871ンスタライブ #018(岸本優二)

#871ンスタライブ  #018
2020年12月28日(月)

関西ライブハウスの重要人物、岸本優二さんを迎えてお送りした第18回。良いライブハウスとは?昔のノルマ制?ライブハウスを作るには?といった、ライブハウスに纏わるトークが深く展開された1時間。

主催:柳井貢(以下:871)
ゲスト:岸本優二(以下:岸本)

(871) こんばんは。
今日は、後でちゃんと紹介しますが、岸本優二さんをお呼びして色々話してみようかなと思っています。関西でライブハウスに行ったことある人だったらBIG CATとかLIVE SQUARE 2nd LINEとかMusic Club JANUSとかROCKTOWNとか大阪MUSEとか…行ったことあると思うんですけど、僕らはそういったライブハウスを勝手に"アーム系列"って呼んでいますが、アームエンタープライズっていう…経営というのかな?会社をしている方ですね。

(岸本) こんばんは。

(871) こんばんは!
優二さん今日忙しそうでしたね。

(岸本) 今日ね。十代白書のやつやってたから。

(871) 十代白書がいまいち僕ちゃんと正確に把握できてないんすけど…正確にはどういうことなんすか?
(十代白書について→ http://juudaihakusho.com )

(岸本) うちのライブハウスの子達の中で、10代集めたイベントをやりたいって話が出たのがスタートで。結局もう10年やってるらしいんだけど、神戸大会とか京都・滋賀大会とか、南大阪大会とか、各地ライブハウスあるから予選をやって、決勝をBIG CATでやると。

(871) 十代白書出身の"あの人もそうなんすか!"みたいな人って誰ですか?

(岸本) 『BURNOUT SYNDROMES』とか、『Age Factory』とか『Shout it Out』とか。あのあたりも皆、十代白書だね。

(871) なるほどなるほど。それ高校生くらいの時に出てたみたいな感じですか?

(岸本) そう、結構若い時。"10代"やから高校生も出れるし、大学1年生くらいまでは出れるかな。

(871) メンバーに10代がいたらオッケーみたいな感じですか?

(岸本) でもそれで昔、1人10代であと20代後半のバンドもいたから、それはやばいなって1回問題になったけど。

(871) 絶妙なところっすね。
"オーディション"になるんですかね?

(岸本) オーディションっていう言い方あんまりしたくないけど、結果的にはそうなるかな。10代のうちにライブハウスと出逢ってほしいっていうのはテーマとしてある。結局今は、音源作ってどっかに送ったり、SNSで発信できる時代だからライブハウス通らないでいいっていう可能性も絶対ある。でもライブハウスは楽しいところなので、出逢ってほしいなって。だからグランプリばっかり狙ってるんじゃなくて、出逢いを求めてる感じかな。

(871) 一個の軸というか理由に、「ブッキングいつでもやってるし来てや〜」っていうよりは、「こんなんもやってるからよかったらどう?」みたいにコミュニケーションとりやすいのもありますよね。

(岸本) そうそう。もう10代だし出ときいや、みたいな。凄くハードルを低くしてるよ。2曲あれば出れるから。それこそ俺がやってた『Rick Rack』とか『FERN PLANET』 とかも高校生の時に出てたから。

(871) なるほどです。

(岸本) すごいねこれ(配信)。

(871) 凄いでしょこれ。とりあえず100回やるって決めたんですよ。

(岸本) なるほど。でも今そこそこやってない?

(871) 今日18回目です。
まだまだ全然。今、多いと週3.4です。

(岸本) いいじゃないですか。初めてっすわこんなん。

(871) でもラジオやってるじゃないですか。

(岸本) ラジオやってるけど、目に見えてコメントがリアルにくるのはあんまりやったことないから。

(871) 確かにラジオよりレスポンス全然早いんです。

(岸本) 参加型だよね。

(871) 良い所でもあるし、でもあんまり読みすぎると引っ張られて話したかった話をし損ねるみたいな(笑)鋭い角度のコメントくると拾いたくなっちゃうんで(笑)

(岸本) わかるわかる。
これ、タイムテーブルとか別に考えてないんでしょ?

