。

君の初めてのサイケデリック体験。すべての正気と一緒に船は沈む。

ここだ。サイケデリアとは、疑問がどんどん大きくなり、答えが陳腐化していくものだ。

ティモシー・リアリーのことも、トム・ウルフの話も忘れよう。LSDが世に出たとき、知識人はそれについて考え、残りの人たちはおかしくなった。

我々が興味を持っているのは、その残りの人たちである。

音楽を作ったのは残りの人たちだ。グレイトフル・デッドでもクイックシルバー・メッセンジャー・サービスでもムーディー・ブルースでもない。バーミンガムからアルバカーキまで、アシッドを食って古いヴァン・モリソンやストーンズのリフを弾こうとした17歳の子供たちにこそ、我々は興味を持つべきなのだ。突然、彼らはとても新しいものになった。確かに彼らはあまりうまく演奏できなかったし、シンガーも言葉を知らなかったが、これは本気で言っている。そうだろう? 我々は誰よりも大きな存在になれるかもしれないのだ。

「見てごらん、7台のキャデラックを手に入れたら、世界中を走り回れるかもしれないよ」――ザ・シルバー・フリート

偉大なサイケデリック・グループのシンガーは皆、身長170センチだった。彼が背伸びをしたのは、友達が小さくて、自分が間抜けに思えたからだ。彼は自分自身であることを歌った、理想の自分、つまり本当はミック・ジャガーであった。

彼の実生活は、乾いたオナニーだった。

これがサイケデリアだ。

4トラック・レコーダーのスタジオで過剰に歪められたガレージ・ミュージック。有名になりたがるミュージシャンたち。クソ、やり方さえわかれば売れてみたいぜ! ニヒルすぎてまとまりもしない奴ら。

エド・コブ、スカイ・サクソン、シド・バレット、ロッキー・エリクソン、エディ・フィリップス、アーサー・リー、ムルティ(Moulty)、マウス、デイヴ・アギラー(Dave Aguilar)、そしてその他、決してできなかったすべての人たちに、「イエス」と言おう。

背中を丸めたトワイライト・ゾーンで、彼らは最高で最強のサウンドを作り上げた。ロックはあらゆる音楽の中の感情をパワーアップさせた。アーサー・リー? 弱虫音楽だ! スカイ・サクソン? 甘えん坊でずる賢いガキだ!

ふざけるな、と言わせてもらおう。思いやりに欠け、世間体を気にし、個人を忘れているということに。意味のない15分間の名声の約束のために自分の魂の大きな一握りを引き裂いてしまった、ビッグになりたい卑小な個人のことをだ。

私は彼らを愛している。彼らのみじめさを愛している。私の目の前に、彼らの同類が散らばっているのが見える。中西部のヒックスヴィルで、赤ん坊を抱えたパティ・スミスは、自分は平穏だと思い込んでいる。マーク・アーモンドはヒステリーを起こしながら、オン/オフのスイッチのある名声を願っている。ジョン・ケイルが見た、昼間のラジオで演奏する白日夢。巨大なボウイ、巨大なガブリエル、巨大なマリリオンに自分の姿を投影するピーター・ハミル。彼らはたくさんいる。そして私も彼らを愛しているのだ。

だからヒッピーのことは忘れよう。

これはヒッピー以前の話だ。どんなに静かな音楽でも、揺るがすことのできない意図を持っていた頃。

3コードのリフ、繊細な声、そして。「ああ、鼻水がズボンについた」――アーサー・リー、1967年

これぞサイケデリア。1枚のアルバムが、ほとんど単独で、音楽に対する新しい愛とアティチュードを喚起した。

「私がこれを編集したのと同じくらい、あなたがこれを再生するのを楽しんでくれることを願うのみです。」――レニー・ケイ、『Nuggets』について、1972年

当分の間、私は誰もが『Nuggets』を持っていると仮定することにする。サイケデリアについて他に何も知らなくても、これだけは知っているはずだ。そうでない人は、紙を置いて、基本的なものを全部聴いてきてほしい。ピンク・フロイドの1枚目、『Revolver』、トラフィック、13thフロア・エレヴェーターズ、『Sgt. Peppers』、『A Web of Sound』、『Forever Changes』などだ。

『Nuggets』は昔も今も入門の基本だ。発売当時は無名だったが、今では多くの人が好んで聴くようになったグループを紹介してくれた。ザ・シーズ、ザ・チョコレート・ウォッチバンド、エレヴェーターズ、リメインズ、スタンデルズ、エレクトリック・プルーンズ、その他の、クラシックだが知られていない曲をリリースしていた人たちを紹介してくれたのだ。今では我々は、それらの人たちがクラシックなLPを録音していたことも知っている。

