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【感想】春ゆきてレトロチカ ネタバレなし感想

 スクウェア・エニックスから発売された『春ゆきてレトロチカ』を先日クリアしましたので、プレイした感想をざっくりとまとめました。
 シナリオの性質上、ネタバレ厳禁と強く指定されていますので、あくまでもネタバレを回避した範囲での感想です。
(2022年11月21日までSwitchのダウンロード版は40%オフみたいです、定価で買ったので羨ましい!)

なぜプレイしようと思ったのか

 普段遊んでいるのはソシャゲがメイン、ほぼ周回かストーリー消化しかしていない、家庭用ゲーム機は今は携帯用Switchだけ所有しているけれど日常的にはプレイしないのが基本環境。
 しかも3D酔いするから原神は序盤でギブ、スプラトゥーンとか最近の画面がグリグリ動くゲームがほとんどできない三半規管の敗北者でもあります。つらい。
 一番プレイするのはノベルゲーム、結局ゲーム画面上でも常に文字を読み続けているのが基本です。でもたまにしかゲーム機つけないからいつまでたってもひぐらし奉が読み終わらない。次に月姫が控えている。そんな感じ。
 そんな中、ひぐらし奉を読み進めるモチベが足りず、でも何かゲームしたい……出来れば読み応えのあるミステリーか軽いホラーくらいで……というアンビバレントかつワガママな感情を持て余しつつSwitchのストアを漁っていた時に出会ったのが、この『春ゆきてレトロチカ』でした。
 この春ゆきてレトロチカ、全編実写なんですね。しかもお話がほぼムービー進行。ダウンロード版で購入すると定価で7,480円かかります。ここが購入するかしないか、自分にとっては購入にあたって一番悩ましい点となりました。投稿日現在、Switchはダウンロード版が丁度セール期間中で40%引きになっているのが確認できたので、今後購入を検討される方はセール期間を待って購入するというのも出来そうですね。
 過去に428をプレイしてどハマりした経験があるので全編実写であることにさしたる抵抗感はないのですが、折角ゲーム機という媒体で遊ぶのなら実写よりもやっぱり二次元的なキャラクターの方が望ましい。しかもセール対象になっていない頃だったので、もっとセール期間中で安価で面白そうなゲームもあるからなーとかなり悩みました。
 購入の決め手となったのは、実写ではあるもののレトロな雰囲気・質感が映像から感じられた点と、新本格ミステリアドベンチャーを謳って綾辻氏に実際プレイしてもらったインタビュー記事までサイトに載せている点。ディテールや推理モノとしての質への拘りや自信を随所に感じましたし、まあそこまで自信があるのなら買ってみようかな……ガチャの爆死金額に比べたら全て些事でしょ……という値段比較対象として禁止カードを持ち出した上で購入を決めたのでした。最終的に買って良かった、プレイして良かったという大満足の結果が得られましたので、やはり購入にまつわる全ての悩みは些事だったのです。

 前置きはここまで。以下、ネタバレに抵触しない範囲で良かった点・微妙だった点を語ります。


良かった点・面白かった点

 プレイしていて最も面白さを感じたのは、2時間ドラマの推理を実際に体感できるような造りになっている点です。物語全体を縦断する謎はあるものの、事件の発生→推理と解決の流れはストーリー毎に設定されており、基本的には1話完結でスッキリ次に移れるのも良い。大体1時間〜余裕をもって2時間くらいあれば1話分消化できるのもドラマ感ある。
 シーン全回収するなら話は別ですが、クリア自体はそこまで時間かからず割とサクッと全編終わると思います。
 夕方に再放送されている少し古い2時間モノのドラマミステリーとかをぼーっと観ながら主人公役にちょっと感情移入しつつ、「あーこれ実際に自分が推理するならどんな感じなんだろーなー」とか思ったり思わなかったりしている人にはおすすめ。通常のノベルゲームと違ってほぼ全部映像だから、問題パートに関しては本当にドラマみたいに観ているだけで物語が進むのもページ送りの必要がなくて楽。
 解決パートももちろん実写で進行するのですが、要所要所でトリックを指摘したり容疑者からの反駁に応えたり、自分で選択肢を選ばない限り進まない場面も多々あるので、ただムービーを見ているだけではない、“自分が物語の進行に参加している感”も得られる。まあぶっちゃけ選択肢が間違っていても都度やり直し・再選択ができるので、推理が苦手なタイプも総当たりすれば突破自体はできるし詰むことはない。
 時間制限がないというのも個人的には非常に魅力的でした。リアルタイムなんちゃらみたいな時間内に間に合わないとゲームオーバーみたいなシステムが本当に苦手で、どんなジャンルのゲームでもこれがあると緊張で手汗が止まらないしどっと疲れてしまうのですが、本作はそれがなくてじっくり考えられるのが有難い。
 後は、マルチロールシステムという実写ならではの手法を使っているのも非常に面白かったです。先述の通り1話完結型なので、各話の登場人物はもちろん異なるのですが、ほとんど同じ役者さんたちが各話毎に別の人物をそれぞれ演じている。一人何役だ?すごい演じ分けです。時代や役回りによって服装や髪型、口調を変えることでこんなにも一つの作品の中で演技に幅を持たせられるのかと、役者さんってすごいなって純粋に感じました。物語の最後の最後までこのマルチロールシステムに惑わされた。実写だからこそ、このシステムだからこそ成し得た展開ってかんじで、お見事でした。
 シナリオに関してはもう何話してもネタバレになりそうなのでなんとも言えないんですけど、面白かったです。各話毎の推理と解決を積み重ねながら、物語の根幹となる謎に迫っていく。最後の謎が回収された時のカタルシスったらとてつもなかったです。あと泣くつもりが一切なくプレイしていたのに最後に号泣させられましたしクリア後に暫く放心しました。とっても良かった……物悲しくも静かな余韻に浸れます。
 良かった点はこんな感じ。