(871) んー。配信をやる理由の1個に、ちょっとしたことですけど、アーティストのプロモーションを違う角度からするみたいなのがあって。要は、自分の担当してるアーティストとかでも、「聞かれたら答えれるけどSNSで自分から毎日発信するのはちょっと度胸いる」みたいな。「うるさい奴って思われるかな」みたいな、そういう心理状況ってあるじゃないですか。それをマネージャーが呼びつけて、「あれどう思ってんの?」みたいに聞くことによってそこで告知するっていう(笑)そういう目的がある時は、例えばあきらかにあきら(THE ORAL CIGARETTES)と配信やるってなったら、次のベース塾の話はしようとかそれくらいのことは決めてるけど、裏方さんとか他所の人と喋る時はあんまり決めてないですね。

(岸本) メンバーは身内やから決めとかなアカンっていうのもあるよね。

(871) 身内の場合は告知を一個の目的としてるんで。それこそ何かを発表して実行するまでの間くらいに、告知の中だるみ みたいなのあるじゃないですか。発表したてと活動間際は告知しやすいけど、その間はもう散々言ったし言いづらいな、みたいな。(笑)

(岸本) なるほど(笑)

(871) ちょっと自ずからは言いづらい話を掘り出したりとか。

(岸本) いいっすね。
…そう考えたら貴方は昔大阪で、ハイエースで泊まってましたからね。

(871) はは(笑)そうっすね。ハイエースで寝泊まりしてましたね。でもその時は多分大阪に住んでて…帰んの面倒くさくなって扇町の駐車場でハイエースで寝てましたね。

(岸本) はは(笑)そういうのあるね。

(871) でも今、どっちかと言うとそういうのやってるスタッフとかいたら、「ちょっとさすがにやめておこう」って言う立場になってるので…(笑)

(岸本) そっか(笑)昔の話ですよ、昔の話。

(871) いや〜でも5年、10年で働き方改革とかね。

(岸本) そうやで。

(871) ライブハウスとか絶対無理じゃないですか。有給消化とか…

(岸本) そうやなぁ。究極リハと本番の日が違うなんて可能性ないやん。特に現場が大変ちゃうかな。事務所の仕事とかは朝番、夜番はできるけど、音響さんとか照明さんとかは特に厳しいんじゃないかな。

(871) でもブッキングとかもじゃないですか?

(岸本) ブッキングは最悪、夜来たりするやん。昔ライブハウスのやつ結構夜来たりしてたやん。

(871) 本番合わせで来るみたいな。

(岸本) そうそう。

(871) でも…あれ、優二さんおいくつですか?
僕の記憶では、僕が優二さんに出逢った時既に偉かったから。ON AIR OSAKAの店長やったでしょ?俺が大学2年生か3年生くらいの時やったんで。2nd LINEの公式Instagramがコメントで「優二さん46歳ですね」って言ってる。ってことは7歳上か。僕が大学生で遊んでた時に27歳くらいだったってことか。
今ちょっと、優二さんが電波問題あるので勝手に喋りますけど、僕が大学生の時に絵を描いてて、友達のバンドにイベント中に絵を描いてって言われて。ON AIR OSAKAの凄い綺麗なフロアに養生して、パネル4枚くらいに絵を描くっていうイベントをやったんすけどね。

(岸本) すいません!携帯変なことしちゃいました。

(871) 帰ってきたー!
今それどこにいるんですか?JANIS?

(岸本) JANISです。今日『Schroeder-Headz』っていう、渡辺シュンスケ先生がライブやってまして。

(871) なるほど!
ところで優二さん、46歳ですか?

(岸本) 46歳です。
厳密に言うと、45歳かな。

(871) じゃあ僕と5つ、6つくらいしか変わらないんですね。

(岸本) そうだよ。貴方はclub STOMPの店長やってた時に会ってるからね。

(871) それより前から会ってるんすよ。ON AIR OSAKAの。

(岸本) あ!そうだよ!そっちや!

