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続けてもいいから嘘は歌わないで

「続けてもいいから嘘は歌わないで」

思い出野郎Aチームの「週末はソウルバンド」の歌詞にこんな一節がある。売れないソウルバンドに週末を浪費する彼氏に向けて彼女が言うのだ。

続けてもいいから嘘は歌わないで、と。

デートはタワレコかユニオンで、家賃は溜めるが、CDとビールは買う。そんな彼氏。


自分の大学時代を思い出す。デートはタワレコかレコード屋、古着屋とライブだった。家賃は溜めなかったが、音楽とビール、煙草、古着に散財した。昼から飲むビールのrudeなかっこよさと、ダンスホールを這う裏打ちのリズム、緩いホーンの響きに憧れた。

あの頃はよかった、なんて、思わないように生きてきたけれど、たまにふと、暑い夏の日の白い雲や、淀んだ川面のきらめきや、ふとよぎった煙草の香りやアジアン雑貨や古着屋の匂いに、心を持っていかれることがある。

年をとって、綺麗なことだけを見ていられなくなって、100%の格好いい大人になることも諦めた。社会的にはどうしようもなくて、コミュニケーションも取れないクソ野郎だとしても、自分の好きな人には、やっぱり嘘を歌わないでいてほしい。

この曲を聴くたびに、いつまでも自分のなかに残る青臭さを噛みしめる。


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