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ソープランドグルメリポート-雄琴温泉編-

腹が減っては戦はできぬと言うが、戦のあとも腹はへる。食べて、戦い、また食べる。それが男の生き方ではないだろうか。
雄琴での公式戦を終えた私のカラダは心地よい疲労感があり、ひやりとした空気が体内を巡る。すぐに発っても良いが少し余韻を楽しみたい。そうだな、甘いものが良い。コンビニスイーツを車の中で食べるのも悪くないが、どうせならもっとがっつりと、パフェみたいに満足感の大きなものが欲しい。近所にちいさな喫茶店があることを知った私は脳内で『孤独のグルメ』のBGMをかけながら足を向ける。
雄琴温泉からは車で5分ほどの距離にある比叡辻の交差点が目印である。川をこえて小路に入ると静かな温かさをカタチにしたかのような店構えが迎えてくれる。駐車場は2台分、運よく空いていたが万社の場合は少し困るかもしれない。近くにパーキングはなく宿からあるくには少し遠い。晴れの日であれば散歩がてらも良いだろう。
事前の調査によるとイングリッシュカフェというスタイルの喫茶店であると知ることができた。つまりは英国式のティータイムを楽しめるということだ。偶然にもサカナクションの『新宝島』のような恰好をしていた私はギリギリ英国紳士と取れなくもない。トレーナーにスニーカーよりはブリティッシュマンだろうと小さな自信を握りしめ入店した。
チリンチリンとベルが鳴りいらっしゃいませお好きな席にどうぞと案内される。店内を見回すと常連と思われるご婦人がカウンターに、窓際のテーブルに小さなお子を連れた家族が一組。席数はテーブルが3、カウンターが3と落ち着いた雰囲気が満ち溢れていた。
お決まりになりましたらお呼びくださいとメニューを手渡される。
イギリス式のお茶であるならばスコーンだろうと予習の成果もありすぐさま注文をしようと思うも
「日替わりケーキセット」
の文字が私の決意を揺らがせる。ちなみに何ですかと聞くとバナナのケーキだという。
ぜってーうめえわそれ
しかし今日は違う。いや、それこそ20数年かけて予習してきた成果を今日ここで出さずして今まで何をしてきたというのか。
そう、スコーンと言えば『も~っと!おジャ魔女どれみ』第6話「挑戦!初めてのパティシエ試験」を思い出す人も少なくないだろう。
つまり今日この瞬間この店はカーラの骨董店であり、私はマジョミラーその人なのだ。そうであるならばオーダーはスコーンセット、飲み物はロイヤルミルクティー。スコーンとミルクティーの相性はマジョカーラお墨付きのマリアージュなのだ。
今日初めて会うカーラママはかしこまりましたと微笑みメニューを下げてくれた。

お待たせしましたと注文したスコーンとあつあつのミルクティーがやってきた。
こちら付けて食べてくださいねとジャムとクロテッドクリーム。大丈夫そのあたりも予習済だ。
いざ実食にあたりまずはおしぼりで指から爪の先まで丁寧に拭き精神統一する。手を付けた瞬間ここはロンドンになるのだと自己暗示をかける。
そしてまずはミルクティーをひと口。紅茶は詳しくないのでハッパが何かは判明しないが良い香りであることは間違いなく、乳のもつ自然な甘さが満足度を底上げし、心身ともに落ち着かせてくれる。焼きたてのスコーンを半分に割り、まずはそのまま何もつけずに頬張る。そしてすかさずミルクティーを流し込みそのマリアージュを口の中いっぱいに楽しむ。
次はジャム。いちごの酸味がスコーンの甘さ、ミルクティーの甘さを引き立てる。ここでのポイントはジャムはできるだけたくさんつけることだ。激辛調味料をつけるかの如くおまけていどではプレーンと変わりないしむしろそれはプレーンの味を邪魔するものになってしまう。そのため、ジャムは幼少期にもどったように無邪気にたっぷりつけるべきなのだ。するとジャム甘い、お茶甘い、スコーン美味しい。最高の循環である。
次はクロテッドクリーム。なじみのない名前だが、要は生クリームの親分みたいなものでスコーンの風味が一段階増す。そして英国式のスコーンと言えばこれは欠かせないものでもある。まってましたと言わんばかりに塗りたくりひと口かじる。ミルクティーとの相性も言わずもがな。
ジャム、クリームと単品で味わった後はいよいよコンボで楽しむ。ジャム、クリーム、スコーンのトリプルセットである。
地方によってスコーンの上にクリーム→ジャムを乗せるパターンとジャム→クリームと乗せるところがあるらしいが今の私にはそんな話は入ってこない。クリーム→ジャムと乗せパクリ。スコーンの熱でほろりと溶けたクリームとジャムが重なり合いこれがイギリスの味なのかと涙が出そうになる。マジョミラーが涙するのも頷ける。逆はどうだろうとジャム→クリームと乗せて食べる。そしてミルクティー。どっちもうまい。正直パサパサよりのスコーンもミルクティーと口の中で融合すると「青眼の究極竜」のようにワンターンキルしてくる。
ジャム、スコーン、ミルクティー、スコーン、クリーム、スコーン、ミルクティーと無限に楽しみたいところだが、そうこうするうちにもうない。食べてしまった。残ったのは心も体も満たされた幸福感だけであった。


PHYTONCIDE Tea&Coffee(フィトンチッド)
【総評】ログハウス、薪ストーブなど憧れアイテムがぎゅっと詰まった憩いの喫茶店。サンドウィッチなどの軽食もあり、3時のおやつだけでなくランチタイムも◎また日替わりケーキはInstagramで投稿されているので気になる方は確認していただきたい。


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