ちゃーちゃんと花火大会の音 田島宏人
皆様 、7月の夜をいかがお過ごしでしょうか。体調など崩されておりませんでしょうか 。
僕は先ほど稽古を終えて、その後メンバーと一緒に公園で喋った後に帰宅して、今この文章を書いています。
帰りがけに、夜中なのに蝉がちょっとだけ鳴いて、すぐに止めた声を聞きました。 何かの夢を見ていて、寝言のように鳴いていたんでしょうか。
一体蝉はどんな夢を見ていたんでしょうか。素敵な出逢いを夢見て先走って鳴いたんでしょうか。これが夏の夜の夢というものなのでしょうか。
失礼しました。改めて、演劇ユニットそめごころの田島宏人と申します。次回公演の「オイル」に向けて稽古をしていく中で感じていることを、今日聞いた蝉の寝言のように、短く儚く書いていくので、さらっと読んでいただくと幸いです。
今回の「オイル」の稽古では、個人的に身内のことをよく思い出します。
もちろん、今回僕がもらった役のヤマトという人は、富士さんっていう姉がいるわけで、僕にも実際姉がいるので思い出されるわけですが、今日書きたいのは、僕の祖母のことです。
僕の祖母は、昔から花火大会に行きませんでした。ちなみに僕は祖母のことを、ちゃーちゃんと呼んでいます。
僕がまだちっちゃい頃、家族で花火大会に行く時に、僕は毎年ちゃーちゃんを誘うんですが、ちゃーちゃんは必ず行かないって言います。理由を聞くと、花火の音が怖いんよって言ってました。
ちゃーちゃんには、花火の音が空襲の音に聞こえるのだそうです。
ちゃーちゃんは昔から、戦時中のことを話してくれていました。
「空襲警報がウ~って鳴ったらね、弟たちと一緒に防空壕に入るんよ。暗いし、音がえずかった(怖かった)けん、私怖いで泣きよった。でも弟は偉いけん、泣かんで私に、大丈夫よってなだめてくれよった。そして明くる日学校に行ったら、先生がね、同級生の女の子が亡くなりましたってみんなに言ったんよ。家の電気消し忘れてね、空襲の目標にされたって。あんまり言われんけどね、首が飛んどったんて。」
僕はちゃーちゃんから、その話を30回くらい聞いたと思います。
「オイル」に登場する富士さんも、電話の向こうの、弟の声だけが残ったって言うんですが、
ちゃーちゃんにとって、同級生を殺した音が、自分を殺したかもしれない音が、耳にこびりついていたんだなぁと、今稽古をやりながら考えています。
僕は空襲の音は知りませんが、花火大会の音を聞く度に、ちゃーちゃんの空襲のお話を思い出します。
今、ちゃーちゃんは老人ホームにいます。忙しさを理由にして、なかなか会いに行けていません。
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