12月28日読書会サロン「テクノロジー思考」蛯原健著

こんにちは、そもんずです。
今回は、蛯原健さんの「テクノロジー思考」をとりあげたいと思います。
著者の蛯原さんにもご参加いただきますので、ぜひ、著者の方への質問も考えてみてください!!

■日時:2019年12月28日(土)10時30分~

■質問
①テクノロジー&イノベーションの重要性について、本書では冒頭に「テクノロジーか死か」、「イノベーションか死か」とセンセーショナルに冒頭で語られています。あなたはテクノロジーを拒否したり、イノベーションを拒んだりして消えて行った人やもの会社を実際に見たことはありますか?もしくは、どんな事例が思い浮かびますか?

②テクノロジー思考が欠けていると、正しく技術の価値が理解できず、盛り上がっている雰囲気などの気分にインフルエンスされて技術の価値を判断してしまいます。あなたは思い返すとテクノロジー思考の視点が欠けて失敗したな、と思う事例はありますか?反対にテクノロジー思考があったことで上手く行ったな、と思うことはありますか?それはどんなことでしょうか。

③デジタルフォーメーションによるイノベーションは、インターネットの広告に始まり、その外側(その他の産業&地方社会)へ広がりを見せています。本書では産業についてモビリティとヘルスケアが取り上げられておりましたが、普段の生活のなかで「これがイノベーションされれば良いのに!」と思いつくもの(=現状、不満に感じるもの)はありますか?それはどんなもので、どんな点でしょうか?

④3であげたことに対してデジタルフォーメーションによるイノベーションが狙えそうなことは思い浮かびますか?他の人も異なった視点からのアイディアがあれば出してみて下さい。もしなければ、他の人達でデジタルフォーメーションによるイノベーションが狙えそうなアイディアを皆で話し合ってみましょう。

⑤テクノロジー⇆アナログ、イノベーション⇆コンサバティブ(保守的)と2軸のグラフ上をイメージすると、キーは、テクノロジーを極める事ではなく、いかにコンサバティブからイノベーションへ移るかが肝だと(しんのは)考えました。
このため、その対極によるアナログ的な強み(直接的な対人交渉力など、テクノロジーでコピー出来ない固有スキル)を組み合わせることで、テクノロジーの外でも勝負が出来、差別化が計れるのではないでしょうか。あなたが他のかたから評価される強みはありますか。あなたの強みとテクノロジーを掛け算するアイディアはありますか。

■要約
1.概要
筆者の方がテクノロジーのレバレッジ(=テコの原理)を理解し取り入れ、マネジメントするものとそうでないもの、そもそもテクノロジーを理解するものとそうでないものにおいて生じる、大きな差を認識するに至った。

その大きな差は、本書ではセンセーショナルに「テクノロジーか死か」、「イノベーションか死か」と言う言葉で言語化されている。
本書で提唱されるテクノロジー思考とは、世の中の雰囲気に踊らされることなく技術の価値を正しく理解し、ノンテクノロジストでもその差を埋めることの出来る思考法である。

2.テクノロジー思考とは
テクノロジー思考を身につけるには、テクノロジーの歴史を知り、イメージではなくファクトを集め、歴史と事実からはじき出される未来を自分の頭で考えることである。
歴史に学べば、未来の方向性は大なり小なり想像可能である。

テクノロジー思考が欠けていると、テクノロジーを正しく理解できず、物事の背景について、テクノロジーの影響を見抜くことが難しい。
例えば昨今の仮想通貨バブルなど、歴史からハイプサイクル理論*1を学んでいないとイメージのままに振り回されたり、他人の描いた絵図を思考停止で受け入れてしまったりすることになる。

*1ハイプサイクル理論 新しい技術が注目を浴びてから社会に浸透するためには、バブル的な過度な期待と、その後の失望を経てから消えるものもあれば、着実な評価を得て社会に広く適用されていくものもある。

3.デジタルフォーメーションについて
テクノロジーによるレバレッジ×産業によって引き起こされる破壊的なイノベーションのことを、デジタルフォーメーションという。
インターネットの成長の本質は、広告のデジタルフォーメーション。
広告によるイノベーションで牽引されてきたインターネットは最早、成長産業ではなく実際は、すでに「インターネットの外」でレースが始まっている。

