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新説「桃太郎」第1章

むかし、むかし、あるところに。
おじいさんとおばあさんが住んでいました。

ある日、おじいさんは柴刈りに、おばあさんは川に洗濯にいきました。

おばあさんが川で洗濯をしていると、川上からどんぶらこ、どんぶらこと大きな大きな桃が流れてきました。

100メートル先に見える桃。

お婆さんはどきどきが止まりません。

洗濯していた手を止め、桃を凝視しています。

(ああ、どうすればいいんじゃ、どうすればいいんじゃ。あんな大きな桃見たことないわ。

絶対に持ち帰りたい!!
持ち帰って、おじいさんに、めちゃくちゃドヤ顔したいんじゃ!!

おじいさん、絶対「うわああ」って、喜んでくれるんじゃ。あの人のオーバーリアクションは私の大好物なんじゃ!

でも、絶対にあの大きな桃を川から取りあげて家に持っていくなんて、どうしたら良いんじゃ。。。)

おばあさんが周りをキョロキョロと見渡していると、最初に目に入ったのは、今洗濯している風呂敷。

おばあさんは、風呂敷を5本端で結んで川の両端にある木に結びつけました。その手際のよさはいつもの家事では見せたことがありません。

(よし、絶対にこれならいけるぞい!)

桃が徐々に風呂敷に近づいてきます。

おばあさんは固唾を飲みながら、流れてくる桃を凝視しています。

3メートル。1メートル。10センチ。

そして、風呂敷に届いた瞬間、桃はしっかりと風呂敷にかかっています。

「やったぞい!!!」
飛び跳ねながら、近づくおばあさん。

と思ったら、ギギギという音がして、風呂敷の結目がほどけてしました。

(ぐぬぬ)

おばあさんは、鬼の形相で顔を赤らめています。

(なめんな、桃ごときが!!!わしの実力をなめたらあかんぜよ。絶対におじいさんにドヤるんじゃから!!!)

おばあさんは、軽快に走りながら、周りにあるモノと川の状況を判断していきます。

(あの桃の大きさはざっくりと横100センチ、縦100センチの円球に近くみえるのお。

体積の公式ってなんじゃっけ。えーと、そうじゃった。
V=4/3Πrの乗。

Πはざっくり3とすれば、0.5m3。

水分量を90%じゃとしても、1m3の水の重さは1トンじゃから、ざっくり500キロはある計算じゃ。

むむむ、手強いのお、この桃。)

おばあさんが桃に並走しながら競歩の足並みで進んでいると、川下に大きな岩がいくつが見えました。

(こ、これじゃ。)

おばあさんは一気に加速し岩のある場所に到着。
周りにある10キロ前後の石を持ち上げ、岩の周りに一気に敷き詰め水の流れを止めてしまったのでした。

つづく。


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