太鼓の達人楽曲公募2021 採用曲をレビューする


先日レビューを書いた「太鼓の達人世界大会課題曲公募2021」ですが、本日ついにその審査結果が公式発表されました。


採用曲をひととおり眺めると、私が先のレビュー記事で挙げた曲もあれば挙げられなかった曲、盲点だったも多く採用されていました。改めて審査員による講評を通して各楽曲を見てみると、これまで気付かなかった様々な注目ポイントや魅力も明らかになり、私個人が聴いた時のそれとは大きく異なる感想も浮かんできました。

したがって、今回はその採用曲を1曲ずつ振り返って、各楽曲の魅力をもう一度見出していきたいと思います。


採用曲

・エントリーNO. 101125 Challengers/まるろん

先日のレビューで私が気に入った曲として挙げた曲のひとつである。個人的にトップクラスでお気に入りの曲でもあったので、1曲目にこの曲が目に入ったときはとても嬉しくなった。

エトウさんはこの曲について「光と影のように相反するものが複雑に組み合わさり混ざり合ったもの」というように表現している。私は改めて「相反するものは何か?」という観点からこの曲を聴いてみた。

なるほど…と思った。背筋も凍るような緊張感と心も躍るような熱さ、すっきりとした清々しさとリズムの不安定感…こうしたグラデーションのような複雑さ、まさに決戦の場に挑む時のような感情がこの曲にはこもっているように感じた。「エモい」の一言で終わらせてはいられないな…自分の語彙力の低さに問題意識を感じた瞬間でもあった。

実際の譜面内容も、どのような演奏体験になるかもとても楽しみです。


・エントリーNO. 101127 Aloft in the wind/Qutabire

再生ボタンを押して最初の数秒で魅了されたと同時に、全曲を聴いて回ったわけではなかったためにこの曲と出会わずに今日まで来た自分を恥じることとなった。爽やかな8分の6拍子の民族音楽的サウンドと思いきや、途中のEDMな場面に驚かされたりとゲーム的な展開も豊富で、ちょっとしたストーリーゲームのようでもあった。

太鼓で奏でる物語は、より一層感動的になることだろう。


エントリーNO. 101221 Hello, Worldooon!!/Capchii feat. Kuroa*

この曲もレビューでブッ刺さり曲として挙げた作品であった。採用を知ってとても喜んだ。

steμさんやCapchiiさん御本人も語られたようにジャズにハウスにハードコアに…と音ゲーのミュージックをひとつの曲に盛り合わせたバラエティセット。しかもそれがしっかりとキャッチーなメロディとリズムにまとまっている。まさに"聴いて味わうハッピーセット"である。この曲を聴きながら食べるハンバーガーはきっと美味い(ゲーセンでハンバーガーを食べるのはやめよう)

それに歌詞やボーカルも本当に良い………国も時も越えてこれからも広く長く愛されるであろう太鼓の達人の未来を描くのにうってつけな歌でもある。

世界大会のみならず、それ以後も長く愛される曲であってほしいと私も願っている。


エントリーNO. 101244 アンリミテッドゲームズ/Ponchi♪ feat.はぁち

太鼓チームの方々と私の思いが強く一致した結果であった。言うことは無い、この曲こそ世界大会という戦いに相応しいと信じていた。

かつて全国トップクラスのドンだーとして名を馳せたPonchi♪さん。「ツンデレCafeへようこそ☆」「承認欲Q」のボーカルという形で戦いに挑むドンだーの皆に寄り添ってきたはぁちさん。そんなお二方の背景もあって、この曲はまるで2021年この大会に挑むドンだーへの挑戦状のようだ。


エントリーNO. 101286 燃えよサファイア/庭師

この曲も先日挙げた作品のひとつである。

いつ聴いても、目まぐるしく展開するアツいピアノのメロディにお熱。まさに燃えるサファイア。

かなり変則的なリズムであるので、どんな譜面になりどのようにして我々ドンだーを惑わしてくるかがとても楽しみ。


エントリーNO.101338 弧/概念

「弧」とは「円」の一部。いくつもの「弧」が繋がり「円」となる。言い得て妙である。

ピアノとドラムのリズムからは、フルコンボを目指すのに手応えのある、手強い複合譜面が思い浮かんでくる。

難しくて繋がらない複合を数々攻略してフルコンボへと至る…この曲によって完成する「円」はまるで一つの物語のようでもある。


エントリーNO. 101361 仮想現実のテレスコープ/deli.

