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【ドラマ】恋愛バトルロワイヤルを見た。男女交際禁止の校則について思うこと

Netflixで独占配信されている「恋愛バトルロワイヤル」が深くて面白かった。

恋愛禁止の校則を破って退学処分になった学生が、学校に対して裁判を起こしたという実話を元に作られた学園ドラマ。

恋愛ってわるいものなんだろうか?学業の妨げになるんだろうか?肉体的にも精神的にも危険が高いもの?同性愛はどうなる?

良い、悪いじゃない。
白か黒じゃない。
答えはない。
でも、答えがないということがよくわかった。

男女交際をしたら退学という”ルール”と、それでも誰かを好きになってしまう”感情”の狭間でもがく学生たち。学生が誰かのことを「好き」だと思う姿はとても素敵なのに、それ以上に「好き」と思って行動したことが「罪なこと」としてジャッジされる姿が、本当に苦しい。


※以下、話のネタバレを含みます


とはいえ、学校側にももちろんしっかりとした理由がある。この校則を断固として譲らない校長は、物語の舞台である明日蘭学院の卒業生だった。高校3年生の時に親友が妊娠をして、親に言えぬまま1人で出産しようとして死亡。どうして止めなかったんだ……と過去に酷く後悔した校長は、絶対に同じことを繰り返さないようにと、生徒を守るためにこの校則を決めた。(しかも良家の子女が通う超エリート高校だから尚更。)
だからどんなに生徒に訴えられようと、周りの先生から疑念を抱かれようと、その心が揺らぐことは一切ない。

裁判のシーンでも「現場はシビアで、実際に何かが起きてしまってからでは遅い、誰も責任を取れない」という主張をしていたが、それは真っ当な考えだと思う。むしろ学校長として素晴らしいと讃えられるような意志だ。何事も「予防」という努力は誰にも気付かれないものだから。

そして、同じことを繰り返さないためにどうしたらいいか?を考えた校長が、男女交際禁止に行き着いた気持ちも理解できる。付き合っている学生に対して対症療法をするんじゃなく、そもそも交際するなという原因療法をとる方が、確実に守れるからだ。

でも、そもそも守るってなんだ?
だって、そんな校長や校則に傷つけられた生徒が多くいるのも事実である。規律を重んじる生徒会副会長の藤野紗和もそのうちの一人。彼女は、生徒会役員として必死にカップルを探して回り、見つけたら写真を撮って、リークサイトに報告をするという活動をしていた。

自分のせいで多くの退学者が出る毎日。それに悩んで校長に相談するも、正しいことだから続けるようにと一蹴された。自分の恋愛感情にすら蓋をして過ごしていた藤野。そんな彼女は裁判で「今は後悔しています。誰かを好きになる気持ちを否定する権利は、誰にもないって気がついたから。私のせいで傷ついて退学になった人に謝りたいです」と証言した。

校則として定めてしまえば、ほとんどの人がルールを守ろうと行動するだろう。つまり、恋愛はしてはいけない、人を好きになってはいけない、と認識する。万引きした人を通報するように、恋愛している人を罪人とジャッジする。お互いに監視し合う。

そんななか、同性愛者(ゲイ)であった梨木祐真と一ノ瀬るかは、修学旅行でキスしているところを藤野に撮られ、リークされた。しかし、これは退学処分にならなかったのだ。おかしいと思った藤野が(その時色々と不安定だったのもあって)写真を校内の掲示板に張り出してしまう。それでも、学校は「風紀が乱れる」の一言で一蹴し退学処分にはしなかった。この出来事について、一ノ瀬は「僕たちの事って学校には恋愛とすら思われてないんだよね」「男同士でキスして、写真貼られて、風紀乱した、変なやつ」なんだ、と傷つくことに。恋愛をしてはいけない、というルールのなかで、同性愛は除外される。じゃあ、同性愛は恋愛じゃないのか? そんな問に校長は「わかりません。私は経験したことがないので」と答えた。

そうやって多くの生徒が色々な形でこの校則に傷つけられてきた。いくらエリート校だの、文化や伝統を重んじるだのあったとしても、この校則は必要なんだろうか。おかしいんじゃないのか?  そして物語は、主人公の有沢唯千花自身が退学処分を下され、校則撤廃と退学処分取り消しを訴えた裁判で最終話を迎える。

裁判の中で発せられた「校長先生の仰る通り、私たちは未熟です。でも、私たちに必要なのは、禁止することじゃなくて、先生が言うような”取り返しのつかない事態”に陥らないように、指導してもらうことじゃないんですか?」という未成年の主張は、見上愛の見事な演技も相まってグサグサと心に刺さるものだった。また、一ノ瀬の「同性愛は恋愛じゃないと判断されて、自分の存在を否定された気持ちになりました。僕は確かに、ここにいるのに」という証言も同様に、ギュッと胸が苦しくなった。

それでも「今しかできない恋だってあります」という有沢の主張に「好きになるな、とは言っていません」とキッパリ返す校長。そして「それでも、学校が恋愛を禁止すれば、人を好きになることは悪いことだと感じてしまいます。私は、自分の恋愛を罪だとは思っていません。だから、後悔はしていません。自分の気持ちは、自分で決めさせてください。」という、"そうだぞ!それそれ!"と共感するような有沢の主張にも、「学校にも後悔は許されません。あの時、ちゃんと禁止していれば、あんな目に遭わせずに済んだのかもしれない。そんな後悔を学校は絶対にしてはいけない。何があっても生徒を守り抜かなければならないんです」と回答した。これにはぐうの音も出ない。正直、有沢の意見以上に説得力がある言葉だと思った。

裁判の結果、有沢の退学は取り消しになったものの、校則は撤廃されなかった。それでも、有沢の言動が一部の学生たちの心に火をつけ、署名を集めて、事態は学生投票へと着地。

結果、校則撤廃に対して過半数が「反対」。校則はなくならなかった。ここがまた面白いポイントだなと思う。賛成になる流れだと思ったけれど、結局恋愛に対してめちゃくちゃ前のめりだったのは一部の学生だったわけだ。後は、興味無いとか、面倒とか、不要とか、邪魔なものとか思っている人達だろう。果たして、視聴者に投票権があったらどっちに入れただろうか?わたしも考えてみたけれど、正直決めきれなかった。ルールを制定するから過剰反応するだけで、別に触れなかったら落ち着くものだとも思う。でも、校長の意見も無視は出来ない。

恋愛って、ものすごいパワーがあるんだと思う。有沢がドラマ内で「やっぱり、すごいよ。恋愛のパワーは。頭良くて、冷静な藤野さんを狂わせちゃうんだから。」と言っていたが、本当にそうなのかもしれない。誰かのことを好き、という気持ちだけで体が動いたり、自分でも驚くような感情になったり、知らない自分に出会ったりするのだろう。学園祭のダンスシーンでも「こんなことをしてはいけない、とか、こうはしたくないとか、いくら抵抗したとしても、誰かに恋をすれば全部吹っ飛ぶ」と言っていた。抑えきれないパワーだからこそ、学校は危険と捉えたのだ。危険は過剰だろ、と思うけれど、恋愛というガソリンで色んな壁を乗り越えていけるパワフルな人達も知っているからこそ、一概には言えないなとも思う。

今の時代っぽい作品ですごく面白かった。今回の記事では特筆しなかったけれど、本当はもっと、家庭環境とかお金の有り無しとかが恋愛感情にも響いてきたりする。色んな価値観が入り乱れながらも、どこかピュアな学生たちの葛藤が刺激的な面白いドラマだった。色んな人に見て欲しいし、沢山の意見を聞いてみたい。


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