しかし70年代にはこれらのLPは、ストロベリー・アラーム・クロック、ジョセフス(Josephus)、ブルー・チアー、バブル・パピー、インターナショナル・アーティストのバンドなどのゴミと一緒に売られていたのだ。インターナショナル・アーティストのカタログを全部聴かないと、必要なのは13thフロア・エレヴェーターズのLPだけだとわからなかったわけだ。

サイケデリアは「心の中を旅する」とかいうナンセンスがヒップだと考えるペテン師たちによって、ヒッピー音楽として売られていた。

しかし、『Nuggets』の影響は根深いものだった。この二軍のはずの音楽こそ、本物のサイケデリアだったのだ。

「思考と表現の間には一生がある」――ルー・リード

1967年、我々はここにいる。ビートルズはすでに『Revolver』でこれから起こることを予言している。ローリング・ストーンズは『Their Satanic Majesties Request』という9割がたゴミのような作品でサイケデリアに悪評をつけようとしている。ヤードバーズは、『砂丘(Zabriskie Point)』の前作である『欲望(Blow-Up)』に登場し、ジェフ・ベックが「Train Kept A Rollin'」の演奏中にギターを破壊する。

アメリカでは、グレース・スリック、ジェリー・ガルシア、ジョン・シポリナなど、シーンを合理化しようとする20代半ばの卒業生たちが前衛部隊を率いていた。ドアーズはエレクトラと契約し、エレクトラの大物だったアーサー・リーをトータル・パラノイアへと昇格させることに成功した。

そして、ヒッピーとそれ以外の人たちの間に一線を引いたグループが登場した。

ザ・マザーズ・オブ・インベンションである。彼らはブルース・バンドとしてアシッド狂いのA&Rマンと契約していたが、彼は最初の傑作『Freak Out』の請求額が2万ドルを超えたところで焼身自殺を図った。マザーズは危険かつ不衛生で、真のアンダーグラウンドの不健康なリーダーだった。

フランク・ザッパは、自分のレコードを買ってくれるシーンを笑いものにできるほど意地が悪かった(歳もとっていた)。彼の歌は、ヘイト・アシュベリーで愛唱されていた団結の賛歌などではない。それは常識人と変人の両方に対する下劣な攻撃だった。「Plastic People」、「Flower Punk」、「Trouble Every Day」といった曲は悪意に満ちていた。確かに笑うことはできるのだが、彼が私たちを笑っていないか、どうしたらわかるだろう。

マザーズのサウンドは、郊外のパンクグループにさえ影響を与えた。サンノゼ出身のテディ・アンド・ヒズ・パッチズ(Teddy and His Patches)は「Suzy Creamcheese」の心を揺さぶるカヴァーをしており、これは『Pebbles III』で聴ける。サイケデリアの小便は、ジェファーソン・ハンカチーフの「I'm Allergic To Flowers」でも続いた。パンクはイッピーと呼ばれる、長髪で平和を嫌う者たちになりつつあった。それはマザーズに影響を受けたデヴィアンツによって、イギリスにまで波及していった。

1967年、フランク・ザッパはザ・ホッグスのインストゥルメンタル曲のシングル「Loose Lip Sync Ship」を制作した。ザ・ホッグスの正体はザ・チョコレート・ウォッチバンドで、彼らは、「Tainted Love」の作者であり何百万もの人のプロデューサーでもあるエド・コブによって集められた、ミュージシャンの寄せ集めであった。『Nuggets』が出るまで、ザ・チョコレート・ウォッチバンドは認識されていなかった。現在は3枚のLPが再リリースされていて、新しいベスト盤まで出ている。

ナマで多様なR&Bグループである彼らは、ローリング・ストーンズの真にサイケデリックな化身であった。ボ・ディドリーのビートをガタガタ鳴らし、ギターをギュイーンと鳴らし、ボーカルのデイヴ・アギラーはミック・ジャガーに騙されたと本気で思っていた。適切な場所と適切な時期が非常に重要であった時代、ザ・チョコレート・ウォッチバンドは恐ろしいほどタイミングを逸していた。

彼らの唯一のヒット曲「Let's Talk About Girls」は、デイヴ・アギラーが歌う場もないほど急遽録音されたものだった。エド・コブの友人で作家のドン・ベネットが歌うことになり、それが長い付き合いの始まりとなった。ベネットはスタンデルズの曲も書き、エド・コブに先例を作った。プロデューサーはザ・チョコレート・ウォッチバンドを奇妙なアイデアのパレットとして使った。ファースト・アルバムとセカンド・アルバムでは、演奏しているグループが本来のラインアップとはまったく異なることが多い。「Gone And Passes By」は、彼らが録音した最高の曲で、ブライアン・ジョーンズが一度だけ実際に自分の道を歩んだように演奏された、地底のストーンズである。ゾンビの骨ダンスにうなるエレクトリック・シタール、洞窟のようなレコーディングとブードゥー教――ドクター・ジョンの「Walk On Gilded Splinters」をビーフハートの「Kandykorn」風にした感じだ。

