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タイムスリップした🌀 (本で)

カバー #中村正義 解説 #河盛好蔵

#井伏鱒二 『さざなみ軍記』『ジョン万次郎漂流記』『二つの話』の三編。

やがて岡の麓(ふもと)の朝靄(あさもや)のなかに、薙刀を杖(つえ)にしてのっしのっしと歩いて来る覚丹の姿がぼんやり現れた。私はきまり悪いのを忘れて軍扇を高く打ち振った。小太郎も軍扇を高くさしあげて「ウッフーイ、ウッフーイ」と、わが水軍の方式で鬨(とき)をあげた。時ならぬこの鬨の声は、覚丹でなく浜の御所の陣にいた兵卒たちの反響を呼び起した。その方角の靄の底から「ウッフーイ、ウッフーイ」と呼応する声が起った。
『さざなみ軍記』

ウッフーイ、ウッフーイ!

🐴『さざなみ軍記』は平家没落の創作物語。今まで軍記ものに全く興味無かったから、読みづらいかなと思ったが、諸行無常とか盛者必衰とかいうワードが思い浮かび、そーいうのを味わえば良いのかもと。(単純)

覚丹は私たち一門の亡(ほろ)びて行くのは止むを得ぬ辞世の流れであると断定し、入道相国の専横は未完成の武家政治の姿であったと言っている。そしてこの次に来るベき完成された武家政治は、源九郎の手によって確立されるだろうと言っている。覚丹自らは時勢と共に押しながされ自然の流れにしたがって世をのがれるため、私たち一門に加わっているにすぎないという口吻(こうふん)である。私は恰も絶望の書を読んでいるような気持ちにおそわれて、半ばまで読んで巻を閉じ、その「寿永記」を覚丹の具足櫃に収めた。
『さざなみ軍記』

⛵️『ジョン万次郎漂流記』は1937年、第6回直木賞受賞。
恥ずかしながら、「漂流して…帰国した」ぐらいしか知らなかったので、こんな大冒険だったのか、しかも帰国後も大活躍するんだ、、と驚いた。日米合作で映画化になれば良いのに。 #ジョン万次郎 

🕑『二つの話』はなんとSF。作者が甲府の疎開先で知り合った少年二人と、少年たち憧れの江戸時代にタイムスリップするという、、。話をどう決着させたら良いか分からなくなって、タイムスリップしたまま中途半端に終わらせるのもすごい(笑。

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