ダイスケ・ツジ「DechartGames」インタビュー抄訳

日本時間で10月12日早朝、『Detroit: Become Human』コナー役ブライアン・デッカートのゲーム配信チャンネル「DechartGames」にて、ダイスケ・ツジへのインタビューが行われました。なぜこうも『Tsushima』関連インタビューは面白いのか! そしてブライアンはなぜそんなに同業者ならではの鋭い質問を連発するのか! なぜか憤懣やる方ないような気持ちで面白かったところを箇条書きにします。箇条書きだからぶっきらぼうに見えてしまうかもしれませんが、実際のツジ氏の口調はもっと丁重です。動画はこちら、あるいはこちら

※『Ghost of Tsushima』および『Detroit: Become Human』ゲーム本編のネタバレがあります


◆ダイスケ・ツジのゲストパート

(調子はどう?と聞かれて) いいですよ、Twitch上でのインタビューは初めてなので少し緊張してますが。でも、みなさん親切そうな方ばかりで(笑)

2周目配信は当初予定にはなかった。日本語音声でのプレイ中に日本版キャストに失礼な反応をしてしまうんじゃないかと心配で。でも日本の視聴者がついたので試しにやってみたら、忠実でサポーティブなファンがたくさん来てくれて。それが嬉しくて、続けることにした。最初は向こうの夜8時とか9時台に合わせて朝4時起きでやったんだけど、早起きするより夜更かしする方が楽なので、今は週一の深夜に日本語配信をやっている。日本語は3年生レベル。両親とは日本語で話しているが、日本語配信をするもうひとつの理由はそれ。使わないと忘れてしまうから、いい練習にもなっている。

(配信全般について、やってみての感想は) なんとなくコツがつかめてきたところで、即興劇みたいで楽しい。クラウンの経験があるので、配信ではクラウン的な要素を楽しんでる。ゲームの中やチャット欄のコメントの細部に面白いところを拾ってゆく感じが、ゲームの中のゲームみたい。かなりエネルギーを消耗しますが。おふたりにもわかってもらえると思いますけど、疲れはするものの楽しい。役者としては舞台での活動があと一年はできなさそうなので、他のはけ口が必要なのもある。

(クラウンとしてはどこでトレーニングを受けたのか) これまでずっと体を使ったストーリーテラー的なパフォーマンスをやってきた。大学卒業後にティム・ロビンスの劇団Actor’s Gangに参加して、クラウンに繋がる要素としてはそこでコメディア(仮面劇)をやっていた(「僕も国外でコメディア・デラルテの勉強してたんだよー! 君と通じ合う理由がなんかあるに違いないと思ってた! アレルッキーノ同士だったんだー!」とブライアン大喜び。コメディアは能のように役柄によって使用する仮面が決まっており、ブライアンは多くの場合アレルッキーノ役、時にはカピターノやプルチネッラもやっていたという。ツジ氏に「わかるかもー!」と言われて嬉しそう)。Actor’s Gang経由でシルク・ド・ソレイユのオーディションを受けて、先方が募集してたそもそもの役柄には受からなかったが、ちょうど日本ツアーでの観客席に仕込まれるサクラ役の代役を探していて採用された。ちょうどいいタイミングにちょうどいい所にいた式で得た仕事。それからクラウンパフォーマンスによりのめりこむようになり、自分のクラウン・ショーを開く参考にするためクラウンの学校にも通った。LAではThe Idiot Workshopという教室もあって、シルク・ド・ソレイユでも働いていたベテラン、かつ天才パフォーマーのジョン・ジルキーが主宰している。彼のやり方は少しレッスンをした後、いきなり観客がわりの参加者たちの前に出されて「登場シーンやってみろ」と言われる感じ。ときにはもう少し具体的な指示を出すこともあるが、人によってはパニックになって、ただ何かしらの反応を得るために叫び出したりする。その教えのキモはただ落ち着いて、自分のままでいるだけで十分、人として誠実でありさえすればそれだけで面白い、と学ぶことだった。クラウンの教室で勉強できそうなこととは正反対ではあるけど、その教えは配信にも応用している。