確かに彼らはヒットすることはなかったが、調子のいいときは、他のみんなを興奮させた。

リチャード・マーシュはこそこそしたイメージで、辛酸を舐めながら名声を待ちわびていた。1966年初頭、スカイ・サクソンとして発表した「Pushing Too Hard」は、彼のグループであるザ・シーズを大成功させた。アメリカ中のティーン誌の表紙を飾ったスカイ・サクソンと3人のスウェードの仲間たちは、目をしばたたかせて、夜行性の2コードの世界に戻ってしまうことを不安に思いながら、外を見つめた。「Pushing Too Hard」に続いて発表されたのが「No Escape」である。あらゆる意味で、同じ曲であった。スカイ・サクソンは自分のひとつの感情を強烈に感じていた。

ほとんど誰でも商業的に成功させることができる。名犬ラッシーは大ヒットしたし、ノエル・ゴードンにもそんな時代があった。しかしスカイ・サクソンの場合は、一線を引かなければならない。彼のアイデアは内破して、アルバム全体がEとDのコードへの崇拝に費やされた。ザ・シーズのほかのメンバーは、彼のやりたい放題にされる弟子たちだった。オルガン奏者のダリル・フーパーは、少なくとも10曲で同じソロを使った。そのうちの異色作、「Nobody Spoil My Fun」では、フーパーのソロの間、グループは完全に移動しなければならず、彼はいつものパートを演奏することに夢中になっていた。

ザ・シーズにとって、成功は気の進まないボーナスだった。レコードが売れてからも、スカイ・サクソンがこの世界での鞭打ち役でいられたのはなぜだろう。「You Can't Be Trusted(お前は信用できない)」、「It's A Hard Life(辛い人生だ)」、「Can't Seem To Make You Mine(お前を手に入れられない)」といったタイトル。10歳のヒステリックなガキが歌う「Two Fingers Pointing At You」などは、限られた人にしかアピールしなかった。彼らのLPは最初期のクラシックとなり、サクソンはすべてのパンク・シンガーの旗印となった。3枚のスタジオアルバムと1枚の見事なフェイク・ライブアルバムの後、彼の焦点はどんどん霞んでいった。ひどいブルースLPのためにスタイルを変え、後にスカイ・サンライトに改名した。裏庭と世界がひとつになった。ロッキー・エリクソンに少し似ている。

13thフロア・エレヴェーターズはテキサスのグループだった。オースティン/ダラス/ヒューストンのインターナショナル・アーティストは、エリクソンの「You're Gonna Miss Me」を大ヒットさせた。この曲は1965年にロッキーの初期のグループ、ザ・スペイズ(The Spades)がすでに地元でヒットさせていたものだった。1967年までには彼は砂漠のサイケデリックな薬物であるペヨーテを食べ、それまでの数ヶ月間「テキサスにはサーフィンがない」と嘆いていた地元のグループ全員をメロメロにさせていた。

現在、「Splash 1」や「Reverberation」といったエレヴェーターズの名曲のカヴァーを含む『Flashbacks』という素晴らしい6枚組のLPが発売されている〔訳注:Flashback Recordsの『Flashback』シリーズ〕。トム・ヴァーラインはテレヴィジョンがエレヴェーターズに恩義を感じていると豪語していたが、『Marquee Moon』の「See No Evil」などはその証拠となる。テレヴィジョンは、アルバム『The Psychedelic Sound of』からの「Fire Engine」のカバーで幕を開けることもあり、ライブ盤『Arrow』にはその素晴らしいバージョンが収録されている。

ライジング・ストームやミスティック・タイドのようなグループはブルータルなサウンドを自分たちのものにし、イギー・ポップさえも一時期はそこに巻き込まれていた。『Flashbacks III』には、ジ・イグアナスの危険で壮大な「I Can Only Give You Everything」が収録されている〔訳注:『Flashback Vol.2』と思われる〕。若きジミー・オスターバーグ〔イギー・ポップ〕のドラムと歌で、この曲は牛追いや鉄橋について悪夢を見る。エレヴェーターズでおなじみの甲高いサイレンの音とともに、曲はトンネルの中で始まって終わる。

「オレは火星(Mars)から来た」と、ロッキー・エリクソンはインタビューで主張した。ジャーナリストは不思議に思う、証拠はあるのだろうか?

