見出し画像

許容ロット統一理論

FXの勉強をし始めると,多くの人は許容ロットの計算の部分で躓くのではないか?少なくとも小生はそうだった.小生は,FX初心者向けの人気チャンネルを運営している「ユーちぇる社長」の次の動画

を観て概要は理解できた.しかし,取引する通貨ペアによって(一見)計算方法を変えなければならない点が気になっており,どの通貨ペアでも,更には,どんな通貨で証拠金を持っていようとも,許容損失額と損切り幅をpipsで指定すれば,許容ロットが一発で計算できる公式(名付けて「許容ロット統一理論」)があったらいいなと思った.それが本記事を書くことになった動機である.

予め言っておくと,この記事はかなりマニアックな内容であり,ほぼ全ての人には無用の長物と思われる.言い方を変えれば,トレーダーが日常的にやっている普通の計算を,小難しく書いただけである.この記事を読んで何かしら得るものがあるのは,国内外のいろいろな口座でいろいろな通貨ペアのトレードをしており,ロット計算をよく間違えたり,計算自体にストレスに感じているから,いつでも使える便利な公式が欲しい!と思っている限られた人だけだろう.

因みに,本noteの管理者(somo2oji3=そもそもオジサン)は本記事の執筆時点(2024年11月上旬)で,FX初心者どころか,FX口座も開設していないど素人である.表題の件について,ユーちぇる社長の動画を観ながらいろいろ考えていたら上手く定式化できたので,ここに備忘録として記録するだけである.もし玄人の方がこの記事を読んで間違いを見つけた場合は,優しく指摘して頂きたい.


記法

統一理論というからには,一般的な議論をしなくてはならいので,記号も一般的なものを導入しなくてはならない.やむなし.

いくつもの通貨(currency)を扱うから,それらに通し番号を付けて,$${{\rm CUR}_i \; (i=1,2,3,\cdots)}$$と表し,通貨$${{\rm CUR}_i}$$の単位を$${\$_i}$$と表すことにする.例えば,$${{\rm CUR}_1={\rm EUR}, {\rm CUR}_2={\rm USD},{\rm CUR}_3={\rm JPY}}$$なら,$${\$_1={\rm E}, \$_2=\$, \$_3=\rm{Y}}$$である($${\LaTeX}$$でユーロや円の単位を上手く書けないので,ユーロを$${{\rm E}}$$,円を$${{\rm Y}}$$と書くことにする).

通貨ペア$${{\rm CUR}_1/{\rm CUR}_2}$$について,単位pips当たりのレート(つまり,1pipsが何$${\$_2}$$に相当するか)を$${\delta_{21} [\$_2/\$_1 \cdot {\rm pips}] }$$で表すことにする.また,単位ロット当たりの通貨量を$${ \Delta_1 [\$_1/{\rm Lot}]}$$と表すことにする.この辺りが一番分かり難いが,例えば,$${{\rm CUR}_1/{\rm CUR}_2={\rm USD}/{\rm JPY}}$$ならば,1pips=0.01円であるから,$${\delta_{21}=0.01 {\rm Y}/\$\cdot {\rm pips}}$$であり,1ロットが1万通貨のFX会社なら$${\Delta_1=10,000 \$/{\rm Lot}}$$である.

最後に,通貨ペア$${{\rm CUR}_1/{\rm CUR}_2}$$の為替レートを$${r_{21}[\$_2/\$_1]}$$と表すことにする.例えば,$${{\rm CUR}_1/{\rm CUR}_2={\rm USD}/{\rm JPY}}$$ならば,$${r_{21}=151.23{\rm Y}/\$}$$などである.当然,$${r_{12}}$$と$${r_{21}}$$の間には$${r_{12}=1/r_{21}}$$という逆数の関係があるし,三つの通貨$${{\rm CUR}_1,{\rm CUR}_2,{\rm CUR}_3}$$の為替レートの間には,$${r_{12}r_{23}=r_{13}}$$などの関係がある.


統一理論

FX口座に証拠金(margin)を通貨$${{\rm CUR}_3}$$で$${m [\$_3]}$$入金してある状態で,通貨ペア$${{\rm CUR}_1/{\rm CUR}_2}$$のトレードをする場合を考える.1回のトレードで,証拠金$${m [\$_3]}$$の$${100\epsilon[\%]\;(0<\epsilon<1)}$$の損出を許容し,エントリーポイントから価格が思惑とは逆方向に$${p [{\rm pips}]}$$動いたら損切りすると仮定する.このときの許容ロット$${\ell [{\rm Lot}]}$$は,次式で与えられる.

$$
\begin{align*}{}
\ell [{\rm Lot}]=\frac{\epsilon m [\$_3]}{p [{\rm pips}] \times \delta_{21} [\$_2/\$_1 \cdot {\rm pips}] \times \Delta_1 [\$_1/{\rm Lot}] \times r_{32} [\$_3/\$_2]}.
%\frac{\mbox{許容損失}}{\mbox{損切り幅}}  
\end{align*}
$$

右辺に大量の単位が現れているが,単位同士の積や商を実行すると,殆どが相殺して右辺の単位も全体としてはLotになることを確かめられる.これが,証拠金の$${100\epsilon[\%]}$$を失っても構わないとし,損切り幅を$${p[{\rm pips}]}$$と設定するトレードにおける許容ロットの計算方法である.任意の通貨で証拠金を持っている状態で,任意の通貨ペアを取引することを想定している点で一般的である.

適用例

ドル/円の場合

日本のありふれたFX会社で,ドル円をトレードすることを考えよう.20万円の証拠金を入れてあり,この証券会社では1Lot=1千通貨だとする.1pipsは0.01円である.そして,今回のトレードではロングで入り,価格が50pips下がったら損切りをし,最悪の場合には証拠金の2%を失っても構わないとする.このときの許容ロットは次のようになる.

$$
\begin{align*}{}
\frac{0.02 \times 200,000}{50 \times 0.01 \times 1,000 \times 1}=8{\rm Lot}.
\end{align*}
$$

ユーロ/ドルの場合

日本のありふれたFX会社で,ユーロ/ドルをトレードすることを考えよう.100万円の証拠金を入れてあり,現在のドル円レートは1ドル151.86円,この証券会社では1Lot=1万通貨だとする.1pipsは0.0001ドルである.そして,今回のトレードではショートで入り,価格が80pips上がったら損切りをし,最悪の場合には証拠金の5%を失っても構わないとする.このときの許容ロットは次のようになる.

$$
\begin{align*}{}
\frac{0.05 \times 1,000,000}{80 \times 0.0001 \times 10,000 \times 151.86}\simeq4.11{\rm Lot}.
\end{align*}
$$

いいなと思ったら応援しよう!