見出し画像

好きな恋愛映画

好きな恋愛映画と聞かれて真っ先に思いつくのは「タイタニック」だ。

花様年華とかビフォアシリーズ、アパートの鍵貸します。を挙げていた時期もあったと思うけど、もっと自分に素直になってみると結局タイタニックが好き。カッコつけるのはよくないと思い本当に最近になってその事実を認めた。

タイタニックといえば身分の違う若い男女が豪華客船で運命的な出会いを果たすが客船が沈没し死別するという、誰もが知る感動の名作だ。
愛する人が死ぬという手のラブストーリーは「世界一嫌いなあなたに」「ゴースト」をはじめこの世に溢れている。死別が主題でなければ展開としてはもう数えきれないほど存在する。
死で永遠に引き裂かれる2人に思わず胸が締め付けられ、確実に「泣ける」ので泣くことを目的に観る層も多くいるジャンルだ。
ちなみに自分は「泣ける映画」と言われるものが好きじゃない。
まず、観客に涙を流させるために安易に死別・難病などを盛り込んだ作品にも、それを良しとして泣くために映画を観る人々にもゾッとする。
そう感じるのは、自分がケータイ小説ブームが生んだ名作「恋空」のような泣かせのためのてんこ盛り要素の幼さ未熟さに羞恥を感じるタイプの人間だというのも関係してくるかもしれない。
それから、愛する人が死んで悲しいのは当たり前なのでめちゃくちゃベタだなと思ってしまう。とてもわかりやすい題材が故に、こんなので喜ぶのはダサいのではないかという自意識もある。
 
それなのに一番好きな恋愛映画はタイタニックである。なぜか。
他の死別ラブストーリーとは一線を画して、自分の心の中で眩く輝き続ける特別な作品だ。
タイタニックが事実に沿った物語であり、ラブストーリー抜きにしても細かい人物設定が面白い、といった魅力ももちろん理由の一つではある。
でもそれは「好きな映画として」の理由であり、「好きな恋愛映画」としての理由ではない。

ジャックとローズ、2人の関係性が大好きなのだ。とてつもなく美しく思えるから。
ジャックは死んでおり、老婆になったローズが記憶をたぐり寄せるという描き方なのでこれは美しい関係性であり美しい記憶でもある。
 ”飛ぶ時は一緒でしょう?”の一言に凝縮されたジャックとローズのお互いを強く思い合う気持ちに胸を締め付けられる。このラブストーリーには、喧嘩をしたりどちらかが浮気をしたりといった泥要素は一切ない。一緒に過ごす期間が非常に短かったこともあるが終始一貫して綺麗な関係だ。
では私はぶつかり合いのない綺麗事のような恋愛を見るのが好きなのか?
結論から言うとそうではない。
児童絵本のような物語は別に求めていない。
自分は「自分以外の誰かを大切にすること」の尊さを感じたのだ。それは例えば恋人でなくてもいい家族でも友人でもたまたま知り合った人でも構わない、人間という自分の欲望のために生きてしまいがちな生き物が、自分以外の誰かを大切に思い、気遣い、その誰かのためなら本来とり得ない命懸けな行動にだって出る。
そしてその誰かを大切にできた・してもらった経験と記憶は宝となり同時にこの世をサバイブする武器となる。
実際に物語でローズは101歳まで逞しく生きた。
他人と綺麗事で関わるべきとは言わない。ときには本音でぶつかり合うことも大事かもしれない。
しかし一度口にした言葉というのは元には戻らない。一瞬一瞬が記憶として刻まれる。例えばジャックがボートから意を決して戻ってきたローズに「助かったのにわざわざ戻るなんて馬鹿だろ」とかぐちぐち言い続けていたらどうなっていただろう。結末は同じだとしてもローズに不安な時間を与えることになっただろう。
当たり前だが、もしも相手のことが本当に好きならば、余計な言葉よりも綺麗な言葉をたっくさん贈るべきなのだ。言わなくていいことたくさんあるねとカネコアヤノも言ってた気がするし。
もちろん現実の人間関係はもっと複雑だ。
それでもタイタニックは相手を愛することの真の尊さを思い出させてくれる。
誰かに依存して弱くなったり真っ黒な感情になってしまった時には一度立ち止まり、タイタニックの二人のことを考えたい。誰かを大切に思うときそれは本来自分を強くしてくれるものなのだ。





















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?