(仮面の話が出たところで視聴者からの質問。冥人の面頬でお気に入りは? コレクターズエディション特典の面頬を顔に当ててみせるとブライアン&アメリア大喜び) 特典の品だからたくさんの人が持ってると思うけど。(ブライアン「君がつけちゃったら他の人はできなくなるよー」) ファンビデオやCameoビデオを作るときに使ってる。コメディアでもそうだが、仮面をつけると一気に役になりきることができて、解放される。境井仁の場合もそうで、仮面をつけることでモンスターみたいなものに切り替わることができている。本当の自分を隠すためか、本当の自分が出てしまうのを抑えるためかはわからないけど。仮面については何かしら興味の尽きないところがある。ただ、率直に言えば面頬のお気に入りというのはないかも。冥人の面頬かなあ? こう言うとナルシスト的に聞こえちゃうけど、自分の顔を見ていたいんで(笑)

(好きなクエストはありますか? サイドクエストも含め) 百合のクエスト。仁の過去を掘り下げる話でもあるから、役者として自分の役について学ぶことができるとワクワクする。

(仁役のオーディションはどのような感じで進んだか) 最初はオーディション用のセルフテープを作って、ってそのテープは今でも持ってるがしばらくは公開しない(笑)。そこから2度コールバックがあって、撮影を行うサンタモニカで面接を。監督のネイトとも顔を合わせた。カメラのことを気にしなくていい、舞台のオーディションのような雰囲気で、なじみのある状況だったので落ち着いて、自信をもってやれた。ネイトについては最初カナダ人かと思っていたらシアトル出身で、僕と似たバカっぽいユーモアセンスの持ち主なせいで、かなりうまがあった。(ここで例の狐との即興演技の話、ただしより詳しく) 基本的には僕が尺八を演奏していて、近寄ってきた狐にエサをあげてから、「吹いて欲しい曲はあるか?」と聞いて、狐のために演奏してあげるという場面を演じた。そこへゆな的なキャラクターがやってきて、僕が即座にサムライの顔に戻るという流れ。歴史上のサムライから、人間味あるディズニープリンセスみたいな仁の間の切り替えを演じたわけです。

(舞台俳優からモーション・キャプチャーでのパフォーマンスへ携わるにはどんな経緯があったのか) モーション・キャプチャーはずっとやってみたかった。得意な身体表現を使っていい仕事ができるはずだとわかっていたので。繰り返しになるがクラウンの経験が、この手のストーリーテリングにはよく合っていたと思う。Sucker Punchの人たちも、(最初から)舞台役者を雇うつもりだと言っていたぐらい。舞台役者は体を使った表現に対する意識が強く、また舞台では想像力を駆使するから。舞台上から観客の姿が目に入っていても、設定上の周りの世界が見えていなければならない。ゲームの撮影現場では周りに何もないけれど、想像力を使って考えるのがすごく楽しかった。子供の時に遊び場で遊んでいた時のような、あるいは演劇学校に戻ったような気分だった。

(「自分の頭の中で想像したものと、制作チームの他部門から上がってきたアートワークなどをもとに想像した部分との割合はどれくらい?」という質問がブライアンから) 技術的な用語はわからないが現場にはマーカーがあった。家の位置はここ、橋はここ、などそのシーンに出てくるものの位置を示すためのもの。たとえば室内のここは通れませんよ、という印に置いておく。(刀や弓など、物理的な小道具はどれくらいあって、あとのどれくらいを想像力で補っていたのか?) もしかして(Detroitの)撮影は同じスタジオでやってたりした?(「だったらいいんだけど、僕らの撮影はパリのクワンティックだったから」)いいな! パリで働いてみたい。刀はあった。あと毛髪つきの恐ろしげなマスクがあって、子供時代の仁が想像上の鬼を倒すシーンで使っていた。(「仁の幼少時も君が演じた?」)そうです。幼少時の仁の声を気に入ってくれて、じゃあ全部やっちゃおうということに。あと馬もあったんだけど、名前が思い出せない。ひとつはヴァレンティーノだったはず。本物の馬じゃなく模型です。あと死体がわりに置くE.T.みたいなやつも。(『Detroit』でもそういう人形があった、というブライアン) 名前はあった?(「小道具チームはつけていたかもしれないけど、僕には教えてくれなかったんじゃないかな」との返事) 名前、「クロエ」じゃありませんでした?(とひと笑い)

