とある記録媒体紛失の報告に思うこと

とある情報記録媒体紛失の際に関係した会社がHPに記載した報告について思うところがあってブログに書きます。
(※紛失事件そのものの評価についてはここでは触れておりません。)

事件の概要は地方公共団体の仕事を多重請負した結果、末端の従業員が住民の情報が入った記録媒体を紛失してしまいました。このときの請負構造は、元請(A社)→下請(B社)→再委託先(今回事故を引き起こした社員のいる会社)だったのですが、事件を起こしたのが再委託先の従業員だったことが分かったのは発覚から1日たった後でした。
このとき各社がどんな声明を発表しているかが気になったので、各社のHPを見たところ、B社のHPではトップページに「重要なお知らせ」としてこの件に触れていました。

「(地方公共団体)様の情報を紛失したのはB社(この会社)の社員ではございませんでした。ですが、弊社委託先の所属社員が起こした紛失事故であるため、今後、A社(元請会社)と共同で調査を実施いたします。関係者各位には多大なご心配をおかけいたしました。」
(団体名を伏せるために一部内容を変更しています)

私がまずここから読み取ったのは「事故を起こしたのは弊社の社員じゃありません」ということを主張したいんだろうなということです。
そして「うちの社員じゃないけうちにも責任の一端がないわけじゃないから調査するよ」ということなのかなと思いました。
気持ちはわかります。しかし私はこの書き方は良くないと思います。
これを読んだ人の中には少なからず「責任逃れがしたいのね」と思う人がいるのではないでしょうか。

私ならこのように書きます。
「(地方公共団体)様の情報を紛失した件について、調査の結果再委託先の従業員であることが判明いたしました。本件について管理会社として重く受け止め、しっかりと調査、再発防止に努めます。」
この二つの文、言っている内容は(多分やることも)全く変わらないのですが自社に主体性がある表現かどうかが大きく違うのです。

この事件は明らかに関係各社の管理がなっていない結果起こったことだと思います。それ自体はあってはならないことです。ただどんなに対策しても(確率は減るものの)事故は起こります。
私が今回問題にしたいのは(ここ大事)、事故を引き起こしたことそのものや多重請負構造に対する批判ではなく、事故が起こったあとの対応でもないのです。(多分関係各社は事故対応はしっかりやったと思います。)
問題は報告文の表現です。事故が起こった際の報告文の表現を間違うと、その企業の評価を著しく棄損してしまいかねません。

繰り返して申し上げますがどんなに注意しても事故は起こるのです。そして事故をひきおこした企業は事故後も多くの従業員を抱えながら事業を続けなければなりません。このような報告では自社のイメージの悪化を最小限に抑えることが最優先であるべきです。そのためには下手にとりつくろうような表現にするのではなく、事故を起こしてしまったことへのお詫びの気持ちを前面に出し、そのうえで事実を明確にした方が(少なくとも日本では)かえって読み手の印象はよいのです。そしてその文章は(ごく一部の穿った見方しかしない人を除いて)誰が読んでも同じ感情になるような表現にすべきです。

どんな会社でも起こりうる事故への対策について皆さんと共有できればと思い書きました。なお、現在はこちらのお知らせの内容は修正されております。

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