文舵2回目 ベッキー回答

問2:一段落くらいで、動きのある出来事をひとつ、もしくは強烈な感情(喜び・恐れ・悲しみなど)を抱いている人物を描写してみよう。文章のリズムや流れで、自分が書いているもののリアリティを演出して体現してみること。(~400文字前後)

A:
「ごめんなさい。そんな風に想われてたなんて知らなくて」
数時間前の出来事だった。
その言葉を聞いてからのことは良く覚えていない。
分かった、とかごめん、とか。
せめてそれくらいは言えたのだろうか。
それすらも覚えていない。
ただ彼女の愛想笑いを見てしまったら、
急に色んな熱がスーっと引いてしまって。
頭の中が真っ白になって、気付いたらこんな場所にまで来てしまった。

街はずれにある、存在自体が忘れ去られてしまったような小さな公園。
もう大きな公園は遊具なんて危ないからと撤去されているはずなのだけど、
ここだけはさびたブランコと小さな滑り台が残っていた。

滑り台に乗るのはなんだか恥ずかしくて、
その小さなブランコに乗ってみる。
きぃ、と音を鳴らしながら、ブランコは僕の体重を支えてくれた。
それが何故だかありがたくて涙が出そうになった。
涙の味はまだ知りたくない。
涙が流れたことを認めたくない。
だからその涙を飛ばす様に思い切り漕いでみる。
頬に流れた涙は、重力のおかげで口元を避けて滑り落ちていく。
それが嬉しくて、思わず顔を歪める。
だけど、しまった。
そのせいで僕は初めて失恋とはどういうものなのか知ってしまった。
少し苦くてしょっぱくて。
きっと失敗した恋は焦げた塩で出来ている。

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