(仁とあなたの共通点は?) 誠実なところかな。誠実な人柄というのはたぶん間違いない。ただあまり暴力的なタイプではない。動物好きなところは一緒。それくらいかな。(筆者補足: ツジ氏の最初の配信に大学時代の旧友や複数の劇団の関係者、それこそ13年前に働いていたシルク・ド・ソレイユの旧同僚までが続々と挨拶に訪れていたこと、配信チャンネルの管理人の一人が過去働いていた脱出ゲーム運営会社時代の上司であることなど考え併せると、人付き合いを大切にする義理がたいタイプなのは間違いなさそう)

(夢の役柄があったら聞かせて欲しい。映画でも、ゲームでも、演じてみたいキャラクターなどは?) ジョーカーか、ジョーカー的なキャラクター。僕がジョーカーを演じるとしたら怒る人がたくさん出るだろうから、ジョーカーっぽいキャラクターでいい。いつも言及することだが、最近出演した『Cambodian Rock Band』という舞台で演じたのが悪役。『Cabaret』っぽいMCと、歴史上に実在した深刻な悪役、戦争犯罪人という二面性のある役だったので、そこは真剣に、リアルに演じた。おもに『Inglorious Bastards』のクリストフ・ヴァルツとバットマンのヒース・レジャーのパフォーマンスをパクって組み合わせたんだけど(笑)、そういう感じのキャラクターをどれか演じてみたい。

いつか一緒に仕事がしたいですよね。って言っちゃいますけど。(「ぜひやるべきだよね!」というブライアンの返事に、またまた、のジェスチャー。「本気だってば! これが僕らのユニバースが出会うためのいい第一歩だよ。このあたりがいい頃合いだから聞くんだけど、ダイスケ、今日このあとには何してるのかなあ?」とネタ振りするブライアン) すんっばらしい役者たちが出演してる、すんっばらしいゲームをプレイする予定です(笑)。役者がすんっばらしくハンサムでもある。最近『Detroit: Become Human』で遊んでます。本当にすばらしいゲームで、楽しく遊ばせてもらってるし、不安にもなる、って正しい言葉のチョイスがわからないけど。何度も何度も選択をしてるうちに誰かが死ぬと、ああ自分のせいだ、となってしまうので。このあとあなたが『Tsushima』をクリアしたら、僕も『Detroit』をクリアします。平和的で、暴力なし、みんながハッピーになれるエンディングにする予定です。(その傍らで、「ダイスはコナーを殺す気だから気を付けろ!」とコメント欄で警告するアール・キムの姿が)

(最初に仁の姿を見たときの感想は?) 最初のトレイラーが出た時周りのみんなには「わー! 君そのまんまだね!」と言ってもらったが、正直言うと本人としては「あんまり自分の顔っぽくないなあ」と思ってて。でも次、またその次と新たなトレイラーが出るたびにどんどん実際の僕に近くなった。実はビリー(・ハーパー、撮影監督)に「僕の顔あんなじゃないんですけど」と伝えたら「そっか、じゃあちゃんと君らしく変えよう」ということになった。ただ、アール(・キム、典雄役で前週にゲスト出演していた)もここで同じ話をしてたと思うが、制作チームは仁の顔をもっと美形に変えるんだろうなと予想してたのに、実際にはより実物に近づけてきた。変な気分だけど最高だなと思った。(「仁が時々見せる優しい表情は、キャラクターの造型が実際の君により近付いたからこそより鮮明にゲームの中に落とし込むことができたものなんだろうね」とブライアン) より人間的にはなったと思う。(ブライアン「実はうちの母も同じことを言ってた。みんなからコナーは息子さんそっくりだね、と言われて、アレはうちの子じゃないって(笑)」)

