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何をぬかすんや。ばかっ!詐欺め、かたりめ!

人生のどんなすみにも、どんなつまらなそうな境遇にも、やっぱり望みはあるのだ。そう思うと譲吉は世の中というものが、いままで考えていたほど暗い陰惨な所ではないように思われた。彼は平素よりも、晴れ晴れとした心持ちになっている自分を見いだした。
『出世』より

少し上から目線の感じもあるけれど、「どんな人にも幸せになってほしい」という作者の優しい思いが分かった。

『父帰る・恩讐の彼方に』
#菊池寛
カバー絵 #東光寺啓 挿絵 #松田穰 
解説が3人も。参考になった。 #尾崎宏次 #三宅周太郎 #菊池英樹 

今回は『出世』『父帰る』『屋上の狂人』『時の氏神』が初読み。

●『藤十郎の恋』の戯曲バージョンは初読み。戯曲だと尚更、藤十郎の、「芸の為なら女を泣かす〜」どころか女を自殺させても開き直る異常さが際立つ。今の日本では、ネタがウケると思ったら弱者へどんなえげつないことでもするネトウヨやインフルエンサーと、その取り巻きか。

●『父帰る』は、あぁ、こんな話なのか!と意外な納得。

新二郎
(涙をのみながら)しかし兄さん、お父さんはあのとおり、あのとおりお年を召しておられるんじゃけに......。

賢一郎
新二郎!お前はよくお父さんなどとそらぞらしいことが言えるな。見も知らない他人がひょっくり入って来て、わしたちの親じゃと言うたからとて、すぐ父に対する感情を持つことができるんか。

新二郎
しかし兄さん、肉親の子として、親がどうあろうとも養(やしの)うていく……。

賢一郎
義務があると言うのか、自分でさんざんおもしろいことをしておいて、年が寄って動けな
くなったと言うて帰って来る。わしはお前がなんと言っても父親(てておや)はない。


(憤然として物を言う、しかしそれは飾った怒りで何の力も伴っていない) 
賢一郎!お前は生みの親に対してよくそんな口がきけるのう。

賢一郎
生みの親というのですか。あなたが生んだという賢一郎は二十年も前に築港で死んでいる。あなたは二十年前に父としての権利を自分ですてている。今の私は自分で築き上げた私じゃ。私はたれにだって、世話になっておらん。
『父帰る』より

真面目な長男が父親を糾弾。親権放棄するような親を子は養う必要はないと。これを大衆向けの戯曲として大正6年に発表したのだから、当時かなり衝撃的&進歩的だったのでは。文学の進化と社会の進化。

でもせっかく進化してきた多様な家族の在り方を逆行させるのが、今の自民党の理想の家族観。公助に頼らず、家族は互いに助け合わなければならないという伝統的家族観の呪縛。そしてそれはカルト統一教会の家族観とそっくりだと言う、、。

●『屋上の狂人』ではこれも賢い青年が、大川隆法みたいなイタコ芸の巫女へ「何をぬかすんや。ばかっ!詐欺め、かたりめ!」と叫びます(笑。

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