耶恵
「耶恵ちゃん聞いてる?」
「ん?ごめんもう1回お願い」
「だからね、夕飯お肉かお魚どっちが食べたいっ?て話」
「じゃあ、、おさかな、かなあ」
他愛もない会話。
当たり前のように存在する母親と当たり前のように毎晩食べることの出来る、夕飯の話。
毎日が積み重なって出来る当たり前の日常に幸せを感じながらも、何処か不安を線で型どった様な気持ち悪い何か、が付き纏う。
この不安さを例えるならシーソーだろうか。
不安そうな自分が向かい側に座っていて、もし向こうが晩飯を少しでも食べすぎたのならすぐに傾いてしまうようなそんな不安定さ。
足元には沢山の蛇が蠢いていて片足でも落としてしまえばすぐに取り込まれてしまいそうだ。
もやもやを取り払う様に私は、にっと口角を上げた。
「ママ、今日のテスト100点だった。」
右手の二本指を、漫画で描かれる兎の耳のように少し曲げて立てる。
「100点?流っ石! なぁに、そのピース 」
「可愛いでしょ、今考えた。兎ピーース」
ママは笑った。
これで良い。私は間違ってない。
今この瞬間、確かに一人の人間を笑顔にした「私」が母の中に存在した。
大丈夫。ママは私を見て笑った。
大丈夫。私はここに居る。
高校3年生。耶恵(やえ)・女。
両親の外見をいいとこ取りして引き継いだ私はかなり容姿が良いらしい。
そう。「らしい」
私は誰からも理解されたことの無い悩みがある。
私は自分の顔を正確に把握することが出来ない。
それがどういう事かと言うと、つまり毎日自分の顔が違って見えるという事だ。
それは何となく今日はいつにも増して可愛く見える、とか今日はブサイクに見える、とかそう言った生半可のものでない。
私は、私の顔が毎日、毎朝、毎昼、毎晩、全くの別人に見えるのだ。酷い時は、性別も違うおじいさんの顔に見える事もある。
そんな調子だと、やっぱり自分という個の存在が現実に存在しているのかよく分からなくなる事がある。
それがとてつもなく恐ろしい。
自分が自分を認識できない。
もっとタチが悪いのが、わたしは、自分以外の人間はしっかりと顔を認識出来るということだ。
それがより一層、私の世界を混乱させる。
(以降 耶恵が他人から見られる自分を認知される事により自分の存在意義を見出していくストーリー構成をかく)
心理的要因で顔が分からないと見せかけてラスト、実は本当に顔がない。モデルの仕事をした時に誰かが口を滑らせてしまう。(これは主人公がこの現実を深層では知っていたため)
主人公が生前夢見た生き方と世界だった。
天国に行くと人は思い描いていたものを実現出来る。しかし天国で自殺をしてしまうと無になってしまう。
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君のためだったんだ。
君の為だと思ってたんだ。
「じゃあ、この足も!アスファルトも!この柵も!貴方も、、、存在しないって事?」
「違う!!君の認知の中で確かに存在はしているんだ。 全て説明する。だから、どうか君には死なないで欲しい。」
「わかった、、、聞かせて。」
「まず、世界の定義から説明しよう。 ひとつの星があってそこに無数の生き物が暮らしている。
でも、本当はそうじゃない。物体は何ひとつ存在していないんだ。あるのはエネルギー。エネルギーは意志のかたまりさ。このエネルギーは元々とても大きな塊だった。そして、このエネルギーの特徴は集まれば集まるほど、より鮮明に形を持つことが出来るんだよ。 」