(ブライアン「ここに大部分は自分そっくりなゲームキャラをモーションキャプチャーで演じた役者が3人揃ってるから聞いてみたいことがある。自分と似た顔のキャラクターを演じるのはちゃんと共同作業で作り上げたキャラクターという感じがするのでいいんだけど、いくつかある参照元をひとつに合体させてアーティストが作り上げたキャラを演じるのってどう思う? 僕としては、他にいくらでも実在の役者の顔があるというのに、リアルなモデルの顔を持ってきてそれをリアルな別の役者に演じさせるのは無用の緊張を生むし、将来的に大問題になるような気がするんだけど」。コメント欄ではこの話題に『The Last of Us 2』のアビーを想起する向きがちらほら) それが効果をあげているゲームもあるとは思う。作品の邪魔になってはいないものが。でもなぜ製作側がそういう決断に至ったのかは不思議に思うなあ。ディープフェイクに関しても本当に恐怖を感じてるし。人を簡単に操作する目的で利用されないよう、手を打つのが政府なり何なりの役割だと思う。(昔はモーションキャプチャーといえば大規模な予算のつく『ロード・オブ・ザ・リング』級の大作でしか使えなかったが、技術の民主化でどんどん敷居が下がっている、とブライアン) 確かいま、完全にデジタル技術で開発された役者もいるんじゃなかった? インスタか何かで回ってきたんだけど。あれも本当に怖い。(ブライアン「たぶんLil Miquelaのことだね。デジタル世界にしか顕現しないAIペルソナだけど、アルバムを出したりパーティーに行ったり、マネージャーやエージェントまでいるんだ」。しかも声すらデジタル合成によるもの、とアメリアが補足すると) そんなあ。『Detroit』が格好の例で、『Tsushima』の毒のくだりでも触れてますが、人間はある範囲では間違いをおかすんですよね。手に負えなくなって人類の時代が、あるいは役者の時代が終末を迎える前に政府に対策して欲しい(笑)

(好きなシェイクスピア作品は?)今のところ『リア王』です。2013年にOregon Shakespeare Festivalで道化を演じまして(YouTube内トレイラー)。リア王役はジャック・ウィリスと、マイケル……どうしよう、ラストネームが思い出せない。『ギルモア・ガールズ』とかにも出てるすごい有名人なのに! とにかく、リア王はダブルキャストで交代で出演してたんですが、道化はリア王と親しい間柄なので彼らと付き合うのも面白かったです。(その後コメント欄のアール・キムから問題の俳優の名前が「マイケル・ウィンターズ」であることが判明した)


(ゲーム内愛馬・影の死があまりに悲しくて、追悼のハイクを詠んだというブライアン。ツジ氏に朗読してもらおうと事前に送ったそう) 面頬した方がいいですかね? (任せる、とブライアン。じゃあいいや、とそのまま朗読を始める) では、影へ捧ぐ一句。

「良馬、我が影よ
汝が身命 徒らにはすまじ
思うさま駆けゆけ 誠の友」

(「ありがとうダイスケー!」「すごいよかったー!」とガチで感激する夫妻。「仁のキャラに入るときの声の変わりようがすごいね! かなり低い音域なんだ。それにかなり落ち着いたトーンで」とブライアン) たぶん、配信中でも仁として見られたりするようになった分、「仁は僕じゃないよおー。ホントの僕はこんなでえーす(変声)」ってやっておきたいから、というのもありますかね。かなり高めに(笑)。(ブライアン「そういう風にキャラクターに入るにあたってインスピレーションの元になった人はいるの?」) 最初は映画で、やはり三船がそのひとりですね。僕の場合撮影は3年がかりの長丁場だったので、最初の1年間の仁の演技もゲーム内に使われているかどうか。いくらかはあるはずですけど。3年以内に仁というキャラクターを見つける旅でもあったので、もちろん知る限りの手段で、現場でも、声の収録ブースでも最善は尽くしましたが。でも同時に、そういう進歩は悪くもなかったと思うんです。仁も守之段から離之段にかけて自分を発見する旅をして、離之段まで行った時にはもう完全に冥人になってますよね。最後の方まで行って「あ、これが僕の、冥人の時の仁の声だな」という認識ができました。とくに仁が一番非道な振る舞いをする時(笑)、一番低い、一番恐ろしげな響きになるんです。仁の声を探す旅でもありましたね。(アメリア「3年という期間中、撮影は時系列順で行われた? それとも場面を前後してました?」) 前後することも少しはありましたけど、大半は時系列順です。脚本の続きを書きながらの撮影だったので。確か。物語のアークはある程度決まってましたが、その範囲内での変更がかなりありまして。この話題は詳しく話さないようにしているんですが、キャラクターの過去についても変更がありました。続編がもしあるのなら、ってどうなるかは僕もわかりようがないんですけど、制作チームにはもっと深掘りして欲しいですからね。過去設定に関しては変更されたりカットされたり、キャラクターのことを学びたいので僕ももっと見てみたいんです。声に関しては「低くしてった」に尽きますかね(笑)

