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【海のはじまり】人って正解も間違いもないんだな

ドラマ「海のはじまり」最新話観た。たぶん作ってる側の人との思惑とは違った受け止め方をしていると思うのだけど、このドラマを観るたびに

ああ、人ってそれぞれなんだな。それに正解も間違いもないんだな。

と思う。

登場人物それぞれがそれぞれの事情を抱えていて生きている。同じ家族であっても、とても仲良くしている間柄であっても、自分と自分じゃない人の間には「自分じゃない」という壁があって誰にもそこを超えることはできない。気持ちをわかることもできない。決して同化することはない。その自他の隔たりをどう捉えるのかというのをずっと苦手にしていた私にとって、登場人物たちの佇まいが眩しい。

あの中の人たちは、自分と自分以外の間にある壁を尊重しているように見える。相手の選択を否定しない。水季の生き方は側から見ると自分の主張が強く自由で、ちょっと自分勝手。自分がこうだと決めたことを貫いて周りを振り回す。振り回す、というか周りの人間の生活に影響を与える。彼女の生き方が一番他人と自分を切り離しているいい例だけれど、他の人たちもそれぞれ、自分と他人をちゃんと切り離しているように思う。夏も「自分がどうしたいか」ということを一番にしているし、夏の家族もそれぞれの立場で「自分がどうしたいか」で行動しているし、相手に踏み込みすぎることがない。弥生さんも、そして最新話でスポットが当たっていた「つのくん」も。

つのくんが海のめんどうを見ることを「彼の気持ちを利用している」と気にしていた水季に同僚の女性が「いいのよ、彼もやりたくてやってるんだから。ほら、楽しそう」と言う。下心が全くなかったかどうかはわからないけれど、「やりたくてやっている」ということが全てだと思った。そこには自分の気持ちがあって、自分以外がどう思っていて自分以外がどう受け止めているかということは二の次。自分と自分以外の人との間の線が明確にあった。と思う。

つのくんは自分の気持ちに正直で、今回弥生さんにも嫌味な感じだったけれど、弥生さんがそれを真正面から受け止めて反撃していたのがとてもよかった。弥生さんは立派な社会人なのでビジネスの場ではきっと色々と真正面から捉えずに受け流すこともあるんだろうけれど、つのくんのことは夏とのことを全て受け入れる覚悟ができているから自分の人生の一部としてしっかり受け止めているんだろうな。

つのくんはこれからのことをどうしていくんだろう。今回のお話では彼の水季との関わりと彼が受けた悲しみに胸が抉られた。それにしても水季が亡くなった時の描き方に度肝を抜かれた。つのくんが携帯の連絡を受ける前から様子が変で、なかなか電話に出ず、そして出る。たったあの10数秒の情景で何が起こっているか完璧にわかったし、その悲しみがビンビンに伝わってきた。あのシーン、すごい。

突然だけれども、ある時期自分は善悪とはなんだろう?と考えたことがある。そこで思い至ったのは

善とは生きること
悪とは人の善を邪魔すること

ということだった。人はどんな場所で環境であっても生まれてきたら「生きる」ことをする。例外なく。人間に共通することはこれたった一つだと思う。だから「生きる」ことこそが善。それしかないように思う。そして悪とは自分以外の人の生きることを邪魔したり生きることを止めさせたりすることだと思う。だって、生きることが善なのだから、それをさせないことが悪。

最初にタイトルに書いた「人には正解も間違いもない」というのはこれの前提に立っている。善悪の判断ができる人においては、その人のどんな選択もそこに正解も間違いもなくて、それはその人のしたいようにして生きたいように生きればいいのだと思う。このドラマの登場人物たちのように、奔放に見える水季の人生のポイントポイントにおける選択全てが、正解でも間違いでもなくて、ただ単にそれが彼女の人生だっていうお話。それによって誰かの人生に影響があるだろうけど、それはその影響を受けた人がどう受け止めてどう過ごしていくか、その人の人生のお話。自分と自分じゃない人との間の壁を意識できるかどうかというのは自分の生き方を建設的にするために大切なスキルだと思う。自分がそこがとても苦手だから痛切にそう思う。

Xでどなたかが呟いていた「このドラマは文学だ」というの、本当に同感する。登場人物それぞれの思いや心の揺れ動き、それに伴って少しづつ進んでいくお話。何かが解決されていくとかではなくて、流れいてく人々の生きている時間。美しい文学を見せてもらっていると思う。

はぁ。相変わらずバラバラな内容になってしまった。最新話観てタイトルつけた時はそこを中心に書こうと思ったけどどうしてもあっちこっち行ってしまう。海のはじまり、これからどう進んでいくんだろう。展開が読めないだけに皆さんがどう生活を進めていくのか次を見せてもらうのがとても楽しみです。

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