「おふくろをマー(Ma)と呼んでたからな」と彼は答えた。

ファーストアルバムの後、エリクソンは精神病院に入院した。セカンドアルバムは、主に他の、よりまともなメンバーによって書かれた。他の変人はジョン・セント・パウエルだけで、パウエル・セント・ジョンと改名した。エリクソンの治療が終わり、ニューアルバム『Easter Everywhere』のレコーディングのために精神病院から退院した。その後、彼はまたおかしくなり、精神病院へ戻っていった。

エレクトリック・プルーンズには、本物の変人はいなかった。彼らは破壊について狂おしい意図を形成していた。彼らの初期の録音はどれも生々しく、ほとんど再生不能だ。コンピレーション『Everywhere Chainsaw』収録の「You've Never Had It Better」では、彼らは耳のない世界へ向けて煉獄から歌っている。彼らのマネージャー、ベン・ウィローというテレビタレントは、彼らを大物にすることに熱心だった。リプライズと契約し、専属作家にはアシッドの錠剤を用意した。

「あら不思議」の時代〔作家に任せていた時代〕、ナンシー・タッカーとメアリー・マンツは彼らに「I Had Too Much Too Dream Last Night」とそれに続く「Get Me To The World On Time」を提供した。両シングルとも典型的なサイケデリック・パンクで、インチキな極東風オルガンとネズミのようなボーカルが特徴だった。曲はヒットしたが、LPは本当に退屈なものだった。彼らはあまりコントロールできていないようで、それらは主に意気地のないお涙頂戴ものだった。

『Underground』は彼らの2枚目のLPで、まだ入手可能だ。これは彼らのクラシックである。よりコントロールできるようになった彼らは、ボ・ディドリーのリズムとファルフィサの軋むような音が印象的な素晴らしいシングル曲「The Great Banana Hoax」でスタートする。LP全体が死神の大鎌のようなギターサウンドとピート・デ・フレイタスのガタガタいうリズムで迫力があった。「Hideaway」ではドラムが狂い、ギターが悲鳴を上げる。「Children Of Rain」では、オルガンが遊園地の乗り物でお馴染みのアヴァランチみたいにフェイズする。「Antique Doll」では、ベースは凶暴で、声は必要以上に甘い。これが彼ら唯一の一貫して素晴らしいところだ。この後、彼らはデイヴ・アクセルロッドという作編曲家に権力を委ねることになる。彼は、『Mass In F Minor』と『Kyrie Eylson』という最も弱い2つのアルバムを制作した罪を犯している。これらは偉大なグループの鼻についた鼻くそである。アーメン。

英国サイケデリアの基本は、はるかによく知られている。「See Emily Play」、「All You Need Is Love」、「Paper Sun」、「Hole In My Shoe」などは誰でも聴いたことがあるが、良いものと悪いものを分けるのは難しい。ここではサイケデリアはスタイルとして定着した。どのグループも脳内の虹色の抽象的な世界をイメージしたスリーブを持っていた。ヴィンス・ヒルやノエル・ハリソンでさえ、「奇妙な」ヒット曲を持っていた。彼らが注目したのなら、それは売れているに違いない。

しかし、その他はどうだったのだろう? 失敗作についてはどうだろう?

最大の敗者は、ザ・クリエイションだ。彼らはもう少しで成功するところだった。ピート・タウンゼントはギタリストのエディ・フィリップスにザ・フーに入らないかと誘った。彼は拒否したので、タウンゼントはザ・クリエイションのファンクラブに入った。

成功しなかったからこそ、ザ・クリエイションのファンは彼らを過大評価する傾向があり、「こうあるべきだった」と語ることに躍起になっている。確かに彼らの曲はとても素晴らしい。「Painter Man」や「Life Is Just Beginning」は童謡のようで、とても口ずさみやすい。ボニー・Mが「Painter Man」をヒットさせたことには何の驚きもなかった。

ステージ上のザ・クリエイションはポップアートだった。ケニー・ピケットは歌うのをやめて、背後のキャンバスにスプレーで絵を描いたりした。エディ・フィリップスは誰よりも早くバイオリンの弓を使い、彼らのすべてのレコードで彼のギターはほとんどコントロールされておらず、ヴァースの最中にしばしばフィードバックノイズが入るほどである。エドセルは『How Does It Feel To Feel』をリリースした。これはLPとしてまとめられたもので、素晴らしい出来だ。

しかし、もっとマニアックだったのはザ・ミスアンダストゥッドだ。〔バンドの〕ポップ・グループのブルース版のようであり、ヤードバーズとボ・ディドリーの両方を彷彿させ、最後はキャプテン・ビーフハートのようになる。全部がクレッシェンドで、スティールギターが金切り声をあげる。

昨年まで、彼らの録音は稀少でレアだった。ところがチェリー・レッドが『Before The Dream Faded』というLPを出した。これは買いだ、最高だから。「Who Do You Love」は嫌いだったが、彼らのバージョンで見直した。まるで別の曲のようで、部分的には繊細ですらある。彼らはもちろん成功はしなかったが、カリフォルニアを離れ、1年間チップスで食いつなぎながら成功しようとした。

アメリカの多くのグループにとって、大きな影響元は明らかにザ・ローリング・ストーンズだ。しかしもっとよく見てみると、他の主要なグループは、ザ・プリティ・シングスと、ヴァン・モリソンの初期のグループである。ゼムだ。