医療、交通、物流、教育、製造業といった分野がテクノロジーを用いて広告のように、再定義=デジタルフォーメーションされ始めている。

インターネットの外側では広告と異なり対象の産業の構造、実情を深く理解していないといけない。
複数のステークホルダー、業界、規制団体、労働組合といった一筋縄ではいかない相手とも戦わないといけないためである。(逆に言うと、これらの産業の知見と、テクノロジー思考を組み合わせたところに余白がある。)

デジタルフォーメーションを起こす上で重要なエッセンス
①いくつかの技術が同時に本格実用化する段階まで進化していること
②産業・社会が持つ大きな要請、問題が存在しそれに適切にミートするソリューション

4.デジタルフォーメーションのフロンティア
デジタルフォーメーションのフロンティアは、空間的にも奥行きをみせる。
テクノロジーの発展速度>人が都市部に居住地を集中(アーバナイゼーション)する速度となっており、早くテクノロジーが地方にいきわたる現象が起きている。

Eコマース、オンラインでの買い物は広く普及しているようであるが、実際は2割に達していない。地方に行くほど、100%オフラインである。
ここに膨大なフロンティアがある。

キーポイントはソフトウェアが従来の産業(製造業など)に対し、低コストでチャレンジ可能であるため、今まで儲からなかったことが収益化出来るようになってきたこと。

経済学ではこれを外部不経済の内部化という。

下記3つが揃うビジネスがネクストフロンティアたりうるポイントである。
①ソーシャルインパクト
②デジタルフォーメーション
③地方革命

例えばアグリテックはデジタルトランスフォーメーションであると同時に、地方をエンパワーするという革命、相対的貧困層に対する社会貢献を実現するソーシャルインパクトを持つ。
上記が三つ巴になったビジネスがこれから数十年で世界を変えていく。

5.イノベーション至上主義&スタートアップ全盛時代
デジタルフォーメーションが起きている時代を背景として、現代はイノベーション至上主義となり、スタートアップが全盛の時代となっている。

歴史から学ぶと人間は、石器という道具、駆動源を生み出した第一次産業革命の前と後、電力を生み出した第二次産業前後、これらが人類に対し圧倒的インパクトを与えてきた。コンピュータ革命のインパクトは、それ以前のものとは比べ物にならない指数関数的進化を起こした。富だけでなく、人類の寿命が延びるに至った。

今までもイノベーションによって人類はジャンプアップするように成長してきたが、現在のテクノロジーによるイノベーションは過去と比べ物にならないインパクトを持つ。

またソフトウェアの失敗のコストが安くなったことでマネジメントのルールが変わった。失敗に取り組みながら成功する、成功するまでの失敗のマネジメントを続けることが可能になった。

6.データ至上主義社会
Facebookやgoogleが個人情報データを活用し広告業界を寡占状態にすることで莫大な利益を生みだす状態となった。
潤沢な資金で勝負出来るため、もはや後発が参入する余地はない。
個人情報の集中装置としての側面をもち、データの一極集中は不可逆。
これに対し、米国大統領選のFacebook活用などから、カウンターとして反Facebookなど、その反動のムーブメントが生まれている。

プライバシー保護とデータ活用はイデオロギー論争となっており、ある価値観をもって、誰かがルールを決めるという行為をしないといけない。
欧州では個人情報保護=GDPRが施工された。
GDPRの具体的な内容は下記
① プライバシー保護
①データの独占による不当に偏った富の独占排除
②データの独占による不当に強大になった、あるいは成り得る社会的影響の排除

GDPRはキリスト教において根源的な人間の価値、個人の尊厳を重視する価値観を背景としており、個人データを全体主義的プラットフォーマーや国家権力から取り戻そうとしている。

データ至上主義におけるフロンティア「AIチップ戦争」
急激に進んだソフトウェア・ハードウェア両面の演算性能に対して、実用化・アプリケーション開発のスピードが追い付いていない。
人類が今手にしている膨大なイノベーション・マージン、革新すべき余白地帯が存在する。

7.テクノロジー思考の実践に向けて
具体的な思考様式は「具体と抽象の行き来」であり、テクノロジーにおいても本質的かつ重要である。

テクノロジーは物理的には例えば動力、電気信号、素材。
具体によって構成されている。淡々と必要なファクトの認知を行う。

抽象は該当テクノロジーを構成する物理に置いての法則性を発見せんとする一連の行為。
意思や意図、実際に人間社会に適用するための使用方法の構築。
集めた認知に対して、法則性や統一性を発見する。

そこに目的を付与する。

テクノロジー思考における「組み合わせ」
テクノロジーは新規の物でなくても良い。必ず他の異なるテクノロジーの組み合わせによって機能するもの。複数の組み合わせによって実用化する。

