文舵1回目 ベッキー回答


〈練習問題①〉文はうきうきと (本文p31~)

問1:一段落〜一ページで、声に出して読むための語り(ナラティヴ)の文を書いてみよう。その際、オノマトペ、頭韻、繰り返し表現、リズムの効果、造語や自作の名称、方言など、ひびきとして効果があるものは何でも好きに使っていい――ただし脚韻や韻律は使用不可。

A1

まず語りってのがまず俺には分からない。
ずらずらと物事を並び立てればそれでいいのか、
それとも一つ一つをしっかりと順序立てて話していけばいいのか。
さぁいざ書こうと思いたってパソコンを目の前にしても、
どうにも具合が悪くてそもそも何を書けばいいのか分からない。
俺が思うに、多分考えすぎが良くないんだ。
こんなものはパッと頭の中に思い浮かんだものを書けばいいんだろう。
…………。
……おかしいな、パッと思いついたものを書けばいい。
それなのにちっとも手は動きやしない。
どう始めればいいのか、どう膨らませればいいのかがよく分からない。
分かった、認めよう。俺には想像力ってものが足りないのかもしれない。
しれないって言い方も良くないな、絶対そうだ。
だってひと段落でもいいと言われているのに、
そのひと段落ですら書くことができないんだ。
人は考える葦であるなんて言葉があるが、
多分俺はその中でも一等特殊な考えない葦なんだろう。
あぁどうすりゃ語れる。
どうすりゃ俺は胸を張って語りを書いたぞと言える様になるんだ。
頼むよ、誰か俺に語りってやつを教えてくれないか?

A2

じぃぃぃん、と音が部屋の中で響いてる。
実際に鳴っているものなのか、今の自分には検討もつかない。
別にどうでもいいことではあるし、そんなことを考える暇があるなら、
もっと有益なことを頭の中に思いうかべればと思う自分もいる。
ただ、そんな有益なことが思いつく頭であるならば、
そもそもこんなことが気になったりはしないんじゃないだろうか。
とにかく暇で暇でしょうがないから、
時間を潰すためにもぼーっと考えてみる。
耳鳴りのようでいて、酷く既視感を覚える音であるのは間違いがない。
幸運なのか、不運なのか、部屋に響くこの音は
自分にとって別に不快感を感じるものではなかった。
普通こういった音は普通の人々には嫌な部類のものであるはずだけれども。
何故だろう。ここでもまたどうしてと頭に疑問が一つ浮かぶ。
この調子で増え続けてしまったら自分の頭の中は、
はてな記号で一杯になってしまう。
さて、疑問を消すためにはどうすればいいのだろう……いや、
だからこういうのが良くないんだ。
まずは最初の疑問から解消してみよう。
そうすれば多分きっと、
このもやもやした頭の中がすっきりと片付くはずだから。
ゆっくりとベッドから起き上がる。
頭の中ではこんなにもぐだぐだと考え事をしている余裕があるのに、
動きは自分でも驚く程に緩慢だ。
それでもじりじりと眠たい身体を必死に動かして、
閉まっているカーテンを開けてみる。
暗い部屋は太陽に照らされ、籠っていたあの耳鳴りのような音が、
急に鮮明さを増していく。
じぃぃぃんではなくて、ジージージー。
耳鳴りでもなんでもない。外からどこからともなく、
季節を知らせる音が聞こえてくる。
そこでようやく分かった。
あぁ、やっと夏が来たのだ。

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