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ビジネス上のお金の時効について解説!売掛金や貸付金にも時効はある?

企業間の取引では請求書を送付して、期日までに支払ってもらう請求書払いが一般的です。
請求書払いは事務処理を減らせる効率的な支払い方法ですが、時効によりお金を支払ってもらえない危険性もあります。
そこで今回は、ビジネス上のお金の時効期間や、未払いが発生した際の対処法を解説します。

この記事は20年以上金融サービスを提供してきたソモ㈱が執筆しています。
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お金の時効とは

ビジネス上では取引相手に商品代金の請求や支払いなど、頻繁にお金のやり取りがおこなわれます。
多くの企業は支払期限までに入金しますが、資金不足や処理漏れなどで、支払われないケースもあります。

代金が支払われない場合、すぐに問い合わせるのが基本です。しかし、「忙しいから時間があるときに確認しよう」と対応が遅れることもあるのではないでしょうか。
また、支払管理が甘く、未入金に気が付かないケースもあります。

時間ができたときに請求すればいい、と考えて長期間が経過すると、代金を受け取る権利が消滅するので注意が必要です。
代金を受け取る権利が消滅するのは、お金にも時効があり、一定期間を過ぎると支払い義務がなくなるためです。
未入金をそのままにしていると、商品やサービスの対価を受け取れず、働き損になるので入金管理は厳格におこないましょう。

ビジネスに関するお金の時効

2020年3月31日以前は、旧民法により時効は原則10年と定められていました。
ただし、業種によっては、以下のように細かく時効期間が設定されていました。

  • 飲食代金:1年

  • 宿泊費:1年

  • 商品代金:2年

  • 製造業・小売店などの売掛金:2年

  • 工事料金:3年

  • 家賃:5年

上記以外にも時効期間は細かく分かれていたため、自社の債権がいつ時効を迎えるのか分かりづらい状況でした。
この状況を是正するために、2020年4月1日に民法が改正され、時効は以下のように定められました。

売掛金の時効

商品やサービスを掛けで販売した場合の売掛金は、支払期限から5年が経過すると時効となります。
2023年7月に売掛金が発生して、末締め翌20日支払いが条件の場合、8月20日から5年経過すると時効です。

ただし、2020年3月以前に発生した売掛金については、旧民法の規定通り支払期限から2年が時効期間となります。

貸付金の時効

貸付金は、支払期日から5年が経過すると時効になります。
最後に借金が返済された日が2023年7月1日の場合、7月1日から5年が経過すると時効により返済が受けられません。
ただし、貸主と借主がいずれも個人である場合は、商事債権ではなく一般的な債権とみなされ、時効は10年です。

請求書の出し忘れた場合の時効は?

商品を販売したのに請求書を出し忘れていた場合の時効は、通常の売掛金と同じく時効期間は5年です。
出し忘れていた請求書を作成して設定した期限から5年ではなく、最初に販売した時点で取り決められていた支払い期限から5年です。

多くの企業と取引をしていると事務作業が膨大になり、請求が漏れる可能性は大いにあります。
しかし、請求漏れは資金繰りを悪化させる恐れがあり、ときには倒産に繋がるので注意が必要です。

損害証請求

事業を運営していると仕入れた商品に不具合があり操業を停止したなど、損害を受けることがあります。損害を受けた場合、損害賠償請求ができます。
損害賠償請求は、損害および加害者を知ったときから3年が時効期間です。ただし、人の生命や身体を害する不法行為の場合は、時効期間が5年になります。

ビジネス上でお金の時効を阻止する方法

お金の時効を阻止する方法には、完成猶予と時効の更新があります。

完成猶予

完成猶予とは債権者が権利行使をする意思を明らかにした場合に、一次的に時効の完成を猶予する制度です。
「権利行使をする意思を明らかにした場合」とは、以下の場合が当てはまります。

・裁判上の請求
・支払督促
・和解または調停
・強制執行
・催告
・承認
・仮差押え、仮処分
・競技を行う旨の合意

支払督促とは、直接相手企業に対して代金の支払いを依頼することではなく、簡易裁判所に申し立てをおこないます。
支払督促は裁判をしないで書類で判断されるので、費用が安く短期間で終結します。ただ、債務者が異議を申し立てると裁判に移行するケースもあります。

時効の更新

時効の更新とは、経過した時効期間をリセットして、1から時効期間を始められる制度です。
例えば、売掛金の支払期日から4年が経過した時点で、時効の更新が認められると、認められた日から5年間が時効期間となります。

時効の更新をするには、「裁判上の請求による更新」「強制執行等による更新」「承認による更新」の3つがあります。

未払い発生時にするべきこと

未払い発生時は、今後の取引を考えると、なるべく穏便に処理するべきです。ここでは、未払い発生時にするべきことを解説します。

未払いの理由を確認して支払いを要求する

未払いが発生したら、まずは相手企業に連絡をして、なぜ支払いがなかったのか確認しましょう。
単純に振込み処理が漏れていて、すぐに支払ってくれるケースがほとんどです。
ただし、何度も支払いが遅れるのであれば、資金繰りが悪化している可能性があります。
相手企業を訪問して様子を確認したり、同業他社に情報を聞くなど、今後の支払いに問題がないか確認しましょう。
倒産の兆候があれば、現金取引に切り替えるなどして、貸倒れを防ぐことが大切です。

商品の出荷を停止する

支払いを要求しても入金がない場合、取引を続けていると損失が拡大する可能性があります。
支払いの見込みが立つか、入金があるまで商品の出荷を停止しましょう。
支払いが遅れているのに「倒産はしないだろう」と甘く見ていると、巨額の損失を抱えてしまいます。
リスクを冒して売上を増やすよりも、損失を少なくする方が結果的に利益は増えるものです。

相殺できる取引を確認する

相手企業に商品を販売しているだけでなく、購入もしていれば代金を相殺可能です。
代金の相殺は契約書による事前の取り決めは必要なく、意思表示をすれば相殺できます。相手企業とのトラブルにならないように、相殺通知書を送付して証拠を残しましょう。
また、内容証明郵便を利用すると、より有力な証明となります。

ただし、契約書で相殺禁止の旨が取り決められていると、相殺はできません。相殺をする場合は、契約書を確認して相殺可能か判断してください。


まとめ

ビジネスではさまざまなお金のやり取りがありますが、時効が設定されているケースもあるので注意が必要です。
売掛金は支払期日から5年が経過すると時効となり、商品の代金などを支払ってもらえなくなります。
請求書を出し忘れていた場合も、当初の支払期日から5年が経過すると時効です。
代金を支払ってもらえないと資金繰りが悪化して、倒産する可能性もあるため、支払管理は入念におこないましょう。
未払いが発生したら、相手企業に未払いの理由を確認して、早急な支払いを依頼します。すぐに支払ってもらえないのであれば、商品の出荷を停止して、相殺できる取引を確認してください。


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