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『ツシマ』キャストQ&A: ゆな役スマリー・モンタノ編 抄訳

日本時間で2020年11月15日、ダイスケ・ツジとアール・キムの合同配信において、『ゴースト・オブ・ツシマ』ゆな役スマリー・モンタノへのインタビューが行われた。『ツシマ』キャスト陣はゲームのリリース後もそれぞれ映像、演劇、ゲーム等の分野で活躍を続けているわけだが、IMDbページの動きがひときわ激しいのは、間違いなく彼女だろう。『ツシマ』後に絞ってもAAAゲームや人気カートゥーンの数々、ドラマ版『ロスト・シンボル』のサトウ・イノエ役など出演作が目白押し。その上長編映画の初プロデュースも手がけることになったというから、まさに破竹の勢いである。本インタビューも自然、スマリーのエネルギッシュさが随所に滲む内容になっていた。以下はその抜粋訳。実際の動画のアーカイブはこちら



◆オーディション時の思い出

E: 今日はみんな知っての通り、『ゴースト・オブ・ツシマ』でゆなを演じてるスマリーがゲストです! まず時間を割いてくれて、本当にありがとう。忙しくてしょうがないところなのに。

S: ううん、ふたりに会えて嬉しい。

E: 僕も嬉しい! さて、じゃあ最初は『ゴースト』出演に至るまでの道のりがどこから始まったか聞かせてもらえれば。もちろん話せない部分もあると思うけど。

S: そのへんはうまく迂回しながら話していこうかな。最初はまず、みんなそうだったようにオーディションから。 全身黒のスーツ着たモーションキャプチャーのオーディションだったから、自分の出来栄えはよくわからなかったんだけど、(キャスティング・ディレクターの)アイヴィー・アイゼンバーグがすごい人で! 彼女は自分が求めるものをしっかり把握しながら、ディレクションをくれる。キャスティング・ディレクターとして本当に──

E: アイヴィー、僕も大好き! ゲストを呼ぶたび、彼女のことに触れてるくらいだよ。みんなお世話になってるからね。アイヴィー大好きだよー! あなたは最高でーす!(笑)

(※アイヴィー・アイゼンバーグは、ビデオゲーム中心に活躍中のキャスティング・ディレクター。自身も演劇学校出身で、パンデミック前には米国、英国の舞台を見て回っては人材ハントに勤しんでいたという。ツジ氏も『ツシマ』はもちろん、『Call of Duty: Black Ops 4』や『ラブ、デス&ロボット』の仕事を彼女経由で受けていた)

S: キャスティング・ディレクターって相応の愛情を寄せてもらって当然なのに、実際にはそうでもなかったりするのよね。そのアイヴィーが、ありがたくも私に見所があるとみてオーディションに呼んでくれたんだけど、以来長いこと連絡がなくって。もう完全に音信不通。まあ俳優はちょっと連絡がないともう気に留めなくなるけど──

E: うん、脳裏から消えるよね。次のオーディションがあったりするからなんだけど、気にするだけ労力の無駄だから(笑)

S: そう、電話鳴らないかなーって待ってたりしても、そのうちあきらめる。気持ちを切り替えて、次に行くものね。でもその後突然、コールバックの連絡があったの。しかも、ダイスと直接顔を合わせてのコールバック。オーディションのごく初期の段階で言われたものだから、はい!? ってなって(笑)、慌てて台本を引っ張り出したんだった。捨ててなくて本当に良かった! 私、オーディションで使った台本は全部とっておいてあるの。

E: 僕もー! バインダーに綴じてある(笑)

S: 最後はシュレッダーにかけちゃうんだけど、何ヶ月かはとっておくことにしてる。だって私のビデオゲームでの初仕事って、オーディション受けてから1年が経過した後に出演が決まったから。1年も後に!

E: えー! 僕が聞いた中では最長記録だなぁ。

S: またそんなことがあった場合を考えると、台本に書きつけておいたメモを失くすわけにもいかなくて。キャラクターに関するメモとかそういうのね。で、その内容を夢中で見返しておさらいしながら、頭をリフレッシュしたり、セリフをさらったり、演技プランを練ったりしてた。それから、ダイスとのコールバックに臨んだんだけど──本当にね、ダイスのおかげで決まったようなものなの。あのコールバックは何か、本当に魔法みたいで。私にとってはそう。

D: だったねぇ。

S: オーディションで自分なりの仕事をしても、どういう受け取り方をされるかはわからなかったりするじゃない。でもこの時は、演技力がずば抜けてるだけじゃなく、度量も広い俳優が相手役として入ってくれることになったわけ。ダイスのお芝居を受けて演技するって──それだけでもいい経験だし、オーディションでそこまで来れたこと自体も快挙なのに、その上ダイスも本当に良くしてくれて。私の演技もベタ褒めしてくれたし。

D: (笑)

S: その後ネイト(・フォックス、クリエイティブ・ディレクター)だったかな、「ダイスってね、誰にでもこういうこと言う人じゃないんだよ」とも言ってもらえて。「えっ……」ってなったんだけど、表面上は「そうですか。良かった、ありがとうございます」って平静を装ってた。でも心の中じゃこう、(両手を振り上げてのけぞり)「イェ〜〜イ!!」

E: (笑)

