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奇跡の軌跡

転校生ってドラマかアニメの中に出てくる登場人物か、自分以外の誰かの話だと思っていた。

中学三年生の12月。冬の訪れを感じる頃、高校受験を控えた難しい時期に、父親の都合で僕は転校した。友達は多い方だったと思う。盛大に送り出してもらい、そして新しい学校のクラスに受け入れてもらった。転校する時も、転校した後もずいぶん長い間他人事のように思えていた。

その頃夢中になっていたのはゲーム制作。小さいながら新しいゲームを考えてはパソコンで動かしていた。できたゲームは雑誌に送り、掲載された原稿料でちょっとしたものを買うのが楽しみだった。それは転校する前も後もそれは変わらなかった。作ったゲームを遊んでくれる友達もいれば、一緒にアイデアを出してくれる友達もいた。インスピレーションから短時間で作ったものの方が雑誌でも扱われることが多かった。僕にとって何かを創るという基礎はこの頃が土台になっている。僕にとってクリエイター志向でいたいという意識はこの頃の活動によるものだ。

転校した先のクラスになんとなく馴染めなかった僕の話に、なんとなく絶妙な間合いでうまく興味を持ってくれるクラスメイトがいた。名前はTAK。新しい土地の知らないゲームセンターに行ったり、行ったことのないカラオケに連れて行ってもらったりしたのだが、歌がうまく、こいつはいつか歌手になるんだろうなと勝手に思っていた。誰もが知ってるようなバンドの名前も知らず、音楽に全く興味がなかった僕だったが、彼がきっかけでのちに音楽にのめり込むことになり、生活の一部になろうとは。そのクラスにいたのはたった3ヶ月。それぞれ別々の高校に行ったので、同じクラスで生活したのは本当に3ヶ月だけだった。それでも、その後長年にわたって、それぞれが進む道が交差する瞬間があり、辿ってきた道を音楽に盛り込み、かけあわせることで新しい道ができることが何度もあった。

その3ヶ月が、現在につながっている。
そして現在も、未来のどこかにつながっている。

(2019/2/18 22:05, 3/5 Update&Publish)

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