アメリカのコンピレーションを聴くと、曲でも態度の面でも、ゼムがあちこちに登場する。「Gloria」や「I Can Only Give You Everything」、「Baby Please Don't Go」のカヴァーが至る所に見られる。その他の「Mystic Eyes」のような曲は、元ネタを探す米国のガレージ・グループにとって完璧な青写真だった。ザ・ライジング・ストーム、ザ・ミスティック・タイドの二人、ムーンレイカーズなどを聴いてみてほしい。

ザ・シャドウズ・オブ・ナイトは「Gloria」のカヴァーで大ヒットし、「Oh Yeah」と「Light Bulb Blues」でゼムのスタイルを取り入れた。

皮肉なことに、初期のゼムのシングルはヴァン・モリソンのバッキングとしてセッションマンを起用していた。デッカはお決まりの三つ揃えスーツの態度で、このグループを信用していなかった。

結局、ゼムはモリソンと別れ、自分たちを愛してやまなかったテキサスに行くことになる。彼らはそこで、『Moxie』の2番目のEPに収録されている「Dirty Old Man」など、彼らにとって最高の楽曲のいくつかを録音した。

『Nuggets』はまったく新しいジャンルを生み出した。サイケデリック・コンピレーションである。1979年、『Pebbles』と『Boulders』という2組のアルバムが登場した。どちらもレニー・ケイの『Nuggets』のアイデアに影響を受けているが、はるかに無軌道でアマチュア的な規模だった。収録曲はあまりにも無名なため、テープが手に入らず、スクラッチノイズの多いオリジナルのシングルをマスターとして使わざるを得ないこともあった。

一時期までこの2つは欠かせなかった。これまで知られていなかったグループを垣間見ることができたのだ。また、この2つは分厚いセットを築いている。『Pebbles』は現在12枚、『Boulders』は9枚のLPがある。

私は『Boulders』シリーズのファンではない。音質も悪いし、収録曲は多くのもっと新しいコンピレーションで聴くことができるからだ。しかし『Pebbles』にはいまだに多くの不可欠な巻があって、1、2、3、5番がそうだ。

第3巻は純粋にガラクタ化したガレージ・サイケデリアだ。その中には、ただただ恐ろしいものもある。

ザ・モノクルズの「Spider And The Fly」では、歌い手は身体が蜘蛛に変わっていく10歳の子供である。彼は「助けて、助けて」と叫びながら、母親をハエだと思い込んでむさぼり食う。

ザ・キャリコ・ウォールの「Flight Reaction」については、説明を印刷物に刷ることはできない。もしこのアルバムを持っていないなら、買いなさい。それが必要不可欠なものかって? 月はチーズでできているのか? 「Horror Asparagus Stories」、「The Reality Of (Air) Fried Borsk」、「Suicidal Flowers」といったタイトルの曲は、どんなコレクションにも不可欠だ。

持っておくべき巻は第5巻で、パンクの名作である。どの曲もテーマは同じだ。

・歌い手が女の子に出会い、女の子は去る
・歌い手が女の子を愛し、女の子は歌い手の最大のライバルとヤる
・歌い手が女の子を愛し、女の子は歌い手の存在に気づかない

ザ・トゥリーの「No Good Woman」では、歌い手はガールフレンドを「お前は醜くて太っていて、歯がない」と非難している。なぜ彼は留まるのか? 彼はこの曲の全編を、彼女の喉に指を向けたまま歌っている。「オレはお前にマスタングを2台とキャデラックを買ってやった」と。

このアルバムは女性をまるで戦車の連隊のように扱い、打ちのめし服従させる。

残念ながら、最新のコンピレーションの中では、『Pebbles』と『Boulders』は見劣りするようになってしまった。この2つが退屈な領域に迷い込んでしまった一方で、米英の新譜はこれまで以上に生々しく、より遠くへ向かっている。

『Pebbles』の王座の後継者は『Psychedelic Unknowns』のLPに違いない。当初は2つのEPセットだけだったが、現在では5枚のアルバムが発行されている。これらのアルバムには、ウィ・ザ・ピープルの「In The Past」を筆頭に、本物のクラシックが含まれている。ザ・チョコレート・ウォッチバンドもカバーした「In The Past」は、バラライカのかん高いギターサウンドとラガのリズムを持つ、最も美しいサイケデリックソングのひとつである。当時、ウィ・ザ・ピープルはまったくの無名だったが、パリのエヴァ・レーベルから『Declaration Of Independence』というアルバムが出ており、これが生々しく美しい。

『Pebbles』からの難民であるザ・キャリコ・ウォールは、「I'm A Living Sickness」という死の慟哭で登場しており、徒歩のペースのドアーズのようだ。『Pebbles』からは他にザ・スクワイヤーズやザ・スプリット・エンズの名前があり、ザ・シックスペンスによるラブの「My Flash On You」の倍速カヴァーもある。

