かわら版No.25 米沢市立新中学校校名決定に係る条例の一部改正について、委員会の採決に言及する
いつもお読みいただきありがとうございます。今回は米沢市議会12月定例会の総務文教常任委員会(以下「委員会」といいます。)に米沢市教育委員会(以下「市教委」といいます。)から上程された「議第70号米沢市立学校の設置等に関する条例の一部改正について」(以下「条例改正案」といいます。)の委員会の採決について取り上げます。
この改正条例案は、皆さまもご存じかと思いますが、市教委から米沢市立中学校校名検討委員会に付託された新中学校の校名決定、具体的には「南成中」「北成中」「東成中」とする決定内容にともない上程されたものです。
去る12月6日委員会は、米沢市内の中学校を統合して2026年以降に開校する新しい3つの中学校の設置に関する条例改正案について、継続審査とすることを決めました。継続審査とは、厳密には、地方自治法第109条第8項に基づき米沢市議会規則第111条第1項に規定された“閉会中の継続審査”のことです。委員会の条例改正案の採決では、委員長を除く7名の委員のうち4名が継続審査を求め、うち3名は条例改正案賛成としましたので、結果として閉会中の継続審査が採択されました。
※議案の閉会中の継続審査は、米沢市議会では過去に例がないようです。
翌12月7日(木曜日)の山形新聞でもこの内容が記事になりました。記事では、その理由について、『委員らは方角のうち「西」が入っていないこと、開校まで時間がある一部の学区で住民への説明が不十分であることを挙げ、「まずは住民に丁寧に説明し、一定の理解を得るべきだ」などと述べた。』とし、また、条例改正案賛成の委員らは、『校名の決定権は市教委にあり、検討委の議論の結果も重視すべきだ」などした。』と掲載がありました。
委員4名は、閉会中の継続審査を。委員3名は、賛成意見を、述べました。では、この結果について、条例改正案賛成の委員の一人である佐野洋平として市民の皆さまに意見をお伝え申し上げます。
今回のポイントは、校名は議会の実質的審議事項か?ということが問題となります。この点、議会に条例改正案が示されたならば、議会は実質的審議権をその性質に関係なく持ち得るという立場もあろうかとは思います。しかし、当該事案については、①校名は市民からの一般公募であること、②学校名に関する実質的な審議は、市教委から負託を受けた一般市民を含む市内中学校の保護者や住民代表、学識経験者でつくる米沢市立中学校校名検討委員会で十分に行われたこと、③米沢市議会においては校名自体について協議・審議を実施していないこと、④米沢市立学校の設置等に関する条例第2条は「名称」「位置」を形式的に規定するにそもそもとどまること、このようなことから、米沢市議会としては、当該決定手続に一定の合理性があり(合理性テスト)また著しい瑕疵がないかぎり(重大な過失のテスト)、市教委の独立性(教育委員会法第1条)とそれが設置する当該検討委員会の自律性とその結論を尊重する立場にあり、校名決定権は、法的にも市教委の専権である性格が極めて強いと言えることから、条例改正案は、疑義なく、賛成承認すべきものです。なお、委員会に先立って開かれる市政協議会の質疑の中で、米沢市議会議長、当局担当部長の発言でも校名決定権は、市教委にある趣旨の発言がありましたし、委員会の質疑の中で委員長から校名決定権は市教委の専権であるとの発言がありました。
もっとも、この度の委員会の議決は、閉会中の継続審査でありました。今後は米沢議会規則に基づきその理由を付け委員長から議長に閉会中の継続審査の申出がなされ、米沢市議会12月定例会の最終日12月15日の本会議で改めてその可否の採決があります。
学校は、地域コミュニティの核であり、歴史文化が凝縮したとても大事な場所ですので統廃合するときの議論やその名称は重要なものです。今後は米沢市人口ビジョン※が示すように人口も急減し財政も厳しくなることが予想されるなかで、住民、議員、執行機関の3者の適切な関係性を保ちながら、知恵を出し合いより良い未来を描いていかなければなりません。住民の声をしっかり受け止めて説明責任を果たしていかなければならないことは言うまでもありません。(※2065年の米沢市の人口は約38,000人の見通しです。)
以上を総合的に勘案したとき、条例改正案は賛成可決し、教育行政を遅滞なく前進させ、同時に校名については市民住民学生保護者の皆さまにその趣旨と思いを丁寧にお伝えし説明していくことがより前向きな対応であると思います。
この度も、最後まで長文をお読みいただきありがとうございました。
【参照条文】
〇地方自治法
第百九条 普通地方公共団体の議会は、条例で、常任委員会、議会運営委員会及び特別委員会を置くことができる。
⑧ 委員会は、議会の議決により付議された特定の事件については、閉会中も、なお、これを審査することができる。
〇米沢市議会規則
(閉会中の継続審査)
第111条 委員会は、閉会中もなお審査又は調査を継続する必要があると認めるときは、その理由を付け、委員長から議長に申し出なければならない。
○米沢市立学校の設置等に関する条例
(目的)
第1条 この条例は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2第1項及び第228条第1項の規定により、米沢市立学校の設置及び使用に関し必要な事項を定めることを目的とする。
(設置)
第2条 本市に、学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に定める小学校を次のとおり設置する。
2 本市に、学校教育法第1条に定める中学校を次のとおり設置する。
米沢市立学校の設置等に関する条例 (g-reiki.net)
〇教育委員会法
(この法律の目的)
第一条 この法律は、教育が不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきであるという自覚のもとに、公正な民意により、地方の実情に即した教育行政を行うために、教育委員会を設け、教育本来の目的を達成することを目的とする。
かわら版No.25
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