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黄色い翼


23-24シーズンは私にとって、初めてBリーグを知り、初めて現地で試合を観た、いわばファン1年目のシーズンだった。

思い返せば、長いようであっという間の10ヶ月だった。選手たちにとっても激動の10ヶ月だっただろうが、私にとっても激動の10ヶ月だった。なんせ、外から入り込んでくる全てに対する姿勢を、ブレックスによってまるっきり作り替えられてしまったからだ。

以下はブレックスを今季から追い始めた人間の自分語りの範疇を脱しない回顧録となるため、ブレックスについて読みたかった方はここで戻るボタンを押して欲しい。


私は元々、どちらかといえばネガティブで消極的。特に人生に掲げる命題もなく、目標もなく、ただ日々をそれなりに消化しているつまらない人間だった。バイタリティという言葉とは無縁の人生。あまりにも自虐的すぎる書き出したが、揶揄も誇張もしていない。毎日仕事で怒られないで、それなりに時間を経過させて、帰って布団に入る。社会人になってからの私はずっとそんなかんじだ。
仕事上、自分の苦手なことをやらなきゃいけないことも多くて、その一つ一つに心を憂鬱にさせて寝られなくなる日を何度も過ごした。
"頑張る"ってことが苦手だった。だって、頑張ったって何かを得られるわけではない。頑張った分お給料が跳ね上がるような職場でもない。地続きの日々をただ惰性でこなしたって、誰もそれを責めないし文句も言わない。今日やりたくないことは後回しにしたっていいじゃん、別に。
おまけに人付き合いもあんまり得意じゃなかった。元々人見知りだし。気の合う人と付き合っていれば傷つくこともない。全く違う考えを持った人とぶつかり合うなんて怖い。
そうやってさまざまな事柄に対して、何とか逃げ道を探しているような人間だった。これは私に限ったことではなく、他の人も持っている人間特有の弱さだと思う。その弱さに抗う人もいれば、私のように抗えず流される人もいる。

そんな私の目の前に現れたのが、宇都宮ブレックスだった。W杯の余熱のまま比江島慎を追いかけて、所属チームのHPを開いた時に目に入ってきた、今季のシーズンスローガン『STRIVE』。「たゆまぬ努力をし続ける」「全員で泥臭く、全力で取り組んでいく」という意味らしい。何の目標もない私のぼんやりした人生から最も遠いところにある言葉の数々だった。スポーツチームだけど、優勝とかそういうものが入ってなくて、取り組む姿勢にフォーカスするんだな?とも思った。そして、簡単に言葉に出してもそれを実現するのはなかなか難しい目標だとも。

そんなことを思っていた、10月の灰色の日々の中にいた私に教えてあげたい。10ヶ月経った私には、世界が全然違う色に見えていることを。
この10ヶ月間。ブレックスを応援するうちに、彼らの頑張る姿を見るうちに、私はいつのまにか「頑張る」ことを厭わなくなっていた。嫌な仕事も自分を成長させるチャンス、と思って必死で乗り越えた。そのためなら地道な努力もしてみたりした。うまくいったこともあったし、うまくいかなかったこともあった。それでも「次は失敗しない」と切り替えができるようになった。
人との付き合い方も少しだけ前向きになれた。意見が違う人とも、コミュニケーションをとる努力をするようになった。人見知りもちょこっとだけ改善された。
自分の弱さに負けず、抗えるようになったら、少しだけ自分のことを好きになってきた。

そうやって、私が地続きの日々を惰性で流さず頑張れたのは、毎週末頑張るブレックスを観られたから。シーズンスローガンを泥臭く有言実行しようとするブレックスを観続けられたから。
惰性でも流せる日々を、こんなにも頑張っている人たちがいる。
弱さに負けそうになる日々に、抗おうとする人たちがいる。
時にはうまくいかずにボロボロになることだってあった。それは一度ではなかった。
それでも、彼らは前を向いてただ努力し続けていた。明日の自分が、より良い自分であるために。

そういう目に映る彼らの姿すべてが、私に勇気をくれた。自分の弱さに抗う勇気をくれた。佐々HCは、シーズン中何度もブレックスネーションのことを「翼」に例えてくれたが、私にとっては彼らが、宇都宮ブレックスこそが黄色い翼だった。
彼らの頑張る姿を見て、彼らに恥じない私でいたいと思えた。そうして少しずつではあるけれど、弱さに抗える自分に変われた。
しんどくて、苦しくて、もう頑張れない…と思った時もその翼が私を奮い立たせて前を向かせてくれた。

宇都宮ブレックス。
灰色の私の日々を、彩りある日々に変えてくれてありがとう。
毎日頑張るみんなの姿に、何度も励まされていました。試合をリアタイできない日も、結果を追うのが楽しかった。
自分のことを好きになれなかった私に、少しだけ自分のことを好きにさせてくれてありがとう。
ブレックスに出会う前の私より、今の私のほうが遥かに素敵だと胸を張って言えます。
弱さに負けそうな時、私の心を奮い立たせる黄色い翼になってくれてありがとう。
良い意味で人生を変えてもらったと本気で思っています。それぐらいの出会い、それぐらい最高なチームです。

シーズンが終わっても、日々は地続きで続いていく。明日は月曜日。またたんまり仕事が待ってる。そのことを考えると、またちょっと憂鬱になる。
それでも。明日の私が、少しでも今日の自分よりいい自分であれるように。努力し続けたいと思う。

私には、強くて優しくてあたたかい、「黄色い翼」がついているから。

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