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好きな色を手にとって 描いていいんだって


1年ぶりに、この排水溝を覗きに来た。
ただ、奥は暗がりで、何も見えやしなかった。

だけれど、あの時の「証」があることには間違いないと
そう信じていたい。
そう信じている。
あの時からずっと。

久しぶりにここに足を運んでると
思い出がたくさん蘇ってきた。
なんてことのいない他愛もない話で
笑っている彼らの声も微かに聞こえてきたように感じる。
向こうから誰かがこっちに向かってくるような気もしなくはなかった。
ただ、そこには姿はない。

しかし、反対側を振り返ってみたその時。
あの時見た光景と全く同じように
同級生が歩いて行った。

あの時は全員で駆け寄っていった記憶がある。
ただ今、私は1人。
駆け寄る気持ちと勇気がなかった。

その人を見たのは、ちょうど5年前だと思う。
あの日以降会っていなかった。
ただ、あの日だって会うつもりなんてなかったし、あんなんで会いたくなかったし。

今は後悔で溢れている。
声をかけるべきだったかもしれなかった。
と。
細い路地で1人うろうろしている男が、いきなり声をかけてくるのは、
まぁ恐怖かもしれない。
「まだ引きずっているの?」とか「なんだっけそれ?」とか
いやそもそも
「あなた誰だっけ?」
そう言われるのが確かに怖かった自分がいた。

ただなんかこれは、運命というか奇跡というか。
まさか用意してくれていたサプライズだったのかも、、。
そう思うとなおさら悔しい。
あの日の顔しか覚えていないその記憶を、
塗り替えてくれようとしていたのかもしれないと思うと、、
とても申し訳ない気持ちでいっぱい。
次見かけたときは、絶対に話しかけよう。
思い出話なんかたくさんしちゃって。
笑い合いたい。

またどこかで、また会う日まで。


あの日の彼らは
まるで形を整えたばかりの陶器のように
ほんのちょっと力を加えただけで壊れてしまうような
繊細なものだった。

先なんかなにも見えなくて、ただただ怯えていて。


好きな色を手にとって 描いていいんだよ
そう言って画用紙を渡してあげたい。

ただ今を楽しんでいればいいんだって。


もちろん、
悔しさ、苦しさ、悲しさ、虚しさ………

そんなマイナスの感情がずっと残ることには残るんだけど。

もうそれは過去のことで、
戻りたい気持ちでいっぱいなんだけど、
戻ろうに戻れないし。
もうそれは割り切るしかないなって、
やっと5年の月日を経て感じてきたことで。


ただ自分の中で生きていてもらおう。

そう思う、今日なのでした。

ありがとう。

ただただ会いたいです。

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