【小説】Lento con gran espressione(5)
今日は空が真っ青で雲一つないドライブ日和だ。しかし、菅野くんは容赦がなかった。
「小林さん、臭いですよ」
小林さんの愛車にある芳香剤が臭いというのだ。確かに甘ったるい匂いが充満していた。それも軽自動車だからよけい強烈に臭うのかもしれないとわたしは言わないけれどそう思った。
「そんなに臭うかな?」
「臭いますよ、いかにもおじさんだから。これまずいレベル」
「そこまで言わなくてもいいじゃないか」
すると洋子さんがパシリと言った。
「途中でファブリーズ買いましょう」
小林さ