『Texas Flashback』シリーズについてはさきほども触れた。本当に必要なものなのだが、今では入手が非常に困難になっている。もっと簡単に手に入るのは、やはりエヴァの『Mindrocker』シリーズだ。いくつかの曲はすでに持っているダブりがあるかもしれないが、どれも良い曲ばかりなので当然だろう。『Acid Visions』という古いブートレグをベースに、エヴァはムーヴィング・サイドウォークスの4曲を追加し、新しいLPを作成した。音は以前のアルバムより良く、値段も安いが、素晴らしい一点物のジャケットは付いていない。

それぞれのコンピレーションについて膨大な時間を費やすつもりはないが、極めて重要なものもあり、『Back From The Grave』はその代表格である。この2巻をリリースした男はマニアックである。12歳で音楽に目覚めた彼は現在25歳、珠玉の作品を求めてアメリカ中西部をハイヤーで走り回る日々を過ごしている。これらのアルバムはスリーブノートだけでも価値がある。

これらのアルバムに収録されているグループは、まさに危険だ。長髪? とんでもない‼ ザ・マリブズ、ザ・ブリガンズ、ラルフ・ニールソン&ザ・チャンセラーズ。サイケデリック・リバイバルでは絶対に出てこないような名前だ。そして極めつけは、ザ・ノヴァズによる「The Crusher」のカヴァーだ。体重200キロの田舎者が歌うこの曲は、ザ・バナンメンのバージョンを食ってしまう。

USの新しいコンピレーションであり、おそらくこれまでのベストである『What A Way To Die』でも同じような姿勢が貫かれている。サブタイトルは「Forgotten Losers From The Mid-60's(60年代半ばの忘れられた負け犬たち)」だが、これは信じられないほど暴力的でめちゃくちゃなものだ。

シカゴからは、おそらくルー・リードが作曲しているであろうザ・ビーチナッツの「My Iconoclastic Life」。スリーブに書いてあるように、これは最も恐ろしいレコードのひとつである。

「オレの人生は無、ただクスリを飲むだけだ。
何時間も座って花だけ見ている」。

リチャード・アンド・ザ・ヤング・ライオンズは、「You Can Make It」の出だしの重ねられたギターとチューブラーベルによって、これまた一発屋的なクラシックだ。スリーブにも掲載されているが、5つの異なるグループのメンバーのように見える。その他にも、弱音を吐く前のヒューマン・ビーイングスや、スタンデルズの初出音源など、大きな目玉がある。わーい!

その他、『Psychedelic Sixties』のいくつかの巻と『Off The Wall』の2枚のアルバムも見逃せない。これらはまさにガレージ・サイケデリアである。

完全な変人を求めるなら『Mindblowers』を探してみるといい。スリーブはオレンジと黄色の渦巻きで少し宇宙的だが、音楽は完璧で、13thフロア・エレヴェーターズの初期の録音である「Tried To Hide」が入っている。

しかし、真の発見はザ・ドアーズの「Go Insane」だ。残っている3枚のアセテートのうちの1枚で、後に「Celebration Of The Lizard」となるブルースをわめく曲である。私はこの曲が大好きだ。モリソンはとても若く、声も出来上がっておらず、胸の鼓動もないように聞こえる。ドアーズ・フリークのために、これはホワイト・ラビット・レコーズからリリースされている。

最後のUSものの必需品は『Psychedelic Moose And The Soul Searchers』で、マウス・アンド・ザ・トラップスが泣き叫ぶジェレマイアの「No Sense Nonsense」から、ザ・ブルー・シングスの「Orange Rooftop Of Your Mind」のようなヤードバーズ的なものまで含む大傑作アルバムだ。実はザ・ブルー・シングスは7種類くらいのコンピレーションに参加していて、どの曲も素晴らしい。さて、アメリカはこれぐらいにしよう。

イギリスのコンピレーション・シーンは、アメリカのそれと比べるととても抑制的だ。『Not Just Beat Music』のようなアルバムは以前からあったが、脳天直撃なのは『Chocolate Soup For Diabetics』からが本番だった。現在3巻まで発売されているチョコレート・スープは、完全にクラシックである。

第1巻は、ザ・ヴォイスの「Train To Disaster」で幕を開ける。深夜の地下鉄を待つように、この曲はトンネルから叫んで出てきて、君の頭を殴りつける。典型的なこの世の終わりのような歌詞と、鼻水を垂らしたような卑屈なヴォーカル。それはギター地獄で終わり、君の顔を地面に踏みつける。

ザ・ミスアンダストゥッドがフィーチャーされているが、彼らですらザ・クレイグの「I Must Be Mad」のマニアックさには押されてしまうほどだ。この曲はスピードのたがが外れた「I Can See For Miles」であり、ギターの奇襲攻撃であり、ドラマーはタイム・キープのまずさを補うために必死でオーバー・プレイをするのである。