(871) そうなんですよ。ON AIR OSAKAでイベントする言うて、DJブースに絵描くって言って、絵を描いて好き勝手やらしてもらった時が、初めましてです。

(岸本) そっかそっか。そうだ。

(871) その後優二さん2nd LINEにいる時に、エムトライブの解散ライブ行って、ベロベロに酔っ払って、ただの客で遊びに行ったのにステージに上がって歌ってダイブして。その時はclub STOMPで働いてたと思うんですけど、散々暴れて後日電話で謝るっていう。

(岸本) ははは(笑)そうやっけ?!(笑)

(871) そうそう(笑)当時ね。

(岸本) だから柳井はその一派なんだよ。
これ観てる人わかんないと思うけど、当時エムトライブっていうバンドがいて、俺結構可愛がってたんだよね。結果的にエムトライブのエムが何かって後々知ったんだよ。

(871) 僕知らないっすよ。聞いたかもしれないけど、もう覚えてないっす。

(岸本) あれ、"都島"らしいよ。

(871) あー!あの子ら都島でしたっけ!東京トライブ、みたいな感じの、エムトライブ、都島トライブってことなんですね(笑)

(岸本) そうそう。観てる人全然わかんないと思うけど、大阪に都島区っていう場所があってね(笑)

(871) そもそもエムトライブわからないから全部ポカーンですけどね(笑)

(岸本) でもそういうバンドの出逢いがあったね。

(871) そうそう。
で、僕が大学生時代からお世話になってて…もう20年経つってことや。

(岸本) 余裕やろ。
だって俺が2nd LINE作ったの26歳とか27歳とかやから。

(871) なるほど。そこから20年くらいってことですもんね。2nd LINEってなんで2nd LINEなんですか?

(岸本) LIVE SQUAREっていうのが尼崎にあって、ビルの中に入ってたんだけど経営が危ないってなって、テナントやから出てってくださいっていう話になって。でも、その時音響機材とか買いたてやったからこれは勿体ないし、どこか場所探そかってなって。(大阪市の)福島の高架下の物件見つけて。で、2個目やから"2nd LINE"っていう。

(871) ははは(笑)エムトライブと変わらなくないですか?

(岸本) いや、ちょっとちゃうねん(笑)!トリプルネーミングくらいあんねん。

(871) セカンド、に色々意味があるってことっすね?

(岸本) そうそう。リズムがあるやろとかうちの社長は言ってたよ。英雄を称えるのもセカンドラインって言うねんって言うてた。なんかそんなんで2nd LINEっていう名前になってたね。

(871) なるほどね。
ちょっと優二さんに何個かどんどん質問していきますわ。

(岸本) はい!分かりました。是非、宜しくお願いします。

(871) ピンキリなのは分かってるんですけど、優二さんの思う、小さかろうがライブハウスやぞ!って胸張って言えるライブハウスを作ろうと思ったらいくらかかるんすか?

(岸本) まず場所とどれくらいのキャパのスペースを作りたいかっていうので、絶対的に変わってくる。

(871) 勿論勿論。立地とね。

(岸本) あとまず防音をどこまでするかっていう。それだけでもう2,000万~3,000万変わるんじゃないかな。

(871) 防音の設備工事で2,000万~3,000万かかるんすか!

(岸本) ホンマにちゃんとしようと思ったらね。やるべき音の止め方みたいなのがあるから。

(871) なるほど!
しかも今、換気周りも大切ですもんね。防音も関わってますけど。

(岸本) そうそう。だから結局ライブハウスが地下が多くなった理由は防音でしょ。

(871) 確かに確かに。
じゃあ、例えば電車である程度行けるところで、例えば200~300人くらいのキャパがあって、ゼロからやるってなったらどんだけ手を抜いても2,000万くらいはかかるってことですね。

(岸本) そうじゃない?やっぱり。絶対トイレもいるし、ライブハウスってそもそも飲食店申請だから小さくても厨房はいるんだよね。ってことは水周りが絶対必要だから。

(871) そうっすね。
ライブハウスにとって、大事なもの3つ順番に教えてください。これ僕も使う側として言うんで。

(岸本) ライブハウス…うーん…。めっっちゃあるけどな。(笑)

(871) 全部大事ですけどね(笑)

(岸本) うーん。まあでも、やっぱりコンセプトによっても作り方が全然違うから。お客さんとの距離が近い方が良いライブハウスもあれば、ある程度エンターテイメントを魅せる為の空間が必要やと思うこともあるだろうし。それって本当に全く無い状態から作ろうと思ったら立っ端欲しいなと思うけど。

(871) そうなんすよね!そもそもテナントの選択肢が分からないですからね。

(岸本) 元々立ってる建物に作っちゃうから。ライブハウスに、こんなところにいらんやんってところに柱が立ってるのは建物の問題やから。ライブハウスとしてはそりゃ削れるもんなら削りたいやろうし。

(871) 心斎橋のQUATTROとかな。懐かしい。

(岸本) 鏡みてたもん俺ら。

(871) ははは(笑)だから良いライブハウスってなんやろなって思いますよね。

(岸本) 昔は、真四角じゃないのがライブハウスやったりしてたしね。歪なものがあるとか。それで言うたら2nd LINEなんて高架下やけど、ステージどこに作る?っていう所からスタートしてるから、そういう設計は楽しいっちゃ楽しいけどね。

(871) わ、思い出した。もう最近なかなか聞くことなくなったから忘れてましたけど、ちょっと面倒くさいこと聞いていいっすか?

