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かわら版No.32 公共イノベーションラボ(Public Sector Innovation Labs、PSIラボ)はどうしたら、うまくいくか?

いつもお読みいただきありがとうございます。

米沢市議会は、今月31日に1月臨時会が招集されます。物価高騰緊急支援給付金に係るいくつかの給付事業についてや負担金の支出に係る追認の件などが上程議案となる予定です。地方経済の本当に厳しいこの現状を踏まえ、また、負担金の支出に係る追認の件など専門性の高い法律の理解が必要な議案もありますので準備を厳密にして臨みたいと思います。

さて、今回は、世界的に増えつつある公共イノベーションラボ(Public Sector Innovation Labs、PSIラボ)の役割とそれらが直面する課題、特に組織内の正統性の確立に関する調査についての論文を紹介します。この論文は、フィンランドの5つのPSIラボを対象にした研究を通じて、これらのラボがどのようにして経営陣や他部門の理解、支援、およびプロジェクトの機会を得る中で持続的な活動を続けることが可能になるかを探っています。

How do PSI labs establish legitimacy?: dynamics, approaches, and knowledge creation
Mori, Kazuki; Iwasaki, Hironori
International Association of Societies of Design Research Congress 2023 LIFE-CHANGING DESIGN
Politecnico di Milano 9-13 October 2023

上記がその論文です。

主なポイントは以下の3つです。

1.正統性の確立プロセス
正統性の確立は計画された結果ではなく、日々のデザイン実践から生じる動的なプロセスです。暫定的な状況や資源を うまく活用することが重要です。新しい試みは、日々の試行錯誤から生れます。実践の現場ではこの取組は正しいのだろうか?と葛藤が生じることもあると思いますが、その動きの中から正統性をつかみ出していくしかありません。

2.アプローチのカテゴリー
PSIラボが正統性を獲得するためのアプローチは、「プロモーション」(成果の広報)、「コラボレーション」(デザインプロセスへの組織アクターの参加)、および「ネットワーキング」(相互支援システムの構築)という3つのカテゴリーに分類されます。この3つのカテゴリーを認識したうえで、この具体的な活動を言語化し広く広報していくことが正統性の獲得にとても重要な役割を担います

3.知識創造との関連
正統性の確立プロセスは知識創造プロセスと重なり、コンフリクト(対立・衝突)を生じつつもその乗り越えの中で、組織内でのデザインに関する暗黙知と明示知の拡大に寄与します。クリエイティブなケースでは、価値の対立や意見の相違、世代間ギャップは想定内の出来事です。想定内の出来事として高を括って、何が問題や課題なのか論点を抽出して共有していきましょう。多くの気付きがあるはずです。

このように、この論文は、PSIラボが社会問題への対応とイノベーションを推進する上で直面する現在進行形の組織的な課題に光を当て、それを克服するための実践的なアプローチを探っています。そして正統性は、その場で・場当たり的に確立されることが判明しましたが、「アプローチのカテゴリー」を意図的に可視化していくことで、正統性の獲得を目指すという実践的な戦術に転化させているところがとても興味深いものになっています。

私たちのまち米沢でも、公共イノベーションラボ(Public Sector Innovation Labs、PSIラボ)の実践が始まるとすれば、この論文の結論は大きな補助線になるに違いありません。

今後は、世代交代ができたまち、つまり、新陳代謝が活発なまちが希望を感じることができる、そんな空気が明示的になってくると思います、そしてその結果として超高齢化の地方でも生き残りの入口に立つことができます。新しいことに挑戦し続けるまちだけが衰退を免れます。先を見据えなければなりません。

最後までお読みいただきありがとうございます。

かわら版No.32



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