『オイル』 ~対談第2回~

第2回 上野隆樹×福澤康仁



上野:お疲れ様です。えっと今日が稽古3週目の最後の稽古の日なんですけど。

福澤:土曜日は長いね。

上野:ですね(笑) ちなみにこれを撮ってるのが土曜日なんですけど、1日稽古してるので、やっぱり長いすね。疲れますよね。

福澤:そうだねぇ。


●初めての「オイル」/久しぶりの「オイル」

上野:今回「オイル」っていう作品をやるにあたって、最初にこの作品に出るってなった時、どう感じましたか ?

福澤:まず、「オイル」っていう作品は僕見たことなかったんですよ。だから よくわかんなかったんですが、まずは俺みたいなのが出ていいのかっていう(笑)ただの素人が 出ていいのかっていうのが一番大きいですね。

上野:いやいやいや(笑)

福澤:恐ろしい出来事だなと(笑) 勇気あるなって。

上野:「オイル」という作品自体は知らなかったんですね。

福澤:うん。知らない。野田さんは知ってたんですけどね。相当昔に観てたけど・・・その時見た感想としては、めっちゃ頭いいなこの人!普通の人じゃないな!って思いましたね。

上野:それは夢の遊眠社の時ですかね?

福澤:そうだと思います。野田マップになってから見てないんじゃないかな。

上野:自分は最初に「オイル」を観たのは映像でした。野田さんのことも知ったのはここ2~3年前ですね。


上野:僕らそめごころは「オイル」を2年前に上演してて、その時まだ僕はメンバーじゃなかったので、客演として参加したんですが、今回久しぶりにオイルをやるっていうことで、前回と全然違うなぁと感じてますが。


●「オイル」という作品


上野:今稽古やりながら、作品をどういう風に感じてますか?

福澤:台本読んでて、頭良い人が考えてるんだろうなっていう(笑)何か試されてるような気がするんだよね。ここは単なるギャグなんですよ、深読みしすぎてるよーとか 、いやいやそこは考えないとダメだよとか、なんかこう、この人は、俺達がどう読み取ろうとしてるのかを、試してるんじゃないかなぁみたいな(笑)実はどこかで、メッチャほくそ笑んで、ほぉ!そうきたか!って笑ってんじゃないかなと思ってて。


上野:めっちゃわかります(笑)稽古場で台本の中にある「デカダンス」という言葉を読み取って、あーでもないこーでもないってやってたんですけど、あそこは単なるギャグだぜ!みたいな感じだとしたら、面白い光景でしょうね。

福澤:なんていうか、意地悪っていうか(笑)いろんな謎を含んでいるようで、実はギャグだったり。でもここは重要だよみたいな。やっぱ天才の考えてることは違うなと思いましたね。

上野:なんか作品自体も、戦争の話で、大風呂敷広げているように見えますけども、前に稽古場で話してたみたいに、意外に富士さんの個人的な想いを描いてるんじゃないかなって話もしてたり。

福澤:なんとなく、富士さんは弟のヤマトがとにかく大好きなんだろうなっていうのはありますよね。

上野:ありますね(笑)

福澤:何かあると死んだヤマトのことを思い出して、そして周りの人の幸せそうな姿を見て、うーん何だろうって思ってるのかなって 。

上野:うんうん。

福澤:こっちはヤマト死んじゃったんだよ?って。あんたたちは良いよね、みたいな、なんかそんな風に見えて。ヤマト君のこと好きだったんだろうなって、ちょっと僕は思いましたね。


上野:ああ確かに。なんか自分の家族は死んじゃってるのに周りはそれを、まあ自分のことじゃないっていうのもあって、切り換えてて、もちろん周りの人も大切な人を亡くしてるんだろうけど、切り替えてコーラ飲んでて、なんでそんなことができるの?っていう。それだけのことなのかもしれないですけどね、もしかしたら。

福澤:なるほど。



●ハリボテの人たち

上野:僕ら日本人の役じゃないですか。日本人の役自体はどうですか?

福澤:なんだろう・・・なんか富士さんが思ってる日本人っていうのはどんな感じかなぁみたいな。彼女が思ってることを、そのまま形にしてるのが、あの日本人なのかなぁって。

上野:あーなるほど。

福澤:富士山が思ってることを、そのまま形にしてるのかなーっていうね。 だから、彼らには深い感情を感じない。唯一心情を感じてるのはヤマトだけで。他の人については、そんな人達もいましたねぇ、みたいな(笑)そんな感じがあるのかなぁ。

上野:なんか日本人の台詞一つ一つに、なんか実感がこもってない気がする瞬間が多いんですよね。なんというか、日本人その人自身が考えてることじゃない気がする瞬間が結構あって。なんか演劇やお芝居で、演じるみたいなことをやってると、この人のこういう思いが台詞になったんだろうなぁ、って感じる瞬間が結構あったりするんですけど、 日本人は今やってても、あんまりそういう風に感じる瞬間がないなーって。台本読み込んでいったらまた変わるかもしれないですけど、確かに凄いキャラクターとしてしゃべらされてるって感じる瞬間が多いなぁっていうのはありますね 。

福澤:ヤマトとふじさん、っていうのがすごくあるんだけど、それ以外の人たちは、立体化されてないというか、ハリボテみたいな(笑)うしろ回り込むとスカスカみたいなね。

上野:それと、僕は神3人のことをやっぱり中身スカスカに感じちゃうんですよね。

福澤:まあ神だから人間性なんて無いかもしんないけど、感情的な感じもしないよね。

上野:何か与えられてるフレーズ喋ってる感が(笑)最後の日系人の場面になった瞬間に、こう初めて実体になるような気がするんですけど。それまではすごいスッカスカだなこの人達っていう(笑)感じがあるんですけどね。

●本番に向けて


上野:お時間ということで。最後なんかまとめじゃないけど これから本番まであと1か月ちょっとくらいになりますけど、これからの意気込みとか目標とかあれば。

福澤:足を引っ張らないように頑張るしかないんだろうなぁ(笑)と思うんだけど。 まあ石田さんも言ってたけど、一旦始まったら終わるまで、どうにかお前たちで何とかしろっていう(笑)まぁその通りなんだなと思って。 スポーツの試合と一緒やね。監督何もできないもんね、始まったら。やってる選手が最後までとにかくやりきるしかない。できるだけ万全の準備をして、あとは本当にやりきるかなって感じです。

上野:まあ僕自身もあと少ししかないので、今回求められているものは前回と全然違うのし。さっき仰ってましたけど、最後は僕らにかかってるんだろうなっていう気がしますね。一人一人の役者がやれることを、全力でやるしかないっていう。まぁ今回は一回公演だから、そこでなんとかしないと何も残せないから。最後まで積み上げていけたらなぁと思います頑張っていきましょう(笑)ありがとうございました 。

福澤:ありがとうございました。

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