(岸本) 良いですよ。

(871) ノルマ制度ってまだあるんすか?

(岸本) もう無いんちゃうかな。ほぼ。

(871) 優二さんがタッチしてるとこではほぼやってない?

(岸本) もう無いと思うね。

(871) 前はあったと思うんですけど、それが無くなっていった理由とか経緯ってどういうことやったんすか?

(岸本) ノルマって例えば、20枚売ってくださいとか、20枚のチケットが4バンドいたら80人のお客さん前にライブしましょうよ、だから頑張ってお客さん呼びましょうねっていうルールなんだけど、お客さん呼ばなくてもノルマさえ払えばライブ出来るっていう考え方が出てきてしまって。今はないけど、昔はお金だけ払う人もいれば、めっちゃお客さん呼ぶ人もいて凄い差が生まれてしまって。お客さんを呼ばないバンドにとって美味しいのはライブとしておかしいやんっていうのがあるから、ちょっとノルマを取った方がいいんじゃないかっていう空気があった。俺は。でも何でノルマが無くなっていくかっていうと、やっぱりライブハウスの数が凄く増えていってる中でバンドの数はそんなに増えてない。その需要と供給のバランスの中で、昔は20人くらいお客さん呼べるやろって思ったけど、どんどん呼べなくなっていってる。特にインディーズのアンダーグラウンドの人達ってグッドミュージックを掲げてると呼ばれたら出ちゃうから、毎回毎回ノルマで縛ることは出来ないし、じゃあこのバンドはノルマなし、このバンドはノルマありってしてたら、一瞬そういうのもやってたけど、それはそもそもルールがおかしいっていうところで、ノルマ制度は無くなっていった気がしますね。

(871) なるほどね。でも良いことというか、自然な流れやったんかなと思いますね。当時がちょっと不自然やったというか。

(岸本) やっぱりお客さん呼んだらチャージバックがあるっていうのはバンドも理解して欲しいというか、ミュージシャンも分かっとった方が良いと思います。だからたまにお客さんいっぱい呼んでもギャラもらわれへんとかたまに話聞いたりするとそれは違うなって思う。

(871) 20年~30年前にかけてが1番そういう空気やったじゃないすか。それこそその時、インディーズレーベルがむちゃくちゃありましたけど、印税払ってないレーベルなんて死ぬ程あったじゃないっすか(苦笑)

(岸本) そらそうやね(苦笑)

(871) よく悪くも健全じゃない部分もあったんやろうなって気がしますけどね。

(岸本) まあね。だって昔、覚えてるかもしれないけどオーディションイベントみたいなのあったからね。ライブハウスは。普通のブッキングに入るオーディションを日曜日の昼間とかにするんだよ。

(871) ブッキングで出るっていうことのハードルがまず高くて。

(岸本) そうそう。昔はね。

(871) むっちゃ上からのビジネスモデルですね。でも今で言うと、固有名詞は言えないですけど、ダンスグループの事務所さんとかがスクールを経営してお金を貰って、スクールで育ててそこでデビューさせて両方美味しいやんっていうのもありますもんね。公式感はスクールとして授業料取るっていう。ちょっとバンド界隈では信じられへんけど。成り立つんかな?それみたいな(笑)

(岸本) ね。成り立ってるんやろうね。昔、20枚とかノルマあった時って買い取りやったからチケット渡しに行ってたからね。

(871) 出るって決まった時点で、先に20枚分のチケット買い取ってもらって、売ったら君らの小遣いなるよってことか。パー券っていう言葉も今も存在してるか分からないですけど。

(岸本) 今は存在してへんで(笑)

(871) でも思い出した。固有名詞は出さないですけど、1000人ぐらい集めれるバンドのワンマンライブのチケットを2nd LINEの店頭だけで売ったりしてましたよね。