(このプロジェクトで一番誇りに思っていることは?) 何を誇りに思うかかぁ。うーん。あ。アジア系アメリカ人キャストが自慢ですね。アメリカの大手ゲーム制作会社が全キャストにアジア系を起用するってかつてないような気がします。それに、そんなすばらしいキャストとの共同作業でやり遂げた仕事についても。Sucker Punchの皆さんもすばらしい方たちで、僕らが文化的な面で違和感を覚えて問題提起をした場合も、意見を取り入れてくれました。そういう仕事自体を一番誇りに思います。それと同じくらいファンの反応、とくに日本のファンからの反応にも満足してますね。最初は日本の皆さんに気に入ってもらえるか確信がありませんでしたから。でも僕らの仕事を受け入れてくれて、しかもすごく気に入ってくれている様子で、その事実も誇りに思っています。あと配信でも──大学に編入する時書く小論文があるんですけど。将来したいこと、声明みたいな……「本学があなたを受け入れるべき理由を書きなさい」的な小論文。僕はそれに、「将来は、日本とアメリカの架け橋になりたい」(手振りつき)って書いたことがあるんですね。若い子が言葉の意味も、どう受け取られるかもよくわからず言ってみてるだけ、みたいなことを(笑)。でも今このゲームや配信で、ささやかながらそうなれているような気がして、そこもすごく誇りに思ってるんです。(ブライアン「そういう架け橋になれるって素晴らしい。ゲーム配信で僕らが楽しんでいるのも、劇場のようにリアルタイムな反応が返ってくること。ストーリーテリング周りで共有の経験をもつのは映画やドラマでは不可能なことだ。君たちは本当に素晴らしい仕事を成し遂げたし、僕も日本について多くを学んだような気がしてる。対馬なんて知りもしなかったのに! メインストーリーが終わったら、オタク全開でゲームの世界とリアルの相違点をリサーチしまくるのが楽しみなんだよ。このチャンネルでは「Curiosity Chill」という催しがあって、プレイ中はネタバレが怖くて調べなかったことをみんなで調べまくる機会にしてるんだ。次の火曜日は『Tsushima』特集の予定。歴史を紐解いて何が見つかるか楽しみなんだ。君ならもう全部知っているようなことかもしれないけど」) いや、歴史はまったく駄目ですから。いろいろ起きてんなーくらいで(笑)。自国の歴史やそのストーリーを知るのは大事だけど、年号や人名となるとからっきしで……マイケル・ウィンターズさんすみません。その催しっていうのは、視聴者とのチャットで行うんですか?(アメリアによると「Curiosity Chill」は最初に視聴者アンケートでテーマを決めて、皆が興味をもって学びたいことを調べるという手順で進めるのだという) すごいな、まるで授業だ。


実際に対馬に行ったことがあるんですけど、それもいい勉強になりますよ。(ホントー!?と目を丸くする夫妻) 2018年の12月だったかな、確か。すごくいい経験でした。(ブライアン、食い気味に「馬の背に乗って戦場の霧を払いながら駆け巡ったりした!?」) いえ(笑)、ただ馬は見ましたよ。対馬の固有種、というか日本の在来馬一般がそうだと思うんですが、ずんぐり体型で足が短いんです。でもそのおかげで足腰が強くて、山岳地でも楽に動ける。あ、あと100円出せば干し草の餌をあげられたり。ちょっと利用されてる気がするけど(笑)。(対馬滞在は)5日間。それだけあれば観光案内マップに書いてある範囲は全部見て回れました。レンタカーがあれば、そんなに広い島でもないですよ。とてもきれいでした。(アメリア「ゲームの中の対馬とは似てました?」) そうですね。何度もした話ではあるんですが、最初は「まあきれいなとこなんだろうけど、ゲーム内の方がCG合成でもっときれいに仕上がってるんだろうな」と思ってたんですよ。でもやっぱり実際の対馬はすごかった。リアルな世界には勝てないものなんですね。ただゲームより緑が多くて。雪はなかったけど、秋に行けば赤一色に染まる道があると聞きました。僕は紅葉シーズンの後に行ったので見られなかったんですが。基本的に、ゲーム内の対馬はひとつの島で全季節を網羅してるんで(笑)


