返事(2)

ワンマンライブ「花火から逃げて」にご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。前回より収容人数が増えて、今回予定が合った人はほとんど来ることが出来たのではないかと勝手に推測しております。前回の「春の曠日」と比べてほとんど倍(!)の数。そんなたくさんの人が酷暑の中、賑やかなものに溢れているこの季節の東京で僕のライブに来ることを選んでくれたことを大変嬉しく思います。もちろん諸事情で来られなかった方、遠征が難しい状況や年齢の方、まだ生で聞きたいと思える勇気を持てなかった方、様々な要因で参加できなかった方がいらっしゃるのも重々承知しております。生きているうちに一度でもお目にかかれるよう、僕個人はもちろん、チーム一同動いております。後悔はさせませんとは言い切れませんが、せめて選択の一つになれるよう努めてまいります。当日の動画は有志で録ってくださった方々が既にSNS上に投稿してくれています。ありがとう。うちのインターネット大臣である光佑が見つけてはいいねをしてくれているので、もし興味がある方は彼のTwitter(X…)のいいね欄を遡ってみてください。

最近はリスナー同士の交流も多少なり増えてくれたようで、是非そのような関係が続いてくれることを切に願います。ただ、音楽に限らず芸術やエンタメといったものは過ぎていくものだと僕は強く考えています。僕がまだまだクローズドな立ち位置ゆえに話せる人が少なく、為にその関係が必要以上に強固なものになるのを、若干ですが不安視しております。いつ好きになっても、いつ嫌いになっても、いつ好きだけど聞かなくなる時期が来ても、その人たちを柔らかく受け入れ、手放し、選択を尊重できるコミュニティであってください。対人関係のために聞く音楽ほど虚しいものはありませんし、僕にとっても本望ではありません。何やら堅苦しい啓蒙みたくなってしまいましたが、端的に言いますと「来る者拒まず去る者追わず」の精神は忘れないでねということです。

ライブ、楽しかった。立ち振る舞いを考えなくても体が自然に動くというのは初めての経験で、個人的な反省点は多々あれどライブをするということに対しての苦手意識はほとんどなくなりました。改めて支えてくれたバンドメンバー、チームスタッフ、見てくれたあなたたちに感謝いたします。後ろを見ると和田さんが、にむさんが、光佑が笑って視線をくれるのは絶対的な安心感があります。光佑はいつもニコニコしてくれていますが(ありがとうね)、和田さんとにむさんはくだらない話でげらげら笑う時くらいしか笑顔を見れないのでライブで演奏者としてのさりげない微笑みを見ると得をした気持ちになります。友人の知らないタイプの笑顔というのはいつ見ても良いものです。そして前を見ればあなたたちが笑っていたり、泣いていたり、見つめてくれたり、一緒に口ずさんでくれていたり、三者三様の反応をしてくれているのをやっと冷静に見られるようになりました。幼馴染が同じ場所に居るというのも大きかったかもね(途中まで見つけられなかった人間の台詞ではないですが)。とにかく、数少ないライブの中とはいえ間違いなく一番緩く出来た日でした。アンコールの曲でしまちゃん(幼馴染)が顔を覆って泣いてくれていたというのを聞いてなんだか誇らしくなりました。その感性だから横に居てくれたんだろうな、と。これからもよろしく。

お手紙、相も変わらずたくさん頂きました。春秋に富むあなたたちの貴重な時間を割いてくれて本当にありがとう。その全てに返信をするのは難しいけれど、このnoteを返事の場所にしようと思います。その前に手紙の外装について。シーリングスタンプを使う人がとても多くて驚かされました。前回いただいたお手紙の中にも使われている方はいらっしゃいましたが今回は約半数。手紙は文章自体の熱量を測るものだと個人的には思っておりますが、外装まで拘ってくださる人はきっと手紙という形態に愛着を持っているのかな、なんて思ったりしました。素敵です。あとはシンプルな白い便箋を使う人が意外と少なくて、薄く黄みがかった小説用のような紙を用いる人が多かったのも印象的です。きっと好きなものが近いですね。便箋のモチーフは"猫"や"花"が多くて、おこがましいですが僕に合わせてくれたのかな、なんて思ったりもしました。個人的な趣味だとしても、趣味が合いますね。嬉しいです。香水をふってくださった方も多くて、中には香り袋を紙で自作して入れてくれた方もいらっしゃいました。おかげさまで最近は手紙を開く時に鼻に神経を集中するようになりました。殺風景な部屋が一瞬で華やぐ、甘美な瞬間です。入れる順番が逆さになって、いきなりサビみたいな文章からはじまっていた方(お二人いらっしゃいました)。なんだか可愛らしくて、人間らしくて、微笑ましかったです。

他にも差し入れとして、生花(可憐!今は玄関で綺麗に佇んでいます)、短編集(発想に驚きました、本を貰うのって嬉しいですね。ご本人の好きな一冊なのかな。大切に読みます)、夏を象った小皿と花火から逃げてのワンシーンを切り取った水彩画(季節への感度が素敵!ギターを弾くときに片足を蹴り出すのは癖なので気付いてもらえて嬉しいです)、元恋人と行ったお店の珈琲(呪いのおすそ分けだ…大切な一部を預けてくれてありがとう)、ネイルポリッシュ(初めて聞く名前のブランドでした。まったりかわいいココア色)、仕掛けのあるスプレーボトル(香水を入れて持ち歩きたくなりました。模様が入れるもので変わるのがお洒落)、などをいただきました。全てを紹介できなくて申し訳ないですが、ちゃんと澤田の元に届いております。創作活動の血肉とさせていただきます。ライブに来てくださるというだけで安くないお金を払って、人によっては多大な交通費をかけて会ってくださっているわけで、その上で差し入れなんて貰い過ぎだと常々感じております。渡す側からすれば"そういうことではない"というのも理解しているつもりですが、どうかご自分の生活を最優先ください。僕が返せるのは最小でも最大でも音楽のみです。ライブチケットがそれの対価である以上、どうかご無理のないようになさってください。本当にありがとう。