ザ・ティックルの「Smokey Pokey World」では、メロディーは明るく、アシッドギターの旋律はとても純粋でシンプルだ。本当に奇妙なのは、ワン・イン・ア・ミリオンというグループだ。彼らの収録曲は2曲とも、「ソウル化」しなかった場合のザ・ジャムという感じだ。しゃがれたウェラーの声、フォクストンそのもののハーモニー、私は彼らがこの方向に進んでくれたらなと望んでいたのだ。

チョコレート・スープには、『The Demention Of Sound』というサイケなR&Bの姉妹編的アルバムもある。内容はもっと未加工で、ザ・バウ・ストリート・ランナーズとザ・ソロウズが収録されており、どちらも生々しく手に負えない。チェリー・レッドのミスアンダストゥッドのLPが好きなら、これは気に入るだろう。チョコレート・スープに参加しているザ・シン(The Syn)は、こちらでは彼らのブルースの化身であるザ・シンディケイツとしてフィーチャーされている。「Crawdaddy Simone」は、ロシアの大草原を越えて押し寄せるブルース版「European Son」である。

チョコレート・スープの仕掛け人はショーン・グレゴリーだ。私は彼が誰なのか知らないが、彼のレコードとそのスリーブノートが大好きである。

チョコレート・スープには『Electric Sugar Cube Flashback』という2巻の兄弟作もある。アメリカでプレスされ、チョコレート・スープの多くのバンドが収録されているほか、ボーイング・ドゥヴィーン&ザ・ビューティフル・スープの「Jabberwocky」や、ロジャー・チャップマンがまだフィアガル・シャーキーに似ていた初期のファミリーの曲「Scene Through The Eye Of A Lens」などの変わり種もある。ベストトラックは、どこでも見かけるようなフルール・ド・リス(Fleur De Lys)の「Gong With The Luminous Nose」だ。彼らは多くのコンピレーションに曲を収録しているが、どれもフーやヤードバーズが夢見るような曲である。

「赤い色を9倍。熱せられた血のように爆発する」――ザ・ゾディアック

この色とりどりの戯言は、君に警告を与えるために書かれている。素晴らしい新作LPはたくさんあるが、一部のコンパイラーは、明らかにヒッピーの駄作によって素晴らしい市場を氾濫させようと意図している。

例えば『Perfumed Garden I』を買うと、パンク・サイケデリアの見事な一発が手に入る。ジ・アイズ、ザ・バーズ(The Birds)、そして富のすべてを手に入れることができるのだ。しかし『Volume II』を買うと、ヒッピーやプレ・ヘヴィ・メタルの一群に、クラシックが数曲だけ混じっているなんてことになるので要注意だ。私は『サウンズ』誌で4つ星のレビューを読み、レビューしている香炉の匂いを嗅ぎとった。

『Perfumed Garden』をリリースしているサイコ・レーベルは、古典と粗悪の奇妙な混成物である。同じように、サイコからリリースされた『Endless Journey I』は汚く、見事にめちゃくちゃで、一方『Volume II』はロジャー・ディーンのジャケットを得るためならなんでもするかもしれない、失敗したメロトロン・グループたちである。

とにかく、善意をこき下ろすのはもうやめよう。最後に紹介するアルバムは、本当は「その他」のカテゴリーに入るべきものだ。オーストラリアのサイケデリアのコンピレーション『Ugly Things』である。ヤードバーズ的であり、プリティ・シングス的でもある、その英国的なサウンドから、ここに含めることにした。彼らは3年ほど前に第2巻を予告した。それはまだ浮上してきていないが、その他の作品は続々と出てきている。

「バーズの節はどこだ?」「バッファロー・スプリングフィールドはどうなんだ?」と思っている人がいたら、忘れてほしい。もちろん彼らも素晴らしかったが、彼らのことなら誰でも知っている。ここで書いたグループについても、誰もが知っているべきなのだ。1996年には、アズテック・カメラ、フリッパ―(Flipper)、ジ・アンダートーンズ、アラン・ヴェガ、ペレ・ユビュについての記事があることを願う。今は誰もが彼らを覚えている。しかし、誰もが彼らを常に覚えていなければならない。

もし、これらのアルバムをどこで買えばいいのか悩んでいる人がいたら、探してみてほしい。ロンドンのヴィニール・ソリューション、ニューヨークのミッドナイト・レコーズとヴィーナス・レコーズ、そしてエディンバラのG.I.レコーズがベストショップだと思う。がんばって探してみれば、どこにでもある。