 ちなみに、良くも悪くもなかったのは推理パートのシステムでしょうか。
 登場人物の思考空間であるという設定で、謎に対して問題パートで出たフレーズをパズルのように当てはめて仮説を作っていく、要するに解決パートに向けた頭の整理みたいな幕間システムです。ある程度パズルを埋めないと解決パートに進む選択肢が出てこないのですが、こちらもぶっちゃけ難易度下げたり総当たりで埋めれば全部埋まる、しかも新情報がここで出てくるわけではないし荒唐無稽な仮説も他の仮説と同様に一仮説として保持されるので、完全に単なる情報整理ですね。
 問題パートの情報量がそれなりに多いので個人的には助かりましたけど、ミステリ慣れ、推理慣れしている人からすると物語のテンポが損なわれてちょっと冗長に感じるかも。やる/やらないは自由意志に任せる補助的なシステムに留められると良かったのかもしれませんが、ここがこのゲームにおけるゲーム性の大半だからな……悩ましいところですね。
 ちなみに、作中で出てきた人物関係図とか用語とか推理パートの仮説とかは、全て図や文字としていつでも閲覧することができます。まあこの辺りはほぼムービー進行な訳ですから当たり前の措置の範疇にとどまる部分ではあるかな。

良くなかった点・微妙だった点

 大筋は大変良く満足感の高い内容でしたから、個人的にはそこまで酷評するほどの部分はないのですが、やはり気になる点はいくつかあったのでそこだけ。
 まずは何より、推理パートの操作性の悪さでしょうか。推理パートのシステム自体に思うことは特にはないのですが、操作感が悪い。一つの謎というピースに対して、対応する問題パートの解決に繋がりそうなフレーズが書かれたピースをパズルのように嵌め込んで仮説をいくつか作るという行為を繰り返すわけですが、問題パートのフレーズが書かれたピースは全て時系列順・シーン順に年代物のフィルムっぽく横にずらっと並んでいて、ピースを探すのにどうしても右往左往する必要があり、単純に探すのに手間がかかります。しかも、謎に対応するフレーズが必ずしも時系列に沿って当てはめられる訳ではないし、パズルを嵌めたら最初のポジションにカーソルが自動で戻ってくれる事もないので、行ったり来たりがエンドレスで続くのがちょっとしんどい。アプデで大分改善された後にプレイしているのですが、それでももう少しこの辺りがサクサクできるとより遊びやすいのになって思うのが正直なところです。
 内容として微妙だった点は、解決パートに向けて仮説を絞り込みきれない部分が多かったところ。これは、かなり個人の資質に依る部分だと思うので、あくまでも個人的な感想です。もっと推理慣れしている人であればそんなこと思わないかも。この作品は構造上ある程度メタ読みが求められる部分があるわけですけど、作中で気にかかる部分があった時に、それがメタ読みの範囲内なのか、それとも気のせい・気にしすぎなのか、ブラフなのか、トリックの決め手となるポイントなのか、判断が結構難しい場面が多く、いくつかの仮説のうち一つに絞り込むには場面描写がどれも決め手に欠ける……みたいな悩ましさを感じることが結構ありました。この辺りは設問の難易度設定に関わる部分ですから調整が難しいところでしょうけれど、もう少し手心を加えていただけたら良かったかなって思います。繰り返しますが人によりけりですから、あくまでも個人的感想です。
 もう一つ微妙に感じた部分を挙げると、気になったシーンを見返すという行為が非常に手間に感じる部分ですかね。これもかなり個人的な感覚になってしまうのですが、ノベルゲームとかテキスト読みとかを普段やる時、超高速オートでだーーーっと一通り自動で流し読みつつ、気になるシーンとかフレーズが出て来たところでログ機能を使用して該当の文章まで遡り、前後の文脈とかも併せて満足するまで読み込むという進め方をしているのです。なので、このゲームで気になる部分だけ満足いくまで観直すという挙動は、普段とちょっと勝手が違って大変でした。この作品、やはりムービー進行ならではというか、5秒単位の早送りと巻き戻し機能でしか前後の確認が出来ないので、さっきのシーン気になるから観直したい→15秒くらい戻して→あっちょっと足りないからもう10秒戻して→行き過ぎたわ……→うーんやっぱりもう一度同じシーン観直したいな→結局何秒戻すのが丁度良いんだ???みたいな事が結構な頻度でありました。自分が慣れるしかないのでしょうけれども。
 良くなかった点はこんな感じです。



 良くなかった点・微妙だった点も結構なボリュームで書き連ねてしまった気がしますけども、それを差し引いて余りある良さが体験できると思うので、個人的には結構おすすめです。暫く寝かせて記憶が薄れてきた頃に、もう一度冒頭からじっくりプレイし直してみたいと思いました。
 操作性の改善を望みつつ、シリーズ物としてもう一本くらい出してくれないかなって期待しています。面白かったです!
 おわりです。

#ゲーム感想 #Nintendo_Switch #春ゆきてレトロチカ