毎度の如く、前置きがとても長くなりましたがお手紙の内容への返信です。

  • 手に取ってくださってありがとうございます。

このような一文を前置きとして書いてくださる方が今回は多かった気がします。いただいた手紙は必ず読みますし、感謝は僕からの一方通行で良いのにこのお心遣いは美しすぎます。ありがとうございます。

  • 「~(歌詞)」が元恋人との日々を思い出させる

自身の経験を綴って、曲と重ね合わせてくれる方も多かったように思えます。澤田空海理の曲は元々がそういう風にデザインされているとはいえ、人生に組み込んでもらえるのは作詞者冥利に尽きます。僕にかかった呪いがあなたを縛る呪いのような言葉を生み出したなら本望です。 "魚と猫" の「すれ違うならぶつかった方がいいだろう。言わなくてもわかってくれよ」という箇所が、最初からその二人がぶつかるようにできていたのだなと思わされた、という文章は目から鱗でした。そうか、三人目にはそうやって映るのか、と。僕にとってこれは私事だったわけで、なんで無傷でやり過ごそうとするんだよという叫びだったわけで、でもそれを伝えないことが既に関係性を証明しているのだというのはまさにその通りでした。作詞をしてみてはいかがでしょうか。その超俗的な目線があればきっと良い文章を書けると思います。

  • 気持ちを伝えることが苦手

普段はあまりSNSや発信などにリアクションが出来なくて、というお話も何件か頂きました。そのあなたが手紙を書いて送ってくれたこと、身に余る光栄です。僕では想像がつかないくらい勇気が要ることだったと思います。得手不得手は凹凸であり、凹みのその裏には強みが必ずあります。画一的にならず、自分の心地良い姿を愛してあげてください。

  • 最近は聞け(か)なくなってしまって

冒頭でも似たようなことを言いましたが、音楽は過ぎていくものです。自身のライフステージによって必要な音楽は変わるし、そもそも音楽が必要じゃなくなる可能性もあります。とても良い兆候です。現にライブに来てくれるくらいに好きでいてくれるわけで、赤裸々に打ち明けてくれていること自体が信頼の証ですね。あとは元恋人や好きだった人と聞いていたから聞けなくなったという方。よく解ります。僕はback numberとMy Hair is Badを同じような理由で聴き始めて、一時期聞けなくなって、結局戻ってきているので逆に信頼しています。あなたは戻ってきます。でも、みんな最後は巣立っていってね…。僕はここで失恋人の殿(しんがり)を務め、果てますが、あなたたちは恋であろうがなかろうが何らかの形で人生の幸せを見つけて澤田を卒業していってください。僕は僕を看取るので精一杯ですので…。

このお手紙の内容には関係ありませんが、僕は過度の期待を寄せられることが苦手です。一生添い遂げられる音楽を求められても作れないし、たまたま手に取ったそれが宝石であったことを願うばかりです。澤田空海理を聞かなくなることにもし引け目を感じるなら、それは僕にとっても好ましくありません。作る曲、感性、書きたいもの、全てが環境によって目まぐるしく変わっていく中で全員に好きでいてもらうなんて不可能なので、恐れず離れ、恐れず戻ってきてください。"手放したくないもの"を僕はもうこの人生で作りません。このスタンスは変わりません。

  • 姉妹で観にいきます

これは個人的に衝撃でした。前もってインスタのDMでも同じ情報を頂いたのですが、ライブ前の楽屋で澤田バンドはざわついておりました。「姉妹で澤田空海理を…?」「どういう状況…?」「双子とか..?」「仲良いな!」など。僕には歳が近い姉がいますが、一緒のライブに行くほど仲が良くて感性が近いなんて羨ましい!姉妹の距離感は姉弟のそれとはまた異なるのでしょうね。帰り道どんな話をしたのか気になります。また是非教えてくださいね。ちなみにうちの姉はいわゆる"姉御肌"な人で、好きなものが全て正反対です。姉は王道漫画と激しい音楽とアイドルとビビットな色合いの服と物に囲まれた暮らしを愛し、弟はアフタヌーン系列とバラードと野球とアースカラーの服と殺風景な部屋が好きです。親からは「あんたたちは性別逆に生まれてたら得だったかもね」と言われる始末です。でもお喋りなところは似ているし、仲は良いのでお互い趣味と思想には干渉せず生きようなといった次第です。

  • 寄り添ってくれる、抱き締めてくれる歌詞

僕の歌詞に対してこういったお言葉をいただけることが多くなりました。なんだか不思議な気持ちです。自分で自身の曲のイメージカラーを決められるなら「青い時の夕方みたいな、不安になる青色」だと思っていて、これが人によっては優しく映るのは何でだろうと思いました。きっとこの文章を書いてくださった方々には橙色ないしは近い色に映っているんですよね。自分でも自分の声色は橙だなと思うので、それに引っ張られるのでしょうかね。興味深いです。


いつにも増して長くなりました。ここまでお付き合いいただいた方、ありがとうございました。次のライブがいつになるかわかりませんが必ず在ります。その時までどうかお元気で。水分をたくさん摂って、少量でもいいので何か口に入れて、苦手でないならクーラーをつけて、少しでも平穏な毎日が続きますように。

2023/08/12

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