D: (笑)そっち目線でどうだったかわからないけど、スマリーのオーディションはとくに記憶に残りやすかったんだよね。当日は最初サウンドステージにいたんだけど、他の人たちが使うってことで、僕らは小さいブース──みんなもよく知ってるブースね。全員あの中でボイスオーバーの収録したから。小さいって言っても普通の部屋ぐらいで、サウンドステージに比べれば小さい程度。そっちに移動して、オーディションしてたんだよ。照明も暗めで、いつもと違う感じではあったんだけど。候補者は2、3人いて、スマリーは大トリだった。そこで場外ホームラン級の演技をやってのけてくれて。

S: そうだったんだー。

E: そっかー。今スマリーが言ったことの繰り返しになるかもけど、僕も同じような経験したと思う。即興でダイスと一緒のシーンを演じたわけだけど、ダイスって本当に懐の深いシーンパートナーで、一緒に芝居するのが楽しくて仕方なくなるんだよ。

S: (うんうん頷きながら)そうそう。

E: 即座に、しかも深いレベルで共演できる感じ。安心して自分を預けきれるって意味でね。ダイスが並じゃないのってそういう、人のいいところを引き出せる点だと思う。人をホッとさせて、ベストの演技がやれるぞって気にさせてくれるっていうかね。だってあの即興演技を一緒にやってなかったら、いま僕らこの場にいないし。

S: そこは完全に同感。ダイスってとにかくプロだもの。

D: (くすぐったいのを我慢しているような顔で聞いていたツジ氏、本格的にくすぐったい顔に)え、ありがと。

S: 俳優として、そういう感覚ってある。完全に役に入ってる俳優と共演すると、自分もその世界に引きずりこまれて、相手と心の深いところで繋がるような感覚──「ケミストリー」って言葉は使いたくないけど、それってキャラクターには必要なものだし。だから、あのコールバックだけでも素晴らしく良い経験だった。

D: ネイトもそうだけど、とくに僕は自分も役者だから、そのへんはけっこう意識的にやってた。他の皆のコールバックに参加できて嬉しかったし、楽しくもあったんだけど、オーディション受ける側の時は僕も緊張しまくる方だからさ。楽な気持ちで、ベストの芝居をしてもらうために出来ることがあるなら、やっておきたかったんだよね。ネイトなんか肩肘張ったとこがない人だから、そういう雰囲気づくりもかなり上手くやるんだけど、僕としてはそこで自分も何か手助けできたらな、って気持ちだった。それが良かったのかな。

E: うん、まったく。共演相手を務める醍醐味って、相手に集中しきって役に入り込むとこで、ってまたダイスのすごさを熱く語るだけになっちゃうかな。とにかくいいシーンパートナーでいてくれて、ありがとねダイス(笑)

S: 本当にそう。

D: ありがとう(笑)



◆トム・セレックがくれた言葉と『ツシマ』の現場

D: スマリー、この話と関連してシェアしてくれたことがあったよね。誰だっけ、クリストファー・ゲストだった? 共演した俳優の言葉を教えてくれたでしょ。「他人を良く見せれば、自分も良く見える」っていう言葉。あれ聞いたのってスマリーからだったっけ。誰かと間違ってるかな(笑)。確か君だったはず。

S: そうそう。あの言葉はね、トム・セレックが言ってたことなの。

E: あのセクシーヒゲNo.1の(笑)

D: あ、トムだったかぁ(笑)

S: 『ブルーブラッド 〜NYPD家族の絆〜』にゲスト出演した時の話。ゲスト出演ってよそのおうちにお邪魔するような感じがあるでしょ。その時の私はアジア系の警部補役。昇進したてなんだけど、白人の警官たちから逆差別だとやっかまれてる設定。アジア系、しかも女性に先を越された、ってことでね。撮影がトムと共演する大事なシーンにさしかかったところで──ゲストスターで参加する時って、脚本上自分のやれる限りのことをやりたくなるけど、レギュラー出演者に失礼なこともしたくないじゃない。せっかくトム・セレックと共演するんなら、どーんと一発かましてやっか! みたいなことにはならないわけだし(笑)

D: (笑)

S: でもトムは本当にこちらの気持ちを汲んでくれる人で、「いや、君を見てればわかる。このシーンは時間をとって作り込んだ方がいいという直感があるんだろう。演技の間は好きなだけとってくれていいから」って。私は「え!? い、いいんですか!?」ってなってしまって(笑)

E: な、なんだとぉー。テレビの人が「もっと時間をかけていい」とか言い出すだとぉー!?(笑)

S: そうなの!! トムってすごくプロフェッショナルで、優しくて。私をまっすぐ、真剣そのものの目で見ながら「いいかい、君が良く見えるほど、私も良く見えるんだよ」って言ってくれた。それからも色々、とにかく「最高の芝居をして欲しいから、時間をかけてくれていい」って後押ししてくれて、本当にありがたかった。で、『ゴースト』の話に戻ると、撮影プロセスを通じて好きでたまらなかった点もまさにそこ。他のキャストも言ってることだろうけれど、ネイトやクリエイティブ・チームの皆さんって、とにかく自分の直感に忠実に、自分が一番しっくり来るようにやってくれって、私たち役者の背中を押してくれたじゃない。そんな現場、いつもあるわけじゃないから。

E: いつもというか、普通はないよね。だいたいは「オーケー、じゃあ2、3テイクで頼むね。あ、ホン読みで見本見せた方が早いかな」とか言われて(ちょっと死んだ目で)「あ、はーい、わかりましたぁ……」ってなるから。

S:(頷きを繰り返しつつ)ああいう形での共同作業って本当にユニーク。得難い経験をさせてもらったからこそ、私たち役者側もこんなに『ゴースト』に惚れ込んでるんだと思う。

E: まさにそう。

D: だね。

S: しかもね!? 何度か撮影して、みんなが納得するようないいテイクが撮れた後でも、まだやらせてもらえたりするのよ!?(大興奮)

E: そうそう、多分みんなそれ経験してると思うー(笑)

S: まだやっていいの!? 共同作業で精魂込めてともに作り上げた、演技面にしろ、シネマトグラフィー面にしろ、全関係者がそれぞれの観点から満足いくテイクがもう出来てるっていうのに──(ひと呼吸おいて)もう1テイクやらせてもらえるなんて!!

