*熊さんとご隠居のある朝 *
*熊さんとご隠居のある朝 * (落語風つぶやき物語)
熊 「おはようございます!ご隠居」
ご隠居「おっ熊さん、こりゃまた今日はバカに早いねぇ。仕事かい?」
熊「いや、ご隠居に聴きてぃことがあって来たんでさっ」
ご「そうかいそうかい、私でわかる事ならなんでも応えましょう」
熊「さすがご隠居、話が早いや~。」
ご「んで何だい?」
熊「え~っと、あれ?何だっけねぇ」
ご「オイオイ!それを聴かれてもわかりませんよ」
熊「そりゃそうだ。、、、、おっと、思い出した!おいらバカだからよ、
わかんね~事だらけなんだが。人生それでも良いのかなってな事、
思ったわけでさ~」
ご「おお~、人生と来たか。随分とむつかしい事を考えなすったね。
わからないと知る事ができるだけでも、たいしたものですよ」
熊「あ~?」
ご「誉めているんです」
熊「そうですか、ありがとうございます」
ご「日頃、ボーっとすごしていると、何が解らないかも、わらないですからね」
熊「はぁ~、いや、そうなんです。考えれば考えるほど、何がなんだかね。
かみさんに言ったら、バカがいくら考えても、御まんまのたしにゃ~ならないよ。
てぇ~わけで、そんでも人様の役にたつ事やってんだ。あんた~りっぱだよってね。これって誉められてんだか。貶されてんだか」
ご「おやおや、お惚気聞かせに来たのかい」
熊「とんでもねぇ!」
ご「なんでも解らないと思ったら、いつでも聞いてきなさい。
私で駄目なら、横丁の八軒長屋に学者先生が越してきて、寺子屋はじめるそうだ。その先生のお知恵を借りればいいことです」
熊「おっ!学者先生っときたね。いいね~」
ご「熊さんは偉いね」
熊「おっ、また誉められて、こりゃ後で飲み屋の”おたま”で濁酒でも買って、お持ちしなきゃ~いけね~な。つけ貯まってんだけど、ご隠居に飲んで
いただくって言えば何とかならぁ」
ご「何を言ってるんですか。人様にかこつけて飲むのはいけません。
だいたい私は下戸ですよ。またおかみさんに叱られるでしょう。
せっかく人が誉めてあげようと言うのに、黙って聞かなきゃいけません」
熊「いけねっ!御隠居はお見通しだ。はい、黙ってます」
ご「何事も向上心というのが大切だと言いたかったんですよ」
熊「なんです?そのこーじょーしんてのは」
ご「人様と比べてじゃ~なくて、自分らしくがんばるっていうかな、
好奇心や興味をもって、何でも知ろうとする心と行動ですかな」
熊「ふ~ん、そりゃ偉いな。どちらさんで?」
ご「熊さんのことでしょう」
熊「はぁ~?好奇心はあるよ!これはもう毎日、好奇心の塊で仕事なんかしてらんねぇ~もんな」
ご「これこれ!ところで熊さんの好奇心というのは何かね」
熊「いやぁ~、おてんとさまとお月さんの事でさ」
ご「ほ~、これまたすごいことになったね。こりゃ」
熊「あ、そうなんすか?毎日あっちから出て、海に沈んじまうのに、
いったい幾つあるんだろって。たくさんあるんだったら、なんで毎日1こっつなんでしょうねぇ」
ご「それは私にも答えられる」
熊「さすがご隠居!俺も目が高いねぇ」
ご「黙ってお聞きなさい」
熊「はいはい!」
ご「もともと、おてんとうさまも月も1個ずつなんですよ」
熊「そりゃおかしい、だって毎日海に落ちてるんだ。
いくら俺がバカだからって、見りゃわかる」
ご「黙って聞かないのなら、もう答えませんよ」
熊「いけねぇ!そうだった。で?」
ご「熊さんの立っている大地の周りを毎日クルクル回っているんだよ」
熊「そりゃ本当かい?大変だねー。んで、おてんとさまも目が回って、
さぼって雲出したり、雨降らせたりしてんだなこりゃ。
月なんざ、ついてけねってんで、たまに夜にさぼって出てきやがらねぇ。
真っ暗な夜があるけどありゃ、め~わくだね」
ご「さぼっている訳じゃあない。本当かどうかは学者先生に聞いてみなきゃ
ならないけど、まぁ、見てればそんなところだな」
熊「御隠居は見ているだけで、そんな事までわかるのかね。さすがだね。
やっぱり一杯やりたいもんだね」
ご「これこれ!明日にでも学者先生のところに私と行きましょう」
熊「ありがてぇ!何か、わくわくしますね。こりゃ今日一日仕事が手につかねえな」
ご「それはいけません。仕事をしっかりやってと言う約束で。
ほっほほっ!熊さんを見かけると仕事の話しでは月並みですな」
熊「あいてっ!こりゃ一本取られたね。月も日替わり忙しいって!」
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