(最後に言いたいことは? という質問の流れで、関係者への謝辞を述べる一同。ブライアンによると、『Tsushima』勢との間を取り持ってくれたのはサブカル系podcast「PanGeekery」の4人のホストのうちのひとり、アール・ベイロンだったらしい) あともう一人、ブルーにも感謝の挨拶をしたいです。僕と、えっと会社の名前何でしたっけ。ミスティック・ドリームス? (ブライアン「ミスティック・ドリームスぅ?」) あっ待って、ごめんなさい。名前全般、覚えるのが本当に駄目で(笑)。……クワンティック・ドリームだ! とにかくありがとう、ブルー(笑)。(「もう僕らでミスティック・ドリームスっていうゲームスタジオ興しちゃう?(笑)」とブライアン。コメント欄での指摘によると、ブルーという名前で言及されているのは、クワンティックのコミュニティ・マネージャーであるTwitchアカウント名「Blue_Owlz_Medic」さんのことらしい。前週にツジ氏がクワンティック公式Twitterの「ストリーマー・ハイライト」に取り上げられたのは、この方からの声かけによるものだった。最後は日曜の「Legends」合同配信の告知と、エアグループハグで締めくくり)


◆おまけ:それぞれの出演ゲームをやり終えての感想

・ブライアン&アメリア編
(最後の選択で絶句するふたり。ブライアンは考え込んだ末に、口を開く) よし。こんな状況に陥った理由のすべては、これまでずっと志村の行動規範に耳を貸さなかったせいだから、僕は僕の道を貫くことにする! (と、R2を選択。エンディングを見守った後目を潤ませて、打ちひしがれた様子で時折言葉に詰まりながら続ける) いいゲームだった、いいゲームだった!……ビデオゲームでこんな経験をしたのって、初めてだよ。何というか……このゲームで一番辛かったのは、これまで正しいと言い聞かせられてきたことと、自分が正しいとわかっていることの軋轢だった。……そして自分を信じることで、大切な人たちを失望させてきたことも。で、本当に……何だろ、本当に夢中になって長い時間プレイしてきたけど、作品世界のインパクトというか、ゲーム内への没入感がとてつもないよ。本当にあの世界で長い時間を過ごしたような気分だ。……僕はさ、今いるこの現実世界にはいたくなかったんだよ。つらい世の中になってるじゃない。イラついてる人たち、憤慨してる人たち、人と対話することや敬意と思いやりをもって接し合うことが本当に難しい人たちもいる。だから、僕にとってはこのゲームで対馬にいることが、安らぎだった。島の美しさを堪能したり、穏やかな時間をもつことがね。島とそこで出会った人たちを守るという、はっきりとした善悪の感覚も。このゲームを作ってくれたSucker Punchと携わったすべての人に感謝の気持ちでいっぱいだよ。だって……(心配そうに見守っていたアメリアがとうとうブライアンの肩をさすり出す)……なんかもうね、ゲームとこんな関係を結んだこと、ないかもしれない。ゲームに対してこんな気持ちを持ったことってなかったよ。(と、感動しきりな様子のブライアンだった)