D: (笑)

E: 願ってもない話だよねー。本当に願ってもない。つくづく思うんだけど、変な話、僕は今後ずっと『ゴースト』での撮影プロセスを他と比べ続けるような気がする。(遠い目になり)「いやね……昔、とあるプロジェクトがあってね……」って。

S: (のけぞって大爆笑)

E: 「役者の言うことにちゃんと耳を貸してくれて、脚本家からも確認の質問してくれて。しかも役者がノーを言えたりもするプロジェクトなんだよ。素敵な現場だったぁ……」(笑)

D:(笑)

S: そうそう。ゆなの登場シーンにしたってそうで──

E: 待って!! そのシーンなら流す準備できてるから、一緒に観てから話さない?

S: うん、いいよいいよ。

D: 観よう観よう。



◆ゆなの登場シーン

(ゆながか弱い庶民のふりで泣き真似をしながら、蒙古兵を不意討ちにする登場シーンが流れる)

E: カッコいいなー。ゲームのキャラ紹介としては最高の部類に入るシーンだよね。「うぉっしゃーー!!」的にスカッとするし(笑)

S: (笑)私も大好き。こんなシーンやらせてもらえて、感謝でいっぱい。肝が据わった態度からの「やめてぇ〜〜」への切り替わりがね(笑)。このシーンも、ダイスとコールバックでやったうちのひとつだったはず。

D: うんうん。

S: このシーンの撮影中、もの作りのプロセスがどんな風に繰り広げられてたかっていう話に戻ると、まず私たちがやってみせたものにネイトが色々提案をくれて、私たちからも提案を返したりして、一緒にシーンを形にしていった。いいテイクが撮れて、みんな満足してたんだけど、変な話、私が刺すところで──彼の名前なんだっけ? スタン? デヴィッド? あ、ううん、やっぱりダミーだったと思う。

E: (笑)

S: ダミーを刺すところで私は4回、思いっきり刺してたのね。「うあぁ!」ってありったけの怒りをこめて。でも、その後──「もう1回いい? 今のはやりすぎだった気がする」ってお願いした私に、ネイトはとっても優しかった。「4回は多かった、3回で十分だと思う」って言ったら、「いいよ、やってみよう」と快諾してくれたの。

ただし実際使われたのは、4回刺すテイク。ゲームの発売後、人気配信者が同シーンを見ながら「ゆな! もういいって、もう死んでるって!」と、撮影当時のスマリーが思っていたことをそのまま言っていたのを見て、笑ってしまったそうである。



◆「仁ゆな」で思うこと

D: さて……あえて避けてた話題にも触れとく? 何て言うやつなのかもわかってないんだけどさ、詳しくないから。

S: え、気になる。あえて避けてた話題って?

D: 知りたがってる人もいるみたいなんだよね。前も話した、ほら。「仁ゆな」? とかいうやつ。

E: おおーー!!(笑)

S: (笑)

E: はい皆さんいいですかー、ここで大問題に斬り込みますよ! 話題は「仁ゆな」です!

S: 絶対誰かにそう訊くよう仕向けたでしょ(笑)

E: いやいや、違うよ。きっちり対処して、はっきりさせとこ! コミュニティ内の大問題なんだから。「ジュナ(仁ゆな)」シッピングはあり?

D: 知らなかった、「ジュナ」って言い方あるんだ。

E: うん。ほら、「ブランジェリーナ(ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーを合わせた造語)」とかあったでしょ。

D: なるほど。

E: という噂が出てるわけだけど、あなたはジュナ派? それとも反ジュナ派? あるいはジュナ中立派? お考えをどうぞ〜。(両手を開いて催促)

S: ……あ、私に訊いてた?(笑)

D: スマリーは今日のゲストでしょ!(笑)

E: (笑)そうだよ! ジュナの当事者に訊いてるの! (と、ツジ氏とスマリーの双方を示して)

S: ダイスが言い出したんだからそっちで話してよー(笑)

E: だから両方に訊いてるんだってー。

S: 言い出したのダイスなのに!(笑)

D: ここはゲストが先でしょ、僕は好奇心で言ってみただけ。僕にも一応考えはあるけど。

S: わかった。……一般的にシッピングって、とっても楽しいものではあるよね。ダメってことはないでしょ? シップしたければすればいい。全然。プレイヤーとしても受け手としても、ゲームの体験に上乗せして楽しむ要素なのかなと思ってる。で、ここからは私の個人的な見方ね。他の人にまでどうこう言う話ではなくて──どこで身についた癖なのかわからないんだけど、ティーンエイジャーの頃からのことで、多分私が、誰にも関わって欲しくないレベルで社会性に乏しいタイプだったせいだと思う。何かを観てて、ロマンチックなシーンが始まると「やめてよもー! こっちはストーリーだけ観たいのに!」ってなるの。「キスとかいらないでしょ、アクションシーンに戻って!!」って(笑)