例えば、スタートアップエコシステムにおけるフィットと言う言葉は、
製品と市場や顧客とのフィット、すなわち組み合わせの良さが大事という観点である。

8.テクノロジー思考における未来論
テクノロジー思考で未来を描き、新たなことにチャレンジしていくなら当事者意識を持ってやれることを選ぶと良い。誰かから与えられたビジョンでは当事者意識が薄れ、思考停止になってしまう。
付録1.注目すべき国の歴史と今:インド
インドは新たに大国化する可能性がある国である。
アフリカも着目されているが、もっともGDPの大きいナイジェリアのGDPは、イランよりもはるかに小さい。

歴史的にインドはイギリスの産業革命によって、それまで安価な機会製綿布を作っていたが、負けてしまい深刻な貧困に陥ってしまった。
技術革新による生産性の差によって、貿易上の比較優劣が決まった。
そんなインドであったが90年代以降のIT産業を発展させ豊かになると同時に、優秀なテクノロジストの育成に成功した。
ヒンドゥー教の経典、ヴェーダ、ヴェーダ数学(2桁の九九) は文明の基礎、インドはテクノロジーに強い文化的な源流をもつことに秘密がある。
今となっては、エンジニアリングリソース供給力、世界中から参集してくるグローバルメガ企業、それに加えて国内経済の成長企業グーグル、マイクロソフト、GE、シーメンス、金融などに至るまで、大量のインド人の移民一世となるエンジニアが支えている。

しかしインドでも貧困層はテクノロジストになれる教育を受けるのが困難である。
授業は英語、地方の貧困層と都市のアッパーミドル以上の格差は広がり二極化していく。
アッパーミドル層は、まわりは起業家を志す環境で切磋琢磨していくなかで自分もやれると努力する(=ピア効果)一方、地方の貧困層では従来のままである。

これはインドのみならず新興国が大なり小なり共通して抱えている問題である。

付録2.注目すべき国の歴史と今:中国
中国の歴史をひも解くと、1500年代までは科学技術先進国。8世紀に木版印刷を発明、火薬、紙、羅針盤などを発明した。しかしその後、長い暗黒時代となった。
過度に官僚的な政治体系、自然科学と相反する文化傾向の強さ(易学、道教、五行思想)

潮目が変わったのは、鄧小平による 改革開放 である。
現在のテクノロジー大国と言うべき中国の体制になっていく。
具体的には深圳に経済特区を設けて、政治的にイノベーション都市とした。
政治体制はそのままに新たにかつ大胆に導入された市場メカニズムである。

第二次大戦後、世界は共産主義、資本主義両陣営に分かれてきたが、もはやこの対立軸でアップデートされていない考えが古いといえる。

今、管制スタートアップエコシステムが、欧州源流の資本主義、米国的リベラルな市場原理を打ち負かしそうになっている。
人類史上の大きな分水嶺と成り得る。
デジタルフォーメーションで、今までの常識が変化しそうな状況にある。
この管制スタートアップの隆盛は、計画経済のためモラルハザードのリスクを抱える側面を持つ。

今、米中で貿易戦争が勃発している。
冷戦のころは安全保障上の争い、経済とりわけ国際貿易上の争いであった。
近年では、それに第三の因子としてテクノロジーが加わるという変化が起きている。

中国では色々な分野で合弁企業を設立させて、現地合弁企業相手に技術情報を明け渡させるというビジネスモデルを行っていた。
これがテクノロジーの発展で致命的な意味をもつようになり、見過ごすことが許されなくなった。

またファーウェイは米国が敵性国家としているイランの通信会社と取引があったとし、世界中の政府機関に安全保障上のリスクがあるとしてファーウェイ製品の導入を控えるように働きかけることが起きた。(しかしそのエビデンスは示されていない。)

アメリカの視点にたつと貿易摩擦、ファーウェイに5Gの設備需要を取られるよりも、そのデファクトスタンダードを握られるほうが将来的に重大なリスクである。もし米国政府が中国ブロックを行っていなければ、世界のデファクトスタンダードをファーウェイが握っていたことになる。

続きをみるには

残り 103字

読書会サロン

¥500 / 月 初月無料

毎月2冊の課題図書を取り上げ、noteで議論するポイントを配信した上で、毎月2回のオンライン読書会(音声通話アプリZoomを使う)を実施し…

サポートいただけると、とっても嬉しいです!そもんずの創作活動に有効活用させていただきます。