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初心以下にカエル

僕はギターを弾くけど、ギタリストではない。

エレキギターにおいては、新品のギターを買ったことがなかった。最初のギターは、弟のギターを買った。いや、もらったかもしれない。思い出せない。次のギターは学生時代に友人から買ったレスポール。そしてその次のギターは、改造しまくってヴォリュームのツマミも無いような状態だったが、友人がプレゼントしてくれたWashburnのヌーノベッテンコートモデルN4。結局そのギターを使い続けて、他のギターは手放した。N4は相性が良い。しかし、チューニングしても高音の音がズレているまま使い続けていた。絶対音感がない僕は、なんだかおかしいと思いつつも、弾きごこちの相性はよいため、随分長い間そのことに気づかずに弾き続けていた。

ある時、ギターショップに持ち込んでメンテしてもらったところ、内部の配線が逆になって位相が逆になってるという。直してもらったのだが、何年もその状態のままでライブで使用したり、スタジオとか入っていたのを恥ずかしく思った。弾きごこちの相性はバッチリだったが、何か音がおかしいとずっと思っていたのはそのせいだったようだ。

そんな僕も、お小遣いをためて、はじめて新品のギターを買った。左利きギターのテレキャスターだ。きっかけは左手薬指の爪が割れてしまって何ヶ月も左手で弦を押さえられなかったのと、ちょうどその頃会社の元上司がギターをはじめたのだが、それが左利きということだった。一緒に音出し程度に軽くスタジオに入ってみたときに触らせてもらって衝撃を受けた。

全く弾けない

まるで鏡の中の世界に迷い込んだような、そんな気分だった。最も簡単なドレミすら弾けない。ピックを持つ手も全く振れない。右利きの僕がギターをはじめたとき以下の状態に遭遇した。

当たり前にできていることが全くできなくなる衝撃。普通はここまでの体験で完結するであろうことだが、どうにも試してみたくなった。左利きギターに転向してどこまで弾けるようになれるのか。それで左利きギターをはじめて二週間程度。少しだけ弾けるようになって気づいたことがある。

当たり前に弾けていたことの意味

これに気づけたことだ。何も考えずにいたことだが、ギターを持つ位置、角度など、これらがどれだけ無意識に最適な状態にできていたことか。

ギターだけでなく、他のことでも初心以下にカエってみるのも悪くなさそうだ。自分ができていることを再認識できる。

ギターは弾くけど、ギタリストではない。

そう思っていたが、初心以下よりは弾けているので、もう少し自信を持ってみようと思う。

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