E: (手を叩いて爆笑)

D: 「そっちのアクションじゃなくて、殺す方のアクションー!」(笑)

E: 「真のアクションよこせ!」(笑)

S: 夫と映画観てたりしても、いいシーンなのにいきなりキスが始まると「あーー!! だからなんでキスで台無しにするかなぁ!!」って(笑)

E: スマリー、アロマンティックだった(笑)。今明らかに(笑)

S: (笑)なんでこうなったのか、自分でも全然わかんなくって。いいラブストーリーの良さもわからない、とかではないんだけどね。ただ何か観てると、恋愛要素を邪魔に感じてしまう時があるみたいで。それに……やっぱりよくわからない。でもとにかく、私個人の見方としてはそう。

D: 僕もストーリーの観点からは、完全にスマリーに同意。無理矢理な恋愛要素ってたくさんあるけど、本当にワケわかんないし、鑑賞する側の体験をムダに損なうだけだよね。でも、自分でゲームをプレイして、ゆなとのシーンを見たらビックリしたんだよ──脚本に書かれてた範囲では、ふたりの間には敬愛の念とか、同じ側で戦ってる仲間意識以上のものはなかったはず。ゆなの元カレに出くわした時のほのかなジェラシー描写なんかもあったりはしたけどね。それなのに、シーンを見ると(いい雰囲気になっていて)驚いた。僕とスマリーの芝居にSucker Punch側が何かキャラ解釈を追加したのかなって思ったくらい(笑)、とくに──

S: (爆笑)

D: って思っただけ! 実際そうともとれる芝居になってたのかな?

S: Sucker Punchがプログラムしたのかもよ、ウィンクとか(実演)。

D: (ウィンクを真似して笑い)

E: でも実際、僕らの顔や体に色々と盛ったり何だりはしてるわけだから、そうだったとしてもおかしくはないな(笑)

S: そういう味付けを後から足すって、あると思う?

D: 実際はないんじゃないかな、と思うけどね。

S: 私、プレイ動画を見始めたばっかりで、全部のシーンはまだ見てないものだから。

E: それかダイスが、自分の芝居にのせてた要素に自覚がないだけかもよ〜?

S: うんうん(笑)

E: 自分のパフォーマンスにどれだけのものが反映されてしまっていたかを(笑)

D: (笑)うーん、というより、憧れに近い気持ちならあったかもしれないけどね。とくに──あ。終わり近くの、一緒に「座る」シーン。ふたりの距離が一番近づいたのはあのシーンでしょ、「一緒にいてくれ」の。

E: 酒盛りするとこ?

D: いや、鑓川のじゃなくて、終わり近く。ハーンとの決戦前のシーンだね。この後もしかして死ぬかもっていうタイミング。ありうるかもしれない死を目前にしたら、もちろんそれまで以上に親密になったり、感情的になったりはアリだと思うよ。後から付け加わった要素なのか、芝居してる最中は気づかなかっただけなのかはわからないけど、見てみたらそういう風にもとれるな、と。でもああいう形になって良かったし、仁とゆなが仲間以上の関係になっても別に気にしないかな。仁はあんな広大な対馬をずっとひとりで馬で駆けめぐっててさ、オープンワールドゲームだから「後で落ち会おう」とか言われてばかりだけど、リアルの世界だったら「いやーこれだけ長い時間、一緒に過ごしてきたんだしさ、次はふたりでキャンプファイアでも囲まない?」くらいは思うもん。

E: 「どっかあったかいとこ行こうよ。俺んちとか? 家族もつのもいいんじゃないかな」って?

D: そうそう。

S: 一理ある(笑)

E:(ゆな目線で)「いーや、あんたは一生、あの荒れ果てた掘っ立て小屋で折り紙でも折ってな」

D: 折り紙折ってか(笑)、……「でもさ、蒙古との戦いの最中であっても、たまには食事したりとか、"あったかく"なったりとかも必要じゃ? 意味伝わってる? 伝わってるぅ?(ウィンク)」(笑)

E: 仁、ホームレスにはなりたくないみたいだな(笑)

S: でもいい指摘。キャラクターの人生にもバランスってあるもの。そのバランスの片方は、キャラクターとしては掘り下げてなかった私生活の部分になるんでしょうし。それは勿論、必ずしも私たちの関係じゃなくたっていいわけだけどね。イベントシーンを見てみたら、実際に演じた時以上に含みのある描写になってた話が聞けて嬉しい。俳優にとってはよくあることで──撮影中に自分なりのイメージがあっても、編集や描かれ方によっては微妙に違う仕上がりになってたりするでしょ。でも映画作りの魔力ってそういうものだから、いいことだと思う。

E: うん、ゲーム作りでもそうだね。

S: ゲーム作りだった。何かね、この作品は映画作りみたいな気がして仕方なくて。すべてにおいて規模の大きい、壮大なプロジェクトだったから。



◆恒例: ビリーの質問

アニメーション監督のビリー・ハーパーが撮影現場でよく訊いていたことから「ビリーの質問」と呼ばれるようになったこの質問の内容は、「開発チームにやらされた一番ヘンなことは何?」というもの。