(岸本) あー!はいはい。

(871) 僕が先輩に、お前並びに行ってこいって言われるみたいな(笑)

(岸本) 彼等がそういう売り方をしたいって言ってもらったというのもでかいよね。

(871) 土地に根付くみたいなことの雰囲気も変わってきましたよね。

(岸本) そうやね。1990年後半くらいからライブハウスが始まって。このバンドと対バンできるから頑張ってお客さん呼んでおいでっていうライブハウスの考え方と、ちょっとずつライブハウスとバンドの関係性も変わってきてるのもある。ライブハウスやったらこのバンド、このイベント出たいなとか、そういうのも出てくるだろうし、ライブハウスの特色が出てくるようになってきてることかもしんないけど。

(871) そうですね。
ちょっと話の角度変えると、今、ライブハウスで働きたいみたいな人って結構いるんすか?

(岸本) この前俺、関西のとある大学の講義をちょっとやらせてもらって。終わってから学生の子が「ライブハウスってどうなんですか?」みたいなことを聞いてくれて。"あ、ライブハウスに興味持ってくれてんねや"っていうのは凄い感じた。でもライブハウスで働く子って、元々ライブハウスによく行ってる子がそのまま延長で働いてるみたいなイメージがあるかな。だから2nd LINEで働いてた時も、受付のすぐ後ろが事務所やから、「バイトしたいんですけど」って言ったらすぐ俺が出ていって、「おお!やろうや!」ってよくやってた気がするな(笑)

(871) よく来てくれる上になかなか帰らんみたいな子とかね(笑)ちょっと喋ったりしてるうちに、何でこの子こんなにおんねや…?あ、働きたかったん!みたいな(笑)

(岸本) そうそう。そういうのあるね。よく言ってる話やけど、当時大学の子達が沢山お客さんとして来てくれてて、そのうちの1人の子が自分でイベントやりたいとか、友達と一緒にイベントやったりとか言ってくれて、下北チームを呼んできてくれたりとかしてて。結果的にその子が働くようになってもう20年近く経ったけど、今は俺の会社のデスクやってくれてる。そういう出逢いが確かにあるかもしれないね。

(871) 僕、ずっとはclub STOMPにいられへんなと思って転職したんですけど、ずっとおる優二さんはどんな感じですか?

(岸本) 良いも悪いも、俺もずっとこのライブハウスいなさいって言われたらちょっと厳しいんじゃないかなと思う。でも勿論、色んなバンドに出逢ったし、色んなイベント一緒やったり、色んな仕事出来るようになったっていう事実があって。うちの会社は、たまたまこうやって何軒もライブハウスがあるから、じゃあこの会社の中に新しい部署ができるとか、何か新しい仕事が出来るっていう可能性を感じた。それこそバンドと一緒に東京行った子もいるし、今東京のライブ制作してる子もいるし、色んな人がいて。そんな中でうちの会社としては、例えばラーメン屋としたら「このラーメンは一生作っとけよ!」っていうのはちょっと厳しいのかなって。俺はそういうタイプやったから。そういう広げ方というか、それで俺はJANISを作ることもできたし。結果、大阪でもっと面白いできたらな、とか関西で面白いことを発信できたら、みたいなことをチームでやれることが凄く有難いなって思ってます。

(871) 確かに。ライブハウスっていうカテゴリーだけでは全然ないですもんね。

(岸本) HEADLINEの仕事は、それ以外の仕事が多くなってるね。新しい出会った子と何かやっていくこととかも。昔ライブハウスで働いてた人達は行きたいから来てる人が多くて。好きやからいるっていうかね。帰れよ!って言っても帰らへん人が結構おったけど、今は働き方改革もあるし、こちらとしても、やっぱりオンオフをしていかないとなっていう気もするし。そこはちょっと気を遣ってるっていうか寄ってしまうよね。今どう考えてる?みたいな(笑)

(871) そう(笑)こっちが勝手に探っちゃうみたいなところもあるんすよね。「帰りたいって思ってないかな…?」みたいなことを。意外と本人はそうでも無い、みたいな。

(岸本) そうそう(笑)飯誘うのとかもめっちゃ気を遣うもん。

(871) そうなんすよ!むっちゃわかりますわ。

(岸本) コロナの時は行ってないけど、去年とかは1人で店行って「俺この店おるけど、来たい人どうぞ」っていう謎な誘い方やって(笑)来なくてもいいぞっていう空気を作りながら。あれ?俺そんな気遣ってんねや、みたいな。

