見つかりませんように13

少し前姉が寝込んでいると母から聞いた
どうやら仕事の内容や言われた事を覚えていられず、ミスをしてしまうらしい
本人は記憶が出来ないと言っている

病院に行くように言っても聞いてくれないので、私からも言って欲しいと母は言う
何かあるなら治療始めないとと焦っている

もしも私ならば家を出た部外者の妹に状況が筒抜けなのは嫌だろう
ましてや、口出しされるのも嫌だろう

それでも心配する母にすれば、どうにか病院に行って欲しい
何かしらの病気ならば少しでも早く治療して欲しいと言う気持ちもわかる

母の気持ち、姉の気持ち、どちらにも共感しつつ、重い気持ちを抑えて姉に電話をする
電話には出ない
LINEをする
母から聞いた事、口出しされたくないだろう事はわかってる事、それでも私も病院に行って欲しい事、最後に決めるのは姉自身だから好きにしてくれていい事、気に触るなら無視して欲しい事など書いた
姉からの返信は無かった

母は無年金老人だが、働いて生計を立てている
同居する姉の稼ぎは命綱でもあろう
その命綱が切れた

人生で姉のメンタルブレイクは想像出来ていなかった
母をどうしようとばかり気にしていた

少しして母から姉が病院に行ったという連絡を受けた
もし、私からのLINEに気を悪くしてもきっかけのひとつになれたならいい
その後診断結果の連絡は来ない

私はもう明るい未来が見えなくて、連絡する苦しさから逃げた

それから一月ほど経つだろうか

勇気を出して母に電話をかけた
出ない
2人して世を儚んで死んでいるのでは、なんて思う
メールを送った
今夜勤なの
返信があった
生きている
そして徹夜の夜勤をしているらしい80近い母

やはり姉はダメなのか
その分を母が身を粉にしているのか

今日母に電話をかけてたわいもない会話をする
さりげなく姉はどうか聞く
最近仕事してるよと言われる

はあああ
勝手に想像していた
姉はもうダメで
働き詰めの母が命を削るのを

生活保護受けたらいいのに
姉は障害者手帳申請してみたらいいのに

分かってる
分かってる
分かってる

馬鹿みたいに真面目な母が身体の動く限り頑張るし頑張りたいこと
姉は私が思うほど弱くもダメでもないこと

苦しかった
日々小さな幸せと小さな笑いに包まれながら
苦しかった
自分の幸せだけ手に入れてもどうしようもないことが

いま神頼みをするなら母と姉の幸せを祈る
今占い師に占われるなら母と姉の将来を聞く

私はなんとか幸せに生きている
それだけじゃダメなんてそんな未来が来るなんて
思いもしなかったな

人生の伏線

とある人の言葉
こんな日々もいつか人生の伏線になるのだろうか


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