S: 一番ヘンなこと? うーん別に……あっ。一番ヘンって言ったら、フェイススキャンを撮りに行った時。このゲームのモーションキャプチャーとフェイスキャプチャーって、ものすごく念入りだったでしょ。他のゲームだとスキャン作業って比較的短時間で、1時間くらいで終わるのもあるくらいなのに。『ツシマ』のスキャニング工程は綿密極まりなかった。

E: あーうん、けっこうかかってた(笑)

S: で、写真撮る時だったと思うんだけど、向こうから来る注文がね、こう──「はい、じゃあ口開けて、上唇をめくりあげてもらえますか」とか、「あ、頭の向きはこっちでお願いしまーす」とか。(当時の様子を実演中)

E: (笑)

S: もう、顔の表情をありとあらゆる形で静止させなくちゃいけなくて。内容はもう覚えてないそのひとつが、ものすごく大変だったのね。顔の左側? だったかな、それも覚えてないんだけど、片側はできてるのに、もう片側ではできなかったりして、お笑い草もいいとこだった(笑)。じゃあやり方を変えてみようかってことになって、わざと私をビックリさせて、その顔になった状態で一時停止したり。かなり奇抜な表情やらされたよね?

E: あったあった。確かに変わった顔やらされたねぇ。僕も自分のスキャンの日、撮影しながら「今日起きてから、朝の表情筋の体操(実演中)やっておくんだったぁ〜」って思ったの覚えてるもん。やば! って。あと指示の細かさにもビックリしたなー。

S: 本当そう。文字通り「じゃあ右眉は驚いた感じで上げてもらって。左目は細めて、遠くの何かを見てる体で閉じ気味にしてもらえますか。で、唇は左端がハッピーそうな感じ、右端は歯医者さんに見せる時みたく開けといて下さい」ぐらいのこと言われて、もう「ああああぁ!!」ってなって(笑)

D: (その注文通りの顔を再現しようと苦戦中)

E: 「左の頰をこっち側にクイっと上げた状態で小鼻を膨らませて、右手側の角を見上げててもらえます?」みたいなヘンな指示ね! 「あの、やってはみますよ? みますけど、多分ご希望には添えないかと」って(笑)

S: そう! そんな顔の動かし方頼まれたことなんて、一度もないから!(笑) 役者としてはそういうの楽しむ方なんだけどね? ジャンプしてみせてって言われたら私、「どれくらいの高さでいきます?」って返すし。だから楽しくはあったの。

D&E: (笑)

S: でも一度、吹き出しちゃって笑いが止まらなくなったなぁ。自分の顔がどーーしても言われた通りにならなくて(笑)。自分の顔なんだから絶対できるはずなのに、できないんだもの。

E: 僕にも間違いなくあった、「これ人間ができる表情なんです? できますかねこれ?」って瞬間が(笑)。

S: でしょー!!

E: 「こう、フッとやってきて顔のパーツを独立させて、こんなのとか(実演中)、こんなの普通にやる人とかいるんですか? 僕は無理。うち帰って誰かと交代してもらった方がいい? ごめんなさい」って(笑)

S: まさに。私も自分に「この顔が作れない人、私だけじゃないはず」って言い聞かせてた(笑)



◆異例: アールのご両親からの質問

E: 僕から質問がひとつあって、って実はこれうちの両親からの質問なんだけど(笑)──スマリーのフルブライト奨学生としてのプロジェクトって何だったのか、知りたいって。

S: (笑)

E: そして、ご両親がどんなにそれを得意に思ってたかも(笑)。いやもう、うちの親ねぇ、『ツシマ』キャストのこととかめっちゃリサーチしてるんだけど、いの一番くらいに母から聞いたことっていうのが「スマリーがフルブライト奨学生なの知ってた?」でさ(笑)。「そっかぁ、情報ありがと」って言っといた(笑)

S: 面白い話があって──あ、最初の質問は何だったっけ? そっちも忘れずに答えられるように、もう一度教えて。

E: 「フルブライト奨学生としてのプロジェクトは何でしたか?」だね。

(※訳註: フルブライト奨学金は、多種多様な専門分野の国際学術交流に特化した奨学金制度。アライアンスを結ぶ160ヵ国と米国政府が資金を拠出し、国家元首やノーベル賞受賞者、ピューリッツァー賞受賞者などを多数輩出している)

S: 私がやったプロジェクトね!

E: あ、僕マーシャル奨学金なら最終選考まで残ったんだよ。落ちたんだけど。だから、どんなかは何となくわかる。

(※訳註: マーシャル奨学金の支援対象は、米国人学生の英国への大学院留学。フルブライトと並んで、米国内では最も権威ある奨学金制度のひとつ。ちなみに英語でいう「奨学金」はすべて返済不要である)

S: すごいじゃない! マーシャルなんて。フルブライトより競争率高いんでしょ?

