見出し画像

「クーポン」に垣間見える「空虚」な政府与党

10万円「相当」の支給

衆議院議員選挙前の時点で、公明党が「18歳以下への10万円相当分給付」を公約に掲げ、物議を醸しました。そもそも18歳以下という括りを設ける理由が分かりません。「コロナウイルス禍による解雇、営業休止等による損失を補償する」「経済的理由(とりわけコロナウイルス禍によるもの)により休学/退学の危機に瀕している大学生を救済する」といった考えは皆無のようです。私からすれば「選挙で選ばれたいが、なるべく市民にカネを出したくない」という吝嗇臭い/薄っぺらい動機が見え見えです。しかも即時ではなく「来年の春までに」という「牛歩」振り。来春の時点で「コロナ禍がほぼ終息し、給付の必要がなくなったので撤回する」と「掌返し」をする気が満々に思えました。一方、自由民主党は「所得制限を設けた上での支給」を提唱していました。そして衆院選を経て岸田文雄は「早急に与党と調整を行いたい」としました。野党と議論する気は更々ないのでしょうか。ここから「当選さえすれば政府与党でやりたい放題」という思惑がハッキリと見て取れます。これでは「民主主義」とは到底言えません。岸田文雄はゆくゆくは寡頭制、延いては独裁制に移行させたいのでしょうか。かつての「大政翼賛会」の如く。
そして与党での「調整」の結果「年収960万円以下という所得制限付きで、18歳以下に対して5万円を今年に給付、残り5万円相当分をクーポンとして来春に給付」という方針となりました。果たせるかな、公約を見事に反故としました(クーポンという愚策については流石に予想だにしていませんでした)。衆院選の公約時点で「クーポンにする」といった方針は聞いた記憶がありません。言ってみれば、現金給付を半額にしたわけですが、自身の支持率も半減させたいのでしょうか。また「『10万円』と断言していたわけではなく、あくまでも『10万円相当』だから問題ない」とでも言いたいのでしょうか。「消防署の方から来ました」と言って消火器を売り付けるやり方を髣髴とさせるものがあります。
岸田文雄は事ある毎に「スピード感」を強調していますが(これは安倍晋三や菅義偉も同様でしたが)、そう思うのであれば全市民に一律給付(少なくとも数十万円程度の水準)を行うのが筋でしょう(スピード「感」と言っている時点でハリボテ感抜群ですが)。年齢制限や所得制限を設けたり、越年してのクーポン支給を採用したりといった「迂遠」な手法の何処に「スピード感」を感じるでしょうか。政府与党に本気で「市民を救済する」という意欲/使命感があるのであれば、クーポンという案は到底浮かばないでしょう。ここでも「中抜き」を画策しているのでしょうか。「スピード感」とは「『コロナ手当』と称して自由民主党議員に対し即時の200万円支給した」事のように「身内限定的」なものなのでしょうか。「生まれ変わった自民党」を吹聴する割に「利権優先」「身内優先」といった考えから全く脱却できていないようです。

「全市民に対する賠償」のつもりで給付せよ

コロナウイルス禍が終息しない事(1日あたりの新規感染者数は激減しているように見えますが、検査の絶対数が少ない以上当てになりません。東京都のデータも実数が反映されていませんでした)について、政府与党に非がある事は明らかです。コロナウイルス禍の最中であるにもかかわらず病床削減を推進し、市民の生命、健康、生活を棄てて東京五輪/パラリンピックを優先。ラムダ株の存在を隠蔽してまで開催するという醜態です。果たせるかな、感染爆発を惹起して医療崩壊となり、「自宅療養」という名の放置を強いたという愚行。これはまぎれもなく「政府与党による棄民」であり「不法行為によって市民に損害を発生させた」ものと言えます。大日本帝国憲法下で採用されていた「国家無答責」は通用しません。政府は「国家賠償的なもの」として全市民に給付金を支給すべきです。尤も、国家賠償法第1条第1項を「忠実に適用させる必要はない」でしょう。同条を見てみます。

国家賠償法第1条第1項:国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

条文の通り、国家賠償とは「公権力の行使に当たる公務員の違法且つ有責な行為により、他人に損害が発生した場合に国又は公共団体が賠償責任を負う」ものです。尤も「国家賠償アプローチ」を取る場合、市民側が国に対して国家賠償請求訴訟を提起する必要があります。また、国又は公共団体に違法性がある事については「国又は公共団体に違法性がある旨を主張する側(=原告側)が立証責任を負う」とされています。尤も「国側が自発的に市民に対して賠償する事」については法令で禁止されていないでしょう(先に「国家賠償的なもの」と記したのはそうした理由です)。国(岸田文雄内閣/政府与党)は、愚策によって市民に損害を発生させた以上、訴訟の有無にかかわらず当然に補償すべきです。
財源?大好きな「自己責任」「自助」でどうにかしてください。市民に自助を押し付けて、自分達の失策については知らんぷりというのは身勝手極まりありません。

参考文献

⭐️大橋洋一『行政法1』『行政法2』(有斐閣)
⭐️櫻井敬子/橋本博之『行政法』(弘文堂)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?