私はどんな種類のリバイバルも嫌いなので、サイケデリック・リバイバルがついに沈静化したことを願う。しかし、どうしても挙げなければならないのは、ザ・チェスターフィールド・キングスというグループだ。彼らのLPはあまりにもオリジナルに近すぎて、まるで1967年産みたいだ。彼らは最も無名のクラシックしか録音しておらず、純粋なチョコレート・ウォッチバンドである。

多くの人がこの音楽に感動してくれることを願うが、ひとつだけ残酷なお願いがある。

ヒッピーはお呼びでない。

ディスコグラフィー(レコードレーベルがないものもある)

Nuggets (Elektra)
Chocolate Soup For Diabetics, Vols. 1, 2, 3. (Relics Records)
Pebbles Vols. 1-12 (BFD)
Boulders 1-9 (Moxie)
Electric Sugar Cube Flashbacks 1 & 2 (A.I.P.)
Back From The Grave 1 & 2 (Crypt)
What A Way To Die (Satan)
Mindblowers (White Rabbit)
Psychotic Moose & The Soul Searchers (P. Moose)
Texas Flashbacks 1-6 (Flashback)
Ugly Things (Raven)
Off The Wall 1 & 2 (Wreckord Wrack)
Psychedelic Sixties 1 & 2 (Cicadelic)
Acid Dreams
A Gathering of the Tribes (and Son of...) (Bona Fide)
Mindrocker 1-8 (Line)
Demention of Sound (Feedback)
Perfumed Garden I (Psycho)
Endless Journey I (Psycho)
Glimpses 1 & 2 (Wellington)
The Chosen Few (A Go Go)
Psychedelic Unknowns 105 (Calico)
Magic Cube (10")
New England Teen Scene (Moulty)
Everywhere Chainsaw
Relics (dB)
Oil Stains (dB)
Burghers
Texas Punk Groups (Eva)
Sound of the Sixties (Eva)
High in the Mid-Sixties
Hipsville 29 B.C.

以下には要注意……

Perfumed Garden II
Endless Journey II
Glimpses III
Pennsylvania Unknowns
Houston Hallucinations
Echoes In Time

[翻訳:sosaidkay]

訳者からひとこと

『ティーンエイジ・スーパースターズ』(グラント・マクフィー監督、2017年)は、スコットランドはグラスゴーの音楽シーンについて知りたい人にはたまらない映画でした。監督は、先日こちらのnoteで翻訳した「『Big Gold Dreams』ブックレット序文」の執筆者でもある、グラント・マクフィー氏です。

映画は80年代から90年代初頭のグラスゴー周辺のインディー音楽シーンについて、パステルズ、ティーンエイジ・ファンクラブ、BMXバンディッツ、ヴァセリンズ、スープ・ドラゴンズ、ジーザス&メリー・チェイン、プライマル・スクリームといったバンドの関係者たちが証言する構成でした。

その中で、彼らが60年代のサイケやガレージに興味を持つきっかけとして、大きな影響力を持ったという雑誌記事があげられていました。それがここに訳出した、ジュリアン・コープの「Tales From The Drug Attic」です(『New Musical Express』1983年12月3日号)。

いわゆる60年代のサイケを、ヒッピーや「愛と平和」といったイメージから切り離し、いま聴くべきヤバい音楽として紹介した記事と言えるでしょう。映画に登場したバンドたちは、この記事を片手にレコード漁りを加速させ、チョコレート・ウォッチバンドといった未知のバンドに触れていったということを語っていました。懐古趣味ではなく、まさにいま聴いて参考にすべき、刺激的な音楽として。

そんなわけで、翻訳シリーズの一環として訳してみることにしたわけです。

記事を訳していて、これらの80年代のインディーシーンの「元ネタ」と思われる固有名詞がぽろぽろ出てきたのは楽しかったです。ボビー・ギレスピーがやっていたインディーポップのクラブ「Splash One」は、この記事でも取り上げられている13thフロア・エレヴェーターズの曲から名づけられたのでしょうし、ショップ・アシスタンツの「What A Way To Die」といった曲も、この記事にあるコンピレーション盤のタイトルにインスパイアされたのかもしれません。

ちなみに映画には出てきませんが、スワンシーのバンド、ザ・プー・スティックスに「On Tape」という名曲がありますね。みんなが欲しがるインディーのレア盤、僕はなんでも持ってるよ(ただしテープでね)、という愛ある茶化しのような曲ですけれども、その中にいくつか60年代のタイトルが登場するのが以前から気になっていました。スカイ・サクソンのソロアルバム、モンキーズの『HEAD』サントラ盤、フィル・スペクターとロネッツ。

この中でスカイ・サクソンが、歌い出しからオレンジ・ジュースの「Falling And Laughing」とパステルズの「Songs for Children」に次ぐ位置に早々と登場するのがやや不思議だったんですが、この記事を読んで少し謎が解けた気がしました。当時のインディーシーンで、ザ・シーズやスカイ・サクソンがある種幻想を持たれていたのかな、と。


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