E: 結局とれなかったから、どうでもいい話なんだけどね(笑)

S: 私の場合は、大学出てから自分のルーツが本気で知りたくなって。でもうちは気軽に親にお願いできるような財政状況じゃなかったものだから、タイかフィリピンへ留学できそうな奨学金に片っ端から応募したのね。応募しまくったのにひとつも受からなくて落ち込んでたら、最後の最後に連絡が来たのがフルブライトだった。確か補欠の一番手だったはず。でもどうにかこうにか、奨学金が受けられることになったの。それでフィリピンへ留学したんだけど──私は先進国やハーバードのレンズでしかものを見られてない先進国の女の子で、そのレンズを通してフィリピンで研究活動を行おうとしてた。書いてた論文のテーマは、フィリピンにおける職業差別と、民族文化が職業差別への反応にどう影響するか。大学では「人種」「ジェンダー」「文化」って言葉が入ってるコースなら何でも履修してて、そこが私の関心分野だったからなんだけどね。でも、フィリピンでの職業差別を研究するにあたって参考にさせてもらったホストファミリーは、「フィリピン人は職業差別なんかどーだっていいよ、仕事さえもらえりゃ! そんなの調べてどーすんの?」って反応だったのね(笑)

E: (笑)

S: だから元の論文テーマは捨てた(笑)。現地のNGO職員の人たちと親しくなって、その人たちから全然別の人脈を紹介してもらったりして、最終的には土地の不法定住者が多いエリアのご家庭いくつかと、友人関係になったの。おうちも本当に、土の床に波型のトタン屋根みたいな建物なんだけど。で、そういう世帯には必ず、海外の工事現場へ出稼ぎに行ってる家族がいることに気がついた。フィリピン第一の輸出品目は、実は人間の労働力だっていう話もあるくらいでね。出稼ぎ労働者はそれぞれ、米国ではナース、サウジでは石油労働者、日本ではダンサーになったりしてるんだけど、彼らが外国へ出稼ぎに行くことで、フィリピンには家族の誰かが欠けた世帯のコミュニティができていた。家族に仕送りするため出稼ぎ労働者になった人たちが抜けてね。私はそんな、本国に残された家族への影響を研究テーマにすることにしたの。当時は国外への出稼ぎ労働者に対する影響をテーマにしてる人がほとんどだったから。母国を離れて土木作業員になったことによる影響、新しい環境にどう適応するか、どんな支援を受けてるのか、どんな誤った扱いを受けてるのか、とかね。でも、残された家族に焦点をあててる人はいなかったから、私はそっちをテーマにした。

E: なるほどー。

S: で、ここからインタビューの最初の話題に戻るんだけど(※訳註: 冒頭ではスマリーがどんな経緯で初プロデュース作品の制作にこぎつけたかという話が出ていた)。シリコンバレー業界のグループに映画のアイデアを売り込んだ時、向こうはこっちの売り込みを気に入ってたし、私がハーバード出だってことや、モルガン・スタンレーで投資アナリストやってたことも知ってた。私だったら「あ、こういう経歴の人相手の投資なら無謀な賭けにはならないかな。たとえばお金の持ち逃げとかはなさそうだな」って思うような情報をね。それに、共通の友人がいた強みもあったわけ。でも、その全部が向こうにはどうでもよかったの。資金を出してくれるリーダー格の人が言うことには、「ふむ。君はフルブライト奨学金を受けたのか。なら、資金を出して損はなさそうだな」(笑)。彼が選んだ決定打って、よりにもよってそれだったのよ。人生でしてきた経験の何が次に繋がるかって、本当にわからないものなのね。というわけで、ご両親にはこう言っていいから。「プロジェクトのテーマは国外への出稼ぎ労働により本国に残された家族への影響。フルブライト奨学生になったことで、後々は映画のプロデューサーになる道も拓けました」って(笑)

E: いやー。脱帽するしかないよ、スマリー。すごいなぁ。

S: しかも私、補欠だったのに(笑)



◆質問: 別業界からクリエイティブ業界への転身のコツ

こちらは、モルガン・スタンレーの投資アナリストから俳優・声優への転身を成し遂げたスマリーを見込んでの質問。「クリエイティブ業界でのキャリアを追い求めるにあたってのスマートな方法は、どのようなものなんでしょう?」

S: 俳優業に関して言えば、方法は本当に何通りもあります。他の職業の大多数には、どうやってその道に入るか、どんな風にステップアップしていくかっていう一本道のプロセスがあるんだけれど。他の誰かと類似の経緯でこの業界に入ったっていう人は私、ひとりとして知らないですね。

E: みんなそれぞれの道を辿ってきてるんだよね。

S: そう、みんな経緯が違う。それで、私なりのカギカッコ付きでの「スマートな方法」については、まず俳優の道を選ぶこと自体スマートではないっていうか(笑)──自分の仕事、大好きですけどね!(笑) とにかく、私がとった方法というのはまず、投資銀行で昼の仕事をして、かなりの額の貯金を蓄えたこと。クリエイティブ業界への挑戦の元手となる資金を稼ぐためには、昼間の仕事は必須だった。だって──世間的にはあまり認識されてないんですよ。俳優を名乗ること自体は簡単に出来ても、実際に生計を立てていけるようになるまでには、私だって10年以上はかかりましたから。だからそうなるまでの間──(ツジ氏を見て) あ、ダイスが「そうなの? 僕は2年で生活できるようになったけど?」って顔してるぅ(笑)

D: いやぁ、僕だってだいたい同じくらいの時間はかかったよ。でも投資アナリストやって大金稼いでたわけじゃないから(笑)。僕がやってたのは、ごくささやかな仕事なので(笑)