(871) 難しいし、業種違うけど多分僕も同じです。でもそれって受け取り側も、どっちなん?みたいになってるんすよ。僕らホンマは、むっちゃ来て欲しいと思ってるじゃないすか(笑)

(岸本) めっちゃ来て欲しいと思ってる(笑)

(871) 来いよって言うと強制になっちゃうから、もしよかったら来たら〜?みたいな感じで言っちゃうんですけど、それでは伝わってない…っていうジレンマがおこる(笑)

(岸本) だからもう究極質問するもんな。「お腹すいた人ー?」みたいな(笑)

(871) なるほどね(笑)でも、出前取ってくれるんですか?って言われるみたいな(笑)

(岸本) ……ほんなら出前取ろうか?みたいな(笑)

(871) そこに行き着く予定ではなかったけど、でもおじさん世代は皆思ってることっすね。

(岸本) 皆がみんなじゃないと思うし、若い子でもガツガツしてる子もいっぱいいるだろうし、人によるんやろうなって思う。だからめっちゃ行きたい子もいるかもしれないし。今日はダメなんです、って言いながらも空気出してる子もいるかもしれないし…まあでも、コミュニケーションとりたくな人はそもそもこういう仕事は難しいと思うから、あんまりいないと思うけどね。

(871) 今、アームグループとHEADLINEと…あれ?京都MUSEも別の会社になったんでしたっけ?

(岸本) これからどうなっていくか?っていう話やな。アーム全部で今、関西は8軒ぐらいライブハウスあるけど、皆がみんなちょっとずつ考えていかなあかん時代になったねって感じかな。

(871) スタッフって何人ぐらいいるんですか?
契約社員とか正社員とか契約スタッフとか色々あると思うんすけど、ざっくりアルバイト以外っていうと。

(岸本) 究極、制作はアームやけど、音響・照明は別会社やったりするから。そこも全部入れたら、所謂契約社員以上は50人とか60人とかいるんちゃうんかな。アームの店舗だけやったら1店舗3人、4人が店長も含めて社員だったりするから。

(871) 今年大変や。休業補償がどうの、とかね。

(岸本) そうやね。ほんまに。
うちはHEADLINEも舞台のチームも照明のチームとかもいるから、その子らはその子らでまたライブハウスだけじゃなく、舞台監督の仕事とかどっかの照明の現場仕事とかも行けるように。それはさっきの「このライブハウスずっとおるのどうなんやろ?」って話とリンクしてて、違う仕事のの空気を中に入れるというかね。このマインドを外に出すというか。そういう動きをしないといけないかなっていう気はしています。

(871) 僕も、マネージャーの仕事って新卒で受からへんかったらどうしたらいいんですか?みたいなことを聞かれるんですけど、全然裏口入学の方が多いし…入学って学校じゃないけど。ライブハウスとか、前で言ったらタワレコとか、あとはコンサートアルバイトとか。そういうところから来る人が多いと思うんですけど、ライブハウスもそういうとこありますよね。

(岸本) ライブハウスは結構そういう方が多いんじゃない?

(871) 横見渡すと、ライブハウス出身の人めっちゃ多いですもんね。

(岸本) 結局ライブハウスってバンドマンやってた人も多いじゃん。

(871) 確かに。

(岸本) だから今店長してる子達もバンドやってた人結構いると思うし、どのレベルまで真剣にやったかはまた別としても、大学通ったからライブハウスの店長になってますっていう人の方が少ないっていうか、ほとんどいないんじゃないかな。経験してやっぱりライブハウスが面白くて、人が楽しくてコミュニケーションとったら何か色んな事が広がっていって結局今のポジションにいる。俺も絶対そうやと思うし。誰かと出逢ってないと絶対こういう風にはなってないから。

(871) そうですね。

(岸本) 結局、ライブハウスで何が大事か?って"人"かな、と思うけどね。

(871) あぁ!そこに戻ったわけですね!