・ダイスケ・ツジ編
(DechartGames出演後、『Detroit: Become Human』配信フィナーレ開始。ブライアンの『Tsushima』感想を踏まえて) いやー感動的だった。ブライアンがあんな風に感情を剥き出しにするのを見るのが、僕には感動ものだったなあ。みんなはどう? 今日配信に招いてくれたDechartGames に感謝してます。素敵なインタビューになったよね、まったりした感じで。みんなはだいたい知ってると思うけど、僕が配信を始めたのって3ヶ月前なんですよ。家族に『Ghost of Tsushima』を見せたいと思って。で、3ヶ月後の今もまだ配信を続けてて、引き続き楽しくやれているし、技術面の諸々や配信者らしいコミュニケーションの取り方、コミュニティーとの関係なんかも勉強させてもらってる最中なんだけど。DechartGamesは見ていて「あ、こんな風になりたいな」って思う目標なんですよ。webカメラももっといいのにしたいし、照明ももっとよくしたいし、マイクも──今のもまあまあいいやつですけど、彼らを目指して努力してく、DechartGamesはそんな存在です。繋ぎの映像とかも趣向を凝らしてて、なんでも持ってますよね。配信がショーだってわかってるんだなぁ。だから皆さんが僕の配信を見続けてくれたなら、今のこの状態から将来的にはこう(身振り開始)、こうね、ここから1、2年後の僕の配信にカットで飛ぶ感じで、苦しみもがきながら成長する姿をご覧いただけるかと思います(笑)。(その後、ゲームを開始してイベントシーンを眺めつつ) あ。今あんまり感情を露わにしてなくてすみません。僕だってストーリーにめちゃくちゃ感動することはあるので、これからかも。ただ人が見てると思うと、感情を爆発させるのもどんなもんかなって思っちゃう(笑)。(そして、コナーの正念場のシーン。とある名前を三択で当てるよう求められると) うわ、やべっ。あー、畜生畜生畜生! (見事ハズレて、コナー死亡) 名前の覚えがわるーい! スモウはわかったのになぁ。ランダムに出てきた名前を当てるのって僕には最悪のテストだよ。息子さんの名前なんだったっけ、マイケル・ウィンターズ? 今ならそっちの名前は覚えてるっていうね。それともミスティック・ドリームス? はい、クワンティック・ドリームね。もしまだ見てたらブライアン、ごめん。君は死んじゃった。僕が殺しちゃった。にしても息子の名前なんだっけ、ってやっぱり言わないで。ちょっとこの罪悪感と羞恥のうちに生きるとします……。(コナー以外のメインキャラクター生存でクリア後) コナーが生き残れなかったの、本当に残念だなあ。コナーパートには物語の秘密が全部入ってる気がしてたんだけど、表面を引っ掻いただけになっちゃった。rA9の謎とかそういうやつね。配信するかどうかはみんなの反応や今後の予定にもよるからわからないけど、もう一度プレイしなきゃ。コナーよ安らかに眠れ(笑)。見てたら本当にごめん、ブライアン。現実世界の問題と直結してる内容で、このゲームをプレイして良かったよ。DechartGamesへの出演が決まってたからだけじゃなく。本当にリアルで起きてるBLM運動とかぶるよね。黒人がキスしたり、ファミリーになれば「ああ彼らの命も大事なんだな」ってなるほど単純じゃないことを除けばだけど。リアルな世界ではキスじゃ十分じゃない。だからこそのファンタジーなんだけどね。特定の状況下で人間がどうなりうるか、我々がどう反応しうるかを反映してるわけだから。美しいエンディングです。(休憩後のおしゃべりで) ブライアンとアメリアが『Tsushima』をクリアしたわけだけど、ふたりが選んだ「生かす」エンディングについて触れるのを忘れてた。ちなみに僕が選んだのもそっちでした。Sucker Punchを通じてネイト(・フォックス、クリエイティブ・ディレクター)とビリー(・ハーパー、撮影監督)に「生かす」と「殺す」のプレイヤーの選択の統計ってどうなってるのか訊ねてみたんだけど、きれいに半々ずつ、50%の人が「殺す」派、50%の人が「生かす」派くらいに分かれてるんだって。面白いよね。中にはどちらが気に入ったか明確な答えを出してない人たちもいるらしいけど。僕の選択は「生かす」だった。ただブライアンより決断までかなり時間がかかったんだよね。そういう選択肢が出るのは事前に知っていて、あのシーンに入った時点では志村殿を死なせるつもりでいたからさ。あと(コントローラーの)L2、R2のシンプルな操作で選ぶとこ、物理的にあっちの道か、こっちの道か、画面上と自分の手の中で選ぶっていうシンプルさがすごく効果的だったと思う。ストーリーテリング上、父親的存在を殺すか、殺さないかっていう大問題でどういう気持ちになるかって意味で。