S: ううん、私もね、投資アナリストって言っても、他の昼職の平均よりやや上くらいのお給料だったから。投資銀行をやめた後は、サンフランシスコでかなり高級志向なデザイン事務所のプロジェクト・マネージャーになったの。ボイスオーバーの勉強を始める時間も捻出できるようになって、安くはない授業料が払えるくらいのお給料も貰えてた。で、 ボイスオーバーの腕があがってきたところでプロジェクト・マネージャーからは降格させてもらって。コンテンツ部門に移って、ライティングと編集の仕事を始めたのね。企業マーケティングみたいな分野での業務なんだけど、そのおかげでまた時間に余裕が生まれて、前よりもう少し俳優業へ注力できるようになった。それから徐々にライティングの仕事をパートタイムに変えて、そこで昼職がパートタイム、あとの半分の時間は役者業に充てられる状態になったのね。以降は俳優としてのキャリアが許す限り、昼の仕事の責任を減らしていく感じ。文字通り何年がかりでの作業だった。だって、簡単にやめるわけにもいかないでしょ。駆け出しのうちは、お金は入ってくるものじゃなく出て行くものなんだから。クラス代や人脈作りの交際費、ヘッドショットの撮影、デモリール作成、そういうものに消えてくんですよ。当時、税務処理してると俳優業はもう、赤字に次ぐ赤字続きだったもの。でもそのうち、あれ、黒字が出てる、ってところまで来てね。売り上げが出始めてからは昼の仕事を減らして──2000年代に入ってからだったかな、週11〜15時間程度までに抑えられるようになった。そうなってから、ボイスオーバーのエージェントを雇ったの。エージェントがついたら、後はもう全力疾走あるのみ。もう寄り道だの回り道だのしてる暇なし。最初に送り出されるオーディションは、何としてもモノにしなきゃだめ。エージェントはあなたというタレントとの仕事の手ごたえを即つかむし、あなたの実力も見たがってるわけだから。ただし、そんなに何度もチャンスを貰えるとは思わないこと。私が駆け出しだった頃なんか、オーディションに出る機会が何度あったか。白人のカウンターパートほど機会は与えられてなかったもの。それだけにいっそう、オーディションを振り続けてもらうために打率を上げていかなきゃならなかった。だからエージェントがついた時、思い切って昼の仕事をやめたの。オーディションに100%全力で臨むためにね。

E: なるほど。

S: 世間の人は「ボイスオーバー? 紙きれ読み上げるだけでしょ。ベッドから起きたばっかりでもできる仕事じゃ?」ぐらいの認識かもしれないけど、私に言わせれば「失礼ですけど、グレイ・グリフィン別名グレイ・デライルの、もしくはタラ・ストロングのIMDbを見たことある? 出演作が果てしなく続くページを! ああいう天才たちと渡り合おうっていうのに、起き抜けでなんかやるもんですか」。だから昼の仕事をやめて、ひとつのオーディションの準備に何時間もかけてた。私が自分にあげた猶予期間は6ヶ月。お金を貯めて、その期間中は一切昼の仕事をせず、100パーセント俳優業に集中してたのね。3ヶ月目にひとつ仕事が決まったけど、ラジオCMの小さい仕事だった。何百ドル程度の単発仕事で、それっきり。そしてとうとう進退極まった6ヶ月目、「あー、また昼間の仕事探しに戻らなきゃ」と思い始めた頃にエージェントから電話があって。シリーズレギュラーとして『超ロボット生命体 トランスフォーマー プライム』のアーシー役に決まったって知らされたの。

D: えー、すごいなぁ。

S: そうなの! もう「ウソみたい! やった! これで私にも毎週収録に通う、本当のレギュラーの仕事が出来たんだ。ちゃんと報酬も出る! 良かったぁ!」って。十分生活して行けるだけのお金にはなる仕事だったから。それからは、他の仕事も決まるようになった。だからようは、「昼間の仕事を減らして、俳優の仕事は増やしていく」っていうやり方ね。で、最終的には勝負をかけて俳優一本に絞るっていう。

E: ……いやー、お見事だなぁ。

D: スマリーと話してるとこう──

S: シーンとしないでよー!(笑)

E: いやいや、すごくためになる内容だったからさー。僕の友達関係にもクリエイティブ関係の仕事したーいって漫然と言ってる子たちいるけど、しっかり計画を立てた上で努力して、昼職からの移行をやり遂げる人もいるんだよな、って話。お見事の一言だし、刺激も受けるよね。だって投資アナリストから、業界でも指折りのホットな声優・俳優への転身だよ? かっこいいし勇気づけられる!

(※訳註: 2022年7月に行われたキャスト合同サイン会では、竜三役レオナード・ウーが一時期、スマリーから声優のコーチングを受けていたことを明らかにしていた。「スマリーは『私はいまだに1日何時間も自宅クローゼットに作ったスタジオにこもってオーディションに応募してる』って話してたよ。彼女があんなに成功してるのは、やっぱり相応の理由があるんだな」とのこと)