先日紹介した「ウラニアの奏」と同じ作曲者の方の作品である。同じ作者の作品なだけに、この曲と「ウラニアの奏」どちらを紹介するか迷ったこともあった。

8bit風シンセやピアノの切なさとギターサウンドの激しさの対比もとても良い…世界大会の雰囲気ともマッチするのがとてもよく伝わってきた。


エントリーNO. 101370 punk bastards/Sobrem

メタル風のバンドサウンドの中にいきなり登場するブラス、ハイスピードで駆け抜けるドラムのリズムが特徴的。おちゃらけてるけどアツくてしっかりカッコいい。男子だったら絶対モテてるな。

ドラムに合わせて太鼓の音を刻むのがめちゃくちゃ爽快で楽しそう。プレイできるのが待ち遠しい。

エントリーNO. 101376 Emma/BlackY feat. Risa Yuzuki

「螺旋周回軌道」に続いて、今回もまた魅せてくれたBlackY feat. Risa Yuzuki。

最初の最初から曲の荘厳さに圧倒される…!と思ってたらBPM350を超えるであろう圧倒的疾走感に翻弄され、トラップのように潜む変則リズムに足を取られ、Risa Yuzukiさんの歌声やオーケストラ風ハードコアサウンドに包まれながら高速難譜面に立ち向かう……まるでボス戦のような世界観だ。ゲームの敵は強ければ強いほど燃えてくるものだ。この曲に挑むドンだーの皆もきっと同じかもしれない。


エントリーNO. 101430 Hello, Mr.JOKER/打打だいず

前回の太鼓公募で「星河一天」が採用されて以来、様々な場面で活躍されるようになった打打だいずさん。

今回は前回と打って変わってクールでテクニカルなサウンドとリズムながらも、全体として打打だいずさんらしいポップでキャッチーでエモーショナルな曲になっている。

自然に曲へ耳を澄ませてしまうような魅了能力をこの曲は持っているように思う。きっと譜面もめちゃくちゃにテクニカルな配置で我々を魅了してくる(粘着させる)に違いないな。


エントリーNO. 101432 晨星ト鵺/Silentroom

steμさんもおっしゃられるように、分かりやすく楽しいメロディが魅力的。曲名通りの和風感も相まって、多くの国で多くの人から愛されるメロディになりそうだ。

それに合わせて譜面もふつふつと頭の中に浮かんできて、「あぁ、太鼓の達人に相応しいってこういうことなんだなぁ」と実感させられる。エレクトロ系の楽曲は今回の応募でも多かったが、中でもこの曲はすごいなぁと思う。この曲も、もっと早く出会いたかった曲のひとつ。


エントリーNO. 101440 Player's High/K.key

曲名に違わぬ明るさと楽しさを曲全体に纏っており、何かと暗くなりがちな近頃の世界も明るく光りだしそうな、そんな雰囲気をしている。この曲を通して世界大会も明るく楽しいものになる、そう確信している。

同じくK.keyさんによる前回の世界大会課題曲の「Gloria」は、決勝戦を感動で華やかに彩ってくれた。この曲もまたプレイする者・見守る者の心を震わせることだろうなぁと思うと、今からとても楽しみである。


全体的な感想、まとめ

今回の公募も前回に負けない多くの魅力的な楽曲がめでたく採用された一方で、残念ながらあと一歩採用に至らなかった楽曲も多かった。

私が個人的に気に入ってレビューにも挙げた曲にしても、「惜しくも採用に至らなかった」ものも少なくなかった。「同じ星空の下で」「天穹のアルカナビット」等は絶対!と思ってたし、「hogehogeneration」や「ふぃずまき・ふぃえすた」でも惑わされたかった。

しかし、この公募は「音楽ゲーム・太鼓の達人に収録される曲を決める公募」であり、「ハイクオリティで多くの人から支持される楽曲」が必ずしも「太鼓の達人のプレイ楽曲として相応しい楽曲」「世界大会という場に相応しい楽曲」とも言えない。

全体的に講評を眺める限り、公募採用の決め手として重要なのは「最後まで飽きさせないような楽曲構成・展開」「実際に太鼓の達人に収録され、プレイされることまで考慮されている」「+αでリスナーやプレイヤーを惹きつける"何か"を持っている」…等が挙げられるかもしれない。私もまたコンポーザーの卵としてこれから作曲を始めようとしているところであるので、今後太鼓の達人の楽曲公募に挑戦する際にはこのような点は是非とも参考にしたいと思う。

それにしても採用楽曲の中には自分が聴き逃した曲も少なくなかったというのは、反省したいと言うか、もっと視野を広げて時間をかければ沢山の名曲と出会えたなぁと思っている。これからも広い目と耳で色々な音楽を聴いて回っていきたい。いかなくちゃ。



最後に、楽曲を応募された全てのクリエイターの皆様へのリスペクト、見事楽曲採用や佳作・準佳作の評を貰われた方々への祝福、そして「音楽や音楽ゲームを扱うプロ」として厳しい目で審査し採用楽曲を選考して下さった太鼓チームの方々への大いなる敬意や労いをここに表して、本記事の〆とさせて頂きます。

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