(岸本) その人が作るライブハウスやから良い風に見えるし、その人がこだわってやってることがカッコイイって思ったら、その"人"じゃないですか。

(871) 確かに。勿論。

(岸本) だから人ですね。ライブハウスってなかなか皆と契約も出来ひんし、そういうのもないから。

(871) そういう意味でいうと今、30~40分の前振りを話して、そんだけ確認した上で"ライブハウスに大切なのは人やな"ってなるのはむちゃくちゃわかるし、そうやなって思うんすけど、僕多分、いの一番に"人ちゃう?"って言われてたら、いやいや!キャパと会場費、用対効果とかありますやんってなってたかもしれないです(笑)

(岸本) そうやな(笑)だから結局、人で制御できひんキャパまでいっちゃうとシステムやと思うねん。

(871) そうやし、敢えて言いづらいことを面白いので言ってみると、僕そんなにJANISをガンガン抑えないじゃないすか。

(岸本) ああ、そうやね。

(871) それはやっぱり純粋にキャパ欲しいなって思う場面で、JANISを使わないのって優二さんも知ってるじゃないですか。それを多分優二さんなりJANISの皆はわかってて。柳井ちゃんJANIS使ってや!みたいなの全然ないじゃないすか。それを踏まえた上でどういう会場にしていくのか?どういう人達とアーティストとやっていくのか?っていうのもあるから僕、JANIS凄い好きなんですけど。やっぱり会場なんで、魅せる場所として合ってる合ってないとか、お客さんにこの音楽をどういう場所で見てもらうのが良いのかとか、どういう部分で選んでもらうのが良いのかっていうのが、僕はこれがいい・これが悪いじゃなくて、こういう環境に踏まえてどう運用していくのか、プラス人やな、みたいな感じですね。

(岸本) そうだね。でもライブやから、どんなに人が良くても見栄えとか場所とかキャパとか大事やし、俺がめっちゃ言い寄っても、俺がどっか違う島にライブハウス作ったら来にくいやろうし。

(871) 絶対そうですよね。具体的なことは皆までは言えないですけど、正味な話、会場費のバランス、立地のバランス、曜日のバランスとか色んなところ結構緻密にコミュニケーション取ったりとか、やりくりするっていうのがライブハウスの妙やなぁと思ったりします。

(岸本) 確かに。俺は究極、"やってや!"って言うよりは"やりたい!"って言う人を探してる感じ。その為に色んな話して、それならJANISいいんじゃない?とか、それやったらこの会場いいんじゃない?とか、こういうタイミングでここでいいんじゃないっていうのを、"あ、それいいですね"ってなるような方法を作ってるんじゃないかなと思う。やっぱり、"付き合って"って言うより"付き合ってほしい"って言われたいタイプやから。全然関係ない話やけど(笑)

(871) ははは(笑)分かりますよ凄い。俺らと演者の関係もそうやし。例えば俺がオーラルに「昔から俺が一緒にやってんねんから、俺のこと見捨てんなよ」みたいなこと言ってるとしたら、一瞬で辞めたらいいと思うし。僕もメンバーにいて欲しいって言ってもらえるような役割を果たせるようにしたいし。人はもの凄く重要なんですけど、例えば僕が、人は物凄い良いけど全然算数できない人やったらマネージャーとしてできてないやろうし、各々の武器がそれぞれあって。でも僕は楽器一切触れないんで。 

(岸本) 逆に言ったらチームの中に、楽器触れる人入れれるってことやんな。チームの中に算数できる人入れればいいってことやん。

(871) 僕らはそれで済むんですけど、ライブハウスは場所だから揺るがないじゃないすか。お店、っていう中でいうと。勿論スタッフの動きとかで考えると色んなライブハウスがあったり、ライブハウス以外の仕事もしてるって話もあって改めて凄いなあ、それむっちゃ大事やなって思いましたけど、1個のライブハウスっていうところでいうと、ハードウェアはそこまで柔軟にはできないじゃないですか。さいたまスーパーアリーナみたいに倍のキャパにします、みたいなことは出来ないじゃないですか。(笑)

(岸本) 皆が肩車せな無理やな(笑)
維持費もお金かかるからね。

(871) 今は特にもうコロナで訳わかんなくなってしますけど、ハードウェアっていう制限がある中で、それをより面白く、とかより活かせる方法とか考えると、「あの人とあの人仲良いからよくあそこでやってるやんな」みたいなだけになるのは、僕はあんまり好きじゃないっていうか。

(岸本) まあ最低の繋がりはあるやろうけどね、出発地点としてはね。

(871) なかなかお客さん前でもしない話をしましたね。

(岸本) ははは(笑)そうだね(笑)これでもほんま、聞いてる人分かるかな。分からないよね、あんまりね。

(871) でもそういう時はあってもいいかなと僕は思ってるんでくけどね。例えば今の話ってある程度経験値のあるバンドマンとかは、「まぁそうやろなー」みたいな感じで聞けると思うんですけど、ライブハウスに出始めのバンドマンとか、ライブハウスで働こうかどうか悩んでますとか、そういう人達って実はライブハウス作るのいくらかかるかとか興味はあるけど、まだ全然先のことやから質問もしづらい…みたいな話を、バンバン出来るっていうのは良いなって思いますけどね。

(岸本) ライブハウス経営しようって思ってる人がいたら凄いなって思うもん。自分でも思う。まあそれくらい1人じゃ出来ひんなって気持ちもあるけど、やっぱり出発地点はライブハウスでいたいなってのはあるから。

(871) 比べるもんじゃないですけど、レーベルとか事務所とか最近独立してやる人達も出てきてるじゃないっすか。勿論バンドが自分達でっていうパターンもあるし。それって、場所はマンションの1室でもできるんで始めやすいかもしれないですけど、シンプルに印税計算できるのか、著作権登録管理できるのか。そういう僕らの仕事もある種ハードウェア的要素が必要で。「ライブハウスは初期費用かかるからちょっと難しいけど、このバンドと仲良いし、レーベルやったら出来るかな」みたいなのは全然ちゃうよって思ってる気もしてますけどね。

(岸本) そら全然違うんちゃう。今は各自で発信できる時代になってるし、何が難しいのかも分からないぐらいちょっと色んな発信があるから。

(871) 両方あるな。ちょっと勢い余って厳しめ発言もしたけど、どんどん自由になっていくんやろうなって気もしてる。

(岸本) 自由にやってる人もいるからね。

(871) インフラはインフラですんごい便利になっていくんで。

(岸本) やっぱり色んなものが簡単になってきてるんで。音楽もそうだし。だから俺らはCD聴く時代だったけど、CD聴く時代も飛び越えてもっとライトな音楽の聴き方になってきてるし。そこには色んなものが対応せなあかんやろうし。ライブハウスとしてもそう思うし。

(871) いや〜そうっすね。
優二さん、貴重なお話をありがとうございます。

(岸本) いえ!こちらこそありがとうございました。身になったかどうか分かりませんが。

(871) いや、これを残していくっていうのが重要なんで。

(岸本) ありがとうございます。
俺もたまに自分で見てみます(笑)

(871) ははは(笑)恐縮ですほんと。

(岸本) これ、良いお年を、でしょ?

(871) そうですね。本当はRADIO CRAZYで会ってたんですけどね、今日。

(岸本) RADIO CRAZYもお手伝いさせてもらってるんで。

(871) 優二さんもアームの方々も色んなところにいるんでね。また、来年も宜しくお願い致します!

(岸本) こちらこそ!宜しくお願いします!
ありがとうございました!

(871) ありがとうございましたー!


いや〜ちょっと脇汗かいたなぁ。先輩やし。自分もちょっとテンション上がって怒られちゃうかなって思う話も若干してましたけど、こういうわざわざ自分からしない話も良いと思います。よくよく考えたらそうやんなぁとか、実際最近どうなってんのか、とか。裏方さんをお呼びする時はなかなか普段聞けない話を質問したりとか、僕もどこまで話していいのか探りながら喋ってる感じはあるんですけどね。

「柳井さんの周りにライブハウスを作りたい人がいるのですか?」あ、全然そんなことでもないですよ。けど…やろうと思ったらやれるもんだとも思うし、でもコロナの影響でなくなっていくライブハウスもある中で、どれぐらい尊いかとか、実際やるとなったらどれくらい大変なのかとか。なくなっていくばっかりではなくて、ちゃんと続けていけることも大事だし新しいお店もできてほしいし。っていうそんな気持ちもあって話をしてみたっていう感じですけどね。

今年もあと少しですね。今年は皆さん勿論大変だったと思います。年が明けたからって大変なのは変わりはしないですが、でも言っても始まんないので、コロナっていうのを踏まえた上でどういう生活をするか、どうやって楽しい時間を作るか、どうやって人に立つか、どうやって自分の環境だったり自分の好きな環境を守るか、みたいなことを引き続き頑張っていきましょう!

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