◆質問: ゆなの深い感情表現に至るまでのプロセスについて

S: 演技のプロセスって、みんなそれぞれあると思う。私の場合、複合的なものかな。あなたたちの場合はどうやってるのかも気になるところだけど、私は自分の外側のところでキャラクターを作り込むタイプ。それこそ、ゆなのこれまでの人生を書いたミニ小説みたいのがあったりね(笑)。ゆなの最初の記憶は何かとか、たかや母親と暮らした子供時代とか、聞かれれば答えられる。演技を求められた時、自分の中で生きた記憶になってるように、脳内ではっきりした絵を描いてあるのね。たかに関する感情的なシーンは何度かテイクを重ねたけど、私はそういう記憶を取り出して、シーン前に思い返したりしてた。この手法って何て言うのかな? とにかく、今まで指導を仰いできた素晴らしい演技コーチの皆さんから学んだやり方なの。キャラクターの個人的なバックストーリーを作り込むのもそのひとつ。具体的な記憶を感情の拠り所として使うってことね。たかのシーンの前は、母親が弟の腕を折った時の記憶を繰り返し思い返してた。(鑓川での)酒盛りシーンで話してるエピソードなんだけど、私の耳にはたかの骨が折れる音も聞こえてるし、鼻はその瞬間の空気のにおいも嗅ぎとっていたりするのね。そういう細い部分まで、自分の中に染み込ませておく。たかとの幸せな、楽しい思い出もね。そこを作り込んでおけば、ゆなの喪失感も自分のものとして感じることができるでしょ。

E: ひとつの世界を作りあげるわけかぁ。

S: そう。あと、ああいうテイクを何度かやる場合、自分で作り上げた記憶も使うけれど、たまにはリアルの自分の身に起きたことも使って、どんな感じになるか試してみることもある。ネイトが「アクション!」って言う直前、私はたかの記憶と同時に、自分の母が亡くなる間際、側についていた時のことも考えたりしてた。「アクション!」の声がかかったら、あとは何が起ころうと流れに身を任せる。結果は前もって決め打ちできようなものではないけれど、細部までしっかり自分のものに出来ていれば、そこから出てくる演技も確かなものになるはずだから。



◆告知で慌てるスマリー

声優、俳優、プロデューサーとして大忙しのスマリーだけあって、終了間際の告知は盛りだくさん。ひとしきり聞き終わったツジ氏がおもむろに口を開く。

D: 今日は本当にありがとう。今回、教訓として覚えておきたいことは、僕はもっと頑張らないとだめだってことだな。なまけてた気がする。

E: ホント、頑張んなきゃ僕も。今のダイスと僕こんなだよ。「人生どうすんのマジで」(笑)

S: (笑) あとね、今いるとこ(トロント)でパイロット版の撮影してるんだけど、言って良かったかどうか覚えてなくて。どの作品でもそんな感じなの。

E: それって今スマリーのTwitterアカウントにピン留めされてる作品のことじゃ? もう告知出てるんなら大丈夫なような……(笑)

S: そうだった!? 何も言っちゃダメっていう状態に馴染みすぎてて、自分でもよくわからなくなってる(笑)

E: いっそ僕から告知しとく?(笑) その方が無難なやつじゃ?(笑) スマリーは何も言わないでおいて、僕がご案内する感じで(笑)

S: もうわかんない!(笑) 参加できてとってもありがたく思ってる作品なんだけど、緘口令に慣れすぎて告知すること自体が怖くなっちゃった(笑)

E: というわけでね、知りたい人はスマリーのTwitterを見に行って下さい。文字通りピン留めされてる一番上のツイートです(笑)。それが、スマリーがトロントでやってるお仕事でーす(笑)

D: (笑)

S: そんな仕事してるような、してないような? もうすごい不安になってきたー、なんで話に出しちゃったんだろー(笑)

D&E: (爆笑)



◆おわりに

S: あなたたちが大好きだってこと、最後に言わせて。『ツシマ』での仕事のプロセスや経験は、ひとつひとつが丸ごと特別なものだった。みんなと一緒に乗り越えるんじゃなきゃどうなってたか、想像もつかないくらい。あなたたちはすごい俳優。ダイスはプロフェッショナリズムの何たるかを明確にしてくれたし、それに質問! 現場での質問内容もスマートそのもので、それを横で聞きながら「(息を呑む)私の脳みそからは絶対出てこない質問だ、すごい」って思ったりしてた。もう、とにかく敬愛してる。それにアール、初対面の時はあなたと間近に接することができて、本当に嬉しかった。こんなことってある? って。アイヴィーの誕生日パーティーでの出会い、覚えてる?

E: アイヴィーのパーティー! あの時っていうのがまた、僕らが同じ仕事に関わってるなんて誰も話しちゃいけない時期だったからねぇ。でもそこんとこはアイヴィーが、「あらー、あなたたち。私はなんでふたりを誕生日に招待なんかしたのかしらぁ。まだ別に一緒の仕事してるわけでもないのにねぇ?」とだけ言い残して去って行ったんだよ(笑)

D: (笑)

E: もうね、(口をあんぐり開けた顔でキョロキョロした後、自分とスマリーを指差して拍手する仕草)

S: 「(声をひそめつつ) あなたも例のアレに出てる? 出てるの??」(笑)

E: 「ほわ、ほわぁあ!!(コクコク頷いて拍手)」ってなってたんだよね(笑)

S: そうそう(笑)

E: あの出会いは最高だった(笑)。そんなわけであの晩以来すっかり、スマリーは僕の心の中に居場所ができてる人なんだよ。そんな風に考えてても大丈夫だといいんだけど。

S: もちろん、私もバッチリ同じ気持ちだし。さて。それじゃあまたね、ふたりとも。もう落ちます。ゆな落ちまーす。(投げキッスの大盤振る舞い)

E: うん、いい夜をね。

D: 「ゆな落ちます」! いい夜を。

E: 見てくれたみんなもありがとう、今夜の配信はここで終わりです。DandEな週末を!