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つぶやきソリュエイ(8月10日)「企業に求められるIT人材像」

本日のつぶやき
高度IT人材の確保は企業の至上命題

中小企業をとりまく環境

経済産業省が23年4月に発表した中小企業白書では、日本の企業は現在、収益は回復傾向にあるものの、物価高騰、深刻な人手不足など引き続き厳しい状況にあります。

図1:エネルギー・原材料価格高騰による企業業績への影響(経常利益)
㈱東京商工リサーチ「中小企業が直面する経営課題に関するアンケート調査」より


図2:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」より
※従業員数過不足数DIとは、従業員の今期の状況について、
「過剰」と答えた企業の割合(%)から、
「不足」と答えた企業の割合(%)を引いたもの。


そして、この状況を乗り越えるために「国内投資の拡大、イノベーションの加速、賃上げ・所得の向上」の3つの好循環の実現が重要であると示しています。
この好循環、特にイノベーションの加速の実現には、デジタル化による生産性の向上、ならびにDX(ITの利活用による変革)による競争優位性の確保が大きく寄与すると考えられます。私の調査では、これらの状況に合わせて業務関連のITベンダーは、約5年にわたる「働き方改革」推進、新型コロナへの対応を通じて、ソリューションの種類やカバー範囲を大きく増加・拡大させております。
例えば、他社製品も含む複数のソリューションをあたかも一つの統合システムのように運用できる「コンポーザブルシステム」や、複数のSaaSソリューションを組み合わせて利用できる「iPaaS」のように、ユーザの要件に合わせて自由にシステムを選択できるようになりました。
また、中小企業庁が研究を重ねている中小企業共通EDI(電子取引)の仕組みでも、業務時間の大幅な削減が見込める(参考:中小企業共通EDI)という報告もあり、今後、IT利活用戦略は中小企業において、より一層重要な位置を占めるようになるでしょう。

IT戦略のための人材の重要性

このように中小企業経営に関連するITソリューションが多様化・複雑化すると、選定、導入、運用のための企業側のIT人材もより高度なレベルが要求されます。
経済産業省はデジタルスキル標準の中で、経営者も含めたすべてのビジネスパーソンが社会変化の中で新たな価値を生み出すために必要なマインド・スタンスを知り、自分の行動を振り返ることができるようになるべきと主張しています。

経済産業省 「デジタルスキル標準」マインド・スタンスより抜粋

そのうえでDXを推進する人材として5つの累計を定義しています。

図3:DXを推進する5つの人材類型 (経済産業省「デジタルスキル標準」)

もちろん関連するすべての人材を自社で雇用する必要はなく、外部コンサルタントやベンダーのスタッフを必要に応じて活用いただければよいのですが、最低一人は自社の事業目的、経営方針から細部の業務課題までしっかりと把握したうえで、限られた予算のもと、市場に出回っている多種多様なITソリューションを選択し、運用まで導くことができるような人材が必要となります。
それはまさに前出のビジネスアーキテクトであり、与えられるべき理想的な役職としてはCIO(最高情報責任者)ですが、日本でのCIOの設置は漸増傾向にあるものの十分とは言えない状況にあります。(JUAS:一般社団法人 日本情報システムユーザー協会調べ

今こそリスキリングの活用を

このCIOに近い位置にいるのが情報システム部門の担当者ですが、多くの企業において、ITの担当といえば、社内IT機器やソフトウェアのメンテナンスで手一杯で、経営と最新ITを融合させられるような人材が育つ環境になっていないというのが現実です。
前項で述べたように、イノベーションを加速させるITの効果的な利活用のためには、ビジネスアーキテクトに代表される高度IT人材が必須となりますが、採用市場では高度IT人材の供給は少なく、自社に適した人材の確保が難しい状況にあります。
そこで自社のIT担当や管理部門の統括担当といった、ITもしくは経営管理になじみある人物に、リスキリング(職業能力の再開発・再教育)を施し、高度IT人材に育て上げます。
この高度IT人材育成の結果、自社の状況を十分に把握したうえでの適切なIT投資が実現できるようになります。
リスキリングは国も推奨しており、厚生労働省が人材開発支援のための助成金を設定しておりますので(人材開発支援助成金)、ぜひこちらもご活用いただければと存じます。
この時大事なことは、対象となる人をこれまで従事していた仕事から解放し、十分な時間的精神的余裕を与えたうえで取り掛かってもらうことです。

まとめ

Windows95が発売され、一人一台パソコンを使うことが一般的になってから約30年、当時新卒入社した人が経営者になりIT利活用に抵抗なく取り組むことができる企業も増えています。
近年の著しい社会環境変化に対応するためには、経営者をはじめとするすべてのビジネスパーソンが時代に即したマインドチェンジをしていく必要があります。そのうえで職業能力の再構築(リスキリング)と適切なITの利活用で、イノベーションを加速、企業利益を改善し、新たなる人材確保、賃上げ・所